《佐賀と福岡の県境にある二丈岳は如何でしょう》
大学の先輩から、LINEでお誘いがあった。
《山頂からは眼下に玄界灘が見えます》
との事。
暇人に断る理由などない。
速攻で了解したのは、言うまでも無い。
待ち合わせ場所で落ち合った後は、先輩の先導で登山口駐車場へ。
今回、先輩の知人(この方も同じ大学)と、3人での山行である。
山靴の紐を締めたら、早速出発だ。
登山道に出るには、この橋を渡るしかない。
ゆらりんこ橋と言う。
橋の名としては、誠に不吉なネーミングと言わねばならぬ。
恐る恐る歩を進めた。
(大して揺れ無かった事は、この橋の名誉のために付記しておく)
橋を渡ると直ぐに、本格的な登山道へと変わる。
なんとも可愛らしい案内標識だ。
何ったって、象さんが案内してくれるのだ。
思わずパシャリ。
ハナミョウガ
岩に巻き付く木の根。
執念としか言いようは無い。
板状になった瘤の数々は、全て木の根っこが変形したものだ。
家の石。
昭和30年代、
この道は、山の中腹にある真名子地区に住む子供らが、麓の佐波分校に通う通学路であったと言う。
通学途中で雨に降られた際、子供らが雨宿りをしたと言うこの岩を、いつしか『家の石』と呼ぶようになった。
この岩の下で雨宿りをしている子供らの、不安げな表情が目に浮かぶようだ。
昭和30年代の小学生とは、正しく、私もまたそうなのだ。
他人事ではない。
私の妄想癖は止まらない。
一年生と言ったらまだ6歳。
そんな年端もいかない子らを、お兄ちゃん、お姉ちゃん達は、手を引いて歩いた事だろう。
大人でも、決して楽な道ではない。
何度も、滑ったり転んだりしたに違いない。
時には蜂に追いかけられたり、蛇に驚かされた事もあったろう。
ぐずる子らを、励まし励まし、片道1時間以上もかけて、毎日この道を往復した。
雨の日も風の日もだ。
もし時を戻せるのなら、この山道を行く子供らに会いに行き、
「偉い、偉い。」
と、頭の一つも、撫でてやりたくなる。
この山の楽しみの一つには、滝巡りもあるようだ。
この滝は、明神の瀧と言う。
ひんやりとした空気が、辺りを包み込む。
かつて、夏ともなれば、きっとこの滝つぼで遊んだであろう山の子達の、歓声が聞こえる気がする。
瀧の最上部。
滝の水が轟々と流れ落ちるすぐそばまで行ける。
加茂神社。
丁度、中間地点である。
養蜂箱?
この辺りが、真名子地区だろうか。
何軒かの住居と住居跡が見える。
ここから暫くは、林道を行く。
ハナウド
林道から再び登山道へ。
登山道には至る所に巨岩が転がる。
スパッと、鋭利な刃物で切ったような割れ方をした岩。
この先が分岐点のようだ。
左へ行くと山頂らしい。
ナワシロイチゴ
ホウチャクソウ
最後の最後は、急登になる。
空が開けた!
到着。
ナルコユリ
カノコソウ
標識から巨岩が見えた。
この山で一番高い所はあそこらしい。
〇〇と煙は高い所を目指すと言うではないか。
当然ながら、
こうなる。
失礼した。
もし、あなたの街でこの顔を見かけても、石などは決して投げないで欲しい。
巨岩に立つ。
玄界灘が一望である。
この山の魅力が解る気がした。
さて、景色を堪能した後は山飯だ。
ずっと大好きだよ by 白石麻衣
そうかい?
オジサン、照れちゃうな。
整備された歩きやすい登山路、滝の魅力、頂上からの眺望。
そしてそして、
妄想好きには堪らない、かつての通学路。
また好きな山が増えてしまった。