「韓国エンタメ作品に見るコリアン・フード」、今回ご紹介するのは、韓国人がこよなく愛する
「ジャージャー麺」です。
一体どんな食べ物なのでしょうか?
ジャージャー麺(炸醤麺=韓国風に発音すると「チャジャンミョン」)は、韓国の国民的中華料理です。
価格も250~400円程度といたって庶民的。「ジャージャー麺の味がその店の人気を左右する」といわれるほど、子供から大人まで、嫌いな人はいない大人気メニューです。
そのルーツは、1900年代初めに仁川在住の華僑が、韓国人に合うよう四川風肉味噌にカラメルを加えたのが始まりなど諸説あります。
中国から上陸し自国で独自に発展、国民食として好まれるようになったところは日本の「ラーメン」と同じですね。
韓国式ジャージャー麺は、春醤(チュンジャン)という黒味噌と、玉ねぎや肉などを炒め、片栗粉でとろみをつけ、麺(中華麺ではなく、うどんに近い)にかけて食べます。
麺とソースが絡むよう良く混ぜるのがポイント。デミグラスソースのようなコッテリとした深い甘さが癖になりそうです。
つけ合せには沢庵と玉葱が定番です。(写真は大久保のソムンナン飯店のもの)
韓国芸能界にもファンは多く、国民的俳優チャン・ドンゴンは「何度食べても飽きない」と絶賛。
『パリの恋人』のパク・シニャンも大好物に挙げ、『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクに至っては、「引退後チャジャンミョンの店を開きたい」というほどお好きなご様子です。
『おいしいプロポーズ』は、韓国一ジャージャー麺が美味しいと評判の中華料理店が舞台のドラマです。
店主のこだわりは「手作り麺がのびるので出前はしない」こと。その頑固さに息子ヒョドン(チョン・ジュン)は反抗しつつ、最後には仲間と力を合わせて店を守りぬきます。
同じく中華料理店が舞台の『北京飯店』は、まさに「ジャージャー麺映画」。
店の隆盛を巡る騒動をさわやかに描いた本作品では、化学調味料を使わない本格製法の春醤が重要な鍵です。
(同時期に公開されたキム・スンウ主演のホラー『新装開店』も、中華飯店のジャージャー麺が題材で話題になりました)
『殺人の追憶』では、パク刑事(ソン・ガンホ)が取調べの合間に容疑者と一緒にジャージャー麺を食べながら、テレビの刑事ドラマ『捜査課長』に釘付けになります。
日本ならさしずめ、カツ丼を食べながら『太陽にほえろ』に夢中…といったところですね。
『ガラスの靴』でも、主人公キム・ユニ(キム・ヒョンジュ)の大好物で、美味しく幸せそうに食べるその姿は、逆境にもめげず明るく生きる、前向きな彼女を象徴しています。
「ジャージャー麺の出前で~す」といって大学の警備を突破し、愛する女性のもとへ向かったのは、『猟奇的な彼女』の、キョヌ(チャ・テヒョン)です。
このように基本的に電話一本で気軽にデリバリーしてくれるため、『サンドゥ、学校へ行こう!』ではウナン(コン・ヒョジン)が、『パリの恋人』ではテヨン(キム・ジョンウン)が、屋外で豪快に食べていました。
ジャージャー麺は「韓国式引っ越しそば」でもあります。
『四月の雪』では、インス(ペ・ヨンジュン)が引越し荷物の中でひとりジャージャー麺を食べます。妻と別れた空虚さ、独りの寂寞感がにじむシーンです。
ドラマ『ラブレター』では、子供時代のアンドレア(ユ・スンホ)が叔父と再会し、念願のジャージャー麺を食べます。
母に捨てられ、親戚の家での残酷な仕打ちを悟られまいと健気にふるまい、別れ際に悲しみをこらえ「ジャージャー麺食べさせてくれて有難う」というシーンは、涙を誘います。
『オアシス』では、脳性麻痺のコンジュ(ムン・ソリ)と刑務所帰りのジョンドゥ(ソル・ギョング)が、初デートで食べます。
ジョンドゥの好物を食べたいというコンジュの乙女心、彼女の口についたソースをぬぐうジョンドゥの優しさ……二人の哀切が身にしみます。
この「汚れる→口をふく」というのは、ジャージャー麺にはお約束のアクションです。
なぜなら韓国ジャージャー麺は、とにかく黒い!まるでイカ墨パスタ!なので、『ローズマリー』では、母親代わりの姉が幼い弟の口をふいてあげますし、『ごめん、愛してる』でも、ウンチェ(イム・スジョン)がその役目を果たします。「口をふく」という行為にこめられた愛しさが、作品全体を優しく彩っているのです。
そしてなんといっても日本の婦女子の度肝を抜いたのは、『バリでの出来事』のジェミン(チョ・インソン)です。
ビリヤード場でスジョン(ハ・ジウォン)に、「イヌク(ソ・ジソプ)との結婚は許せない」と、ソースまみれの真っ黒な口で切々と愛を訴える、そのなりふり構わなさ! 強引で不器用な愛情表現には、「拭いたら?」と苦笑するスジョンならずとも、母性本能を刺激されてしまいますね。
一方、「口の周りの汚れを見られても平気」というのはすなわち「異性として意識していない」という見方もあるようで、『天国の階段』でチョンソ(チェ・ジウ)がテファ(シン・ヒョンジュン)とジャージャー麺を食べていたのは、二人が恋人同士になれない暗示だったとか。
こうしたジャージャー麺のマイナスイメージを逆手にとったのが、4月14日の「ブラックデー」。
バレンタインデーとホワイトデーを憂鬱に過ごしたシングル同士が黒い服を着て集い、黒いジャージャー麺を食べ、ブラックコーヒーを飲み、慰めあいます。これを機にカップル成立もあるといいます。
以前、あるアンケートで「ブラックデーにジャージャー麺を一緒に食べたい芸能人」1位に、クォン・サンウとハ・ジウォンがそれぞれ選ばれました。
(ちなみにクォン・サンウのデビューは、前述の『おいしいプロポーズ』の出前配達役です)
二人とも、お口の汚れを気さくに、優しくぬぐってくれそうなイメージなんでしょうか~?
皆さんも、お気に入りの作品で「ジャージャー麺」のシーンを、あらためてチェックしてみませんか?
より深く、人物たちの心や関係が理解できたとき、そこに新しい愛の形が見えてくるかもしれません。
喉ごしつるつるの麺に、コクのある甘い味噌が絶妙にマッチ。
通信販売や韓国食材店で購入可能。
*この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ!KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。
■メルマガwebサイトは コチラ
ブログライター ライターの募集・求人・登録ならブログライター
(当記事の 無断での転載、転用はご遠慮ください)