晴れ渡る空の下、山にも登らず、
私は、久留米の街を小頭町方向へと歩いている。
小頭町と言っても、久留米在住でない人間には、見当もつかないだろうが、
何しろ、私の家から1km半程の場所に、そういう町名があるのだ。
小頭町。
いかにも何らかの役職めいた町名である。
藩制の中で、小頭と言う役職は、現在の係長or課長と言った所であろうか?
或いは町民組織の中での、何らかの役目だったのかもしれない。
いずれにせよ、小頭と言う役職名を持つ人間が、複数住んでいた区域であったに違ない。
そんな小頭町の片隅に、まことに小さな神社がある。
その名も小頭神社。
ふんふん。
祭神は天手力男命と天鈿女命で・・・
何て、
神社の由緒を読んではいるが、ほぼ上の空である。
私の脳ミソは別の要件で一杯なのだ。
じっと腕時計を見る。
えーっと、
そろそろ、時間かな。
私は小頭神社から踵を返し、元来た道を数百メートル引き返した。
くらや。
馴染みの酒屋さんである。
「ごめんくださーい。」
「例の物、届いてますか?」
「あ、江島さん。届いてますよ。」
この季節ならではのお楽しみ。
槽汲み入荷の知らせが届いたのだ。
今年の店主厳選3種がこれだ。
2号、10号、12号のタンクの、搾りたて生原酒である。
それぞれに個性が際立ち、
「飲み比べてみて下さい。」
ええ、ええ。
そりゃあ、もう。
そうさせていただきますとも!
「んじゃ、貰って帰りまーす。」
「有難うございまーす。」
ウヒヒヒ