みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0164「おれない彼女」

2018-02-20 19:05:56 | ブログ短編

 僕(ぼく)の彼女には変なスイッチがある。そのスイッチが入ると、もう誰(だれ)にも止められない。
「ねえ、この会社(かいしゃ)どうかしら? とってもいいと思うんだけど」
 彼女は僕に会社の資料(しりょう)を見せながら言った。「パパの知り合いの社長(しゃちょう)さんがやってるの。今、良(い)い人を探(さが)しててさ。浩人(ひろと)にぴったりだと思うんだ」
「いいよ。別に、君(きみ)に探してもらおうなんて…」
「そうじゃないわよ。あたし、浩人に…」
「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。就職先(しゅうしょくさき)ぐらい自分(じぶん)で見つけるから」
「分かってるわよ。分かってるけど、あたしも力になりたいの」
「もう、勝手(かって)なことすんなよ! 俺(おれ)だって、ちゃんと考えてるんだから」
 つい感情的(かんじょうてき)になったことを、僕は後悔(こうかい)した。彼女の目つきが変わり、スイッチが…。
「ねえ、あたしがせっかく探してきてあげたんでしょ。何なのよ、その態度(たいど)は」
 彼女は会社の資料を僕に投(な)げつけて、
「ちゃんと見なさいよ。見もしないで何がわかるの。あんたさ、そんなんだから就職できないんでしょ。いつまでもプラプラしてさ、ほんとに働(はたら)く気あるの? もう話はつけて来たから、絶対(ぜったい)面接(めんせつ)に行きなさいよ。今度逃(に)げ出したら、ただじゃすまないから」
<つぶやき>彼のことを心配(しんぱい)してるから、ついつい余計(よけい)なお世話(せわ)をやいてしまうのです。
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0163「生活改善」

2018-02-19 19:42:22 | ブログ短編

 結婚(けっこん)して半年。新しい生活にも慣(な)れた頃(ころ)、離(はな)れた所に住んでいる友だちと会うことになった。久しぶりに再会(さいかい)した彼女は、開口一番(かいこういちばん)私にこう言った。
「ねえ、ちょっと太(ふと)ったんじゃない?」
 私も、うすうすは気がついていた。でも、こう面(めん)と向かって言われると、これは不味(まず)いかもしれないと…。このまま知らん顔をしている場合じゃないわ。
 そこで私は、ダイエットを始めようと決心(けっしん)した。でも、もともと運動(うんどう)が苦手(にがて)で、飽(あ)きっぽい私にとって、それは無謀(むぼう)なことかもしれない。そこで私は、熟慮(じゆくりよ)に熟慮を重(かさ)ねたすえ、お金もかからず無理(むり)なく簡単(かんたん)にできる方法(ほうほう)を考えた。
 それは、ウオーキング。これなら手軽(てがる)に、いつでも始められそうだ。でも、ダラダラと歩いているだけでは効果(こうか)は期待(きたい)できない。やるからには、それなりの成果(せいか)がでないと。そこで私は、入門書(にゅうもんしょ)を買って必要(ひつよう)な知識(ちしき)を身につけた。
 そして今日、私はウオーキングのデビューをする。旦那(だんな)を仕事(しごと)に送り出すと、私も着替(きが)えて外へ飛び出した。住宅街(じゅうたくがい)を抜(ぬ)けると、そこには川沿いに遊歩道(ゆうほどう)が整備(せいび)されている。朝早い時間は走っている人をよく見かけるが、この時間はまばらになっている。それでも、何人かの人とすれ違う。そのたびに、おはようって挨拶(あいさつ)されて。何か、知らない人なのに清々(すがすが)しい気分(きぶん)になった。風はまだ少し冷たいけど、道端(みちばた)に小さな花を見つけた。こんなところで春と出会えて、何だか得(とく)した気分。これなら、続けられるかも――。
<つぶやき>人に言われて気づくことってありますよね。あんなことや、こんなこと…。
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0162「責任」

2018-02-18 19:12:45 | ブログ短編

 綾佳(あやか)は新しい事業(じぎょう)のチーフを任(まか)された。これは異例(いれい)の抜擢(ばつてき)で、彼女はその責任(せきにん)の重さをひしひしと感じていた。そのためか、部下(ぶか)たちの些細(ささい)なミスにも神経(しんけい)をとがらせた。
「こんなことも出来(でき)ないの! ちゃんと確認(かくにん)しなさいって言ったでしょ。何度言わせるのよ!」
 綾佳の荒(あら)らげた声がするたびに、部屋の空気(くうき)が澱(よど)んでいくようだった。
 そんな時、補充要員(ほじゅうよういん)として一人の青年(せいねん)がチームに加(くわ)わった。彼はどんな仕事(しごと)にも誠心誠意(せいしんせいい)向き合い、その誠実(せいじつ)さは誰(だれ)もが好感(こうかん)をいだくものだった。綾佳も、いつしか彼に大切(たいせつ)な仕事を任せるようになった。同僚(どうりょう)たちは、こんな優秀(ゆうしゅう)な社員(しゃいん)がいたのかと驚(おどろ)き、綾佳よりこの青年に仕事の相談(そうだん)をするようになった。その様子(ようす)を見るたびに、綾佳の心はざわついた。チーフとしての自分の立場(たちば)が危(あや)うくなるような、そんな気がしたのだ。
 ある日のこと。綾佳が一人で残業(ざんぎょう)していると、デスクの上にコーヒーが置かれた。彼女が目を上げると、そこにはその青年が立っていた。
「あなた、まだいたの?」
「ええ。でも、もう帰ろうと思います」
「そう……」綾佳は何か言いたげな顔をしたが、言葉(ことば)をのみこんで、「お疲(つか)れさま」
 青年は帰りかけた足を止めると。「あの…。チーフは、怒(おこ)った顔より笑顔(えがお)のほうが素敵(すてき)だと思います。あっ、これは…、僕(ぼく)だけじゃなくて、みんな思ってますから」
<つぶやき>どんな仕事にも責任はつきものです。でも、たまには肩(かた)の力を抜(ぬ)きましょう。
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0161「我が家のルール」

2018-02-16 19:19:46 | ブログ短編

 我(わ)が家(や)では守(まも)らなければならないルールがある。それは、朝食(ちょうしょく)は必(かなら)ず家族(かぞく)そろって摂(と)ること。いつからこのルールができたのか私は知らない。聞くところによると、私が生まれる前からあったみたいだ。
 このルールには例外(れいがい)はない。私やママは大丈夫(だいじょうぶ)なんだけど、パパやお兄(にい)ちゃんは寝坊(ねぼう)することがある。そんな時は、私の出番(でばん)なの。私の手にかかったら、すぐに目が覚(さ)めちゃうんだから。休日だろうと容赦(ようしゃ)はしないわ。だって、ちゃんと起きてくれないと、朝食が食べられないし、学校に遅(おく)れたら大変(たいへん)だもん。
 私は、これは当たり前のことだと思っていた。でも、友だちに聞くとそうでもないみたい。だって、朝ごはんを食べない子がいたりするんだよ。私には信じられないわ。朝、食べないと、元気(げんき)が出ないじゃない。それに、家族全員(かぞくぜんいん)がそろうことって、朝ぐらいしかないからね。たとえ短い時間でも、我が家ではとっても大切(たいせつ)な時間なの。
 このルールを思いついた人って、すごいと思う。たぶん、おばあちゃんか、ひいおばあちゃんかもしれない。今度、訊(き)いてみようかな。もし、私が結婚(けっこん)して家庭(かてい)を持ったら、絶対(ぜったい)このルールを取り入れようと思う。まだ、ずいぶん先のことかもしれないけど。
 そのためにも、早起(はやお)きのできる彼氏(かれし)を見つけないとね。まず、そこからです。
<つぶやき>早起きをすると一日がとっても長く感じます。少し得(とく)した気分になれるかも。
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0160「ファーストキス」

2018-02-15 19:18:07 | ブログ短編

 私のファーストキスの相手(あいて)は五歳の甥(おい)っ子だった。それも、突然(とつぜん)抱きついてきてブチュッとされてしまった。まったく、マセガキなんだから…。それを見ていたお姉(ねえ)ちゃんが、私をからかうように言った。
「ねえ、もしかしてファーストキスだったの?」
「そ…、そんなわけないでしょ。私だって、それくらい…」
 お姉ちゃんには隠(かく)しごとはできない。昔(むかし)からそうなのだ。もう、腹(はら)が立つ…。
「子供(こども)相手に本気(まじ)にならないでね。あたしの可愛(かわい)い息子(むすこ)なんだから」
「なわけないでしょ。私にだって、ちゃんと好きな人いるんだから」
「へえ、そうなんだ。で、その彼とは…」お姉ちゃんはいつもそうだ。年上(としうえ)ぶって…。
「やっぱりね。まだ手も握(にぎ)ってないんだ。あんたさ、そんなんだから…」
「握ったわよ。手ぐらい、ちゃんとつないでるわ」
「でも、それだけなんでしょ。それじゃ、恋人なんて言えないわよ」
 もう、彼のこと何にも知らないくせに、何なのよ。私だって、したいわよ。でも…。
「あたしが教えてあげようか?」お姉ちゃんは意味深(いみしん)な笑(え)みを浮(う)かべる。
 私が奥手(おくて)になっちゃったのは、奔放(ほんぽう)すぎるお姉ちゃんのせいだ。お姉ちゃんみたいには、絶対(ぜったい)にならないって思ってたのに…。でも、この際(さい)、教えてもらっちゃおうかなぁ…。
<つぶやき>何事(なにごと)もタイミングが肝心(かんじん)です。好機(こうき)を逃(に)がさず、しっかりゲットしましょう。
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