「あれが咲いとるらしかぞ。行ってみるか。」
「あー、あそこね。行く。」
あそこに到着。
かなりの混雑を予想していたが、私らの他に停まっているのは2台だけだった。
お山歩する『あそこ』とは、四王寺山の事だ。
四王寺山は、山全体が古代の山城である。
天智天応が築いた土塁が、周囲を取り囲む。
登山道は、主にこの土塁に沿って設けてある。
登山道には、33箇所の石仏が置かれ、それぞれが札所となっている。
大原山通過。
登頂感ゼロである。
山桜の巨木。
「あ!」
後方から家内の奇声が聞こえてきた。
振り返ってみると、しゃがんで何かを頻りにつついている。
仕方ないので戻ってみた。
「なんしよっと、、、か!」
「ツチグリ。・・・の死骸。」
背中越しに覗き込むと、活動を終えたツチグリが転がっている。
「えーい、とっとと行くぞ!!」
小石垣を過ぎて急登を登ると、
北石垣に至る。
北石垣を過ぎると、急坂になる。
ズンズンと降りて行くと、四王寺山を貫く一般道に突き当たる。
この道路の反対側にあるのが、
百間石垣だ。
文字通り180m余りにわたって築かれた石垣だ。
これらの石垣群が、防衛線としての役目を果たす日は、ついにやっては来なかった。
県民の森を通り越し、
この坂を登ると、
増長天礎石群に至る。
「お前、ここは初めて来たやろ。この礎石群は、古代の・・・」
「あ、シロハラだ!」
「話ば聞かんか!!」
枯れる事が無いと言う鏡ヶ池。
「駐車場はすぐそこたい。そろそろ、飯でも食いに行くかにゃ。」
駐車場に戻った時は満杯で、入りきれなかった車が路上まで溢れていた。
さて、
冒頭での会話、
「あれが咲いとるらしかぞ。行ってみるか。」
の、
『あれ』が、何時まで経っても出てこない。
そう言えば忘れてた、と言う人も多かろう。
これから、改めて『あれ』を記載しておく。
春を告げる花、セリバオウレンである。
家内に言わせると、
「雌花が見つけきらん。ここにあるのは、雄花と両性花だけかも。」
目を皿のようにして、まだ見ぬ雌花を探すオバサン。
可憐に揺れる妖精をゆっくりと楽しむ事が出来た。
早く着いてて、よかったぜ。