くじゅうの山々に、一年最大のクライマックスが訪れようとしている。
言わずと知れたミヤマキリシマである。
この日目指した山は平治岳。
AM7時半。
既に男池駐車場は満車状態だ。
何とか空きスペースを見つける事が出来た。
男池園地からスタートだ。
原生林の森を行く。
岩を掴むように成長した木の根。
バイケイソウが至る所に。
かくし水通過。
この後、しばらく先に進むと、
新しい登山道らしきものが出来ていて、私たちを含め、次々に登山者がそこに迷い込むハプニングが。
集団道迷いである。
途中からどうもおかしいと気付き、あっちこっちを右往左往した挙句、
「あ!あの斜面の上。人が歩いてますよ。あそこが本物みたい。」
急傾斜を無理やりよじ登り、なんとか本道に辿り着く事に成功した。
「いやいや、大変やったですね。」
「ほんと、ハハハ。」
お互いに顔を見合わせ、苦笑いするしかない。
見ず知らずの集団に、奇妙な達成感と連帯感が生まれた瞬間である。
ソババッケ通過。
フタリシズカ
道迷いで余計な体力を使った身に、ガレ場の急登が容赦なく襲い掛かる。
漸く、木の間越しに稜線が見えてきた。
平治岳取付きの大戸越(ウトンゴシ)だ。
大戸越に着いたなら、暫くは顔を右に向けずに、下を向いて歩こう。
平治岳正面まで進んでから、一気に全貌を見たいからだ。
今年のミヤマキリシマはどうだろう。
ワクワク
そろそろいいかな?
ドーーーン!
ウヒャー、稀に見る当たりでないかい。
まるで、ピンクの洪水である。
では、早速登ろうか。
平治岳南峰までは、一方通行。
登り専用路を行く。
平治岳が初めての連れに、
「言っとくけど、あのピークは頂上やないけんね。」
「そうそう。頂上はもう一つ先ですもんね。」
「あ、先程の・・・」
横から声をかけてくれたのは、さっきの道迷いで、一緒に右往左往したご夫婦だった。
随分と標高を上げてきた。
大戸越があんなに小さく見える。
岩場を登ると、
南峰の巨岩が見えてきた。
黒岳をバックに、桃色に染まる斜面。
南峰通過。
ここからは狭い一本道。
お互い道を譲りあいながら進もう。
本峰へ。
ズンズンと進む。
年甲斐もなく、どうにもはやる気持ちが抑えられない。
山頂到着。
山頂はそこそこにして、すぐに西尾根へ。
あちらこちらから、
「うわー、こりゃ凄か!」
「キャー、綺麗!!」
歓声が上がる。
かくいう私も、ゆうに30回は、同じ言葉を呟いただろう。
桃色の波に溺れてしまいそうだ。
見知らぬオジサンが、若い女性をつかまえ、
「え!初めて登ったの?そりゃラッキーじゃね。ここ10年で一番の当たり年たい。」
と、解説していたが、さもありなんである。
ミヤマキリシマ越しに、眼下には坊がつる。
そして、その背後に聳える、くじゅうの山並み。
何度見ても、飽きることは無い。
山頂は狭い。
山飯は、この山一番のテラス席で取ると決めている。
本峰と南峰を結ぶ尾根の、中間辺りまで移動した。
この場所は、先程まで居た西尾根斜面に広がる、ピンクの絨毯を一望できるのだ。
ミヤマキリシマの間に身を埋める。
この瞬間、日本一贅沢な鶏ちゃんこらーめんであると、自信を持って言える。
ズズズ
うんめえーー
さて、
いつまでも帰りたくない気分だが、そうも言ってはおれぬ。
山ガールに・・・じゃなかった。
ミヤマキリシマに後ろ髪を引かれつつも、下山である。
下り道専用の登山道に咲く、白花のミヤマキリシマ。
今年のミヤマキリシマが、例年にない当たりなのは間違いない。
新型コロナ拡散の懸念もあるかと思うが、
見に行った方がいいよ。