大学の授業にかかわる話題

授業日誌・キャリア・学びのスキルについて

ブランドも売る、ソニー

2014年04月10日 19時00分00秒 | 学習支援・研究
ブランドも売る、限界近づく「算術のソニー」  
編集委員 武類雅典
2014/2/7 7:00
日本経済新聞 電子版
武類雅典(むるい・まさのり) 
92年日本経済新聞社入社。
産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て
電子報道部デスク兼編集委員。

ソニーが「バイオ(VAIO)」ブランドで知られるパソコン事業を売却する。
過去にグループ会社や工場を売却したことはあるが、
消費者に親しまれた商品ブランドまで手放すことは初めてではないか。

ソニーがパソコン事業の売却やテレビ事業の分社など合理化策を発表した6日午後。
10年前から知るソニー元幹部と話すと、
少しびっくりしたような口ぶりだった。

「とうとうソニーの聖域まで踏み込んだね。
バイオも今まで手をつけられなかったところ。
GE(ゼネラル・エレクトリック)の選択と集中が頭に浮かんだ」

驚きの理由の1つは、バイオの場合、ブランドまで手放したこと。
これからブランドの扱いについて詳細を詰めるとはいえ、
これまでソニーがエレクトロニクス事業の看板ブランドを
他者の手に委ねたことはなかったのだ。

「ブランドはDNA」
テレビの「ブラビア」、ビデオカメラの「ハンディカム」、
デジタルカメラの「サイバーショット」……。
社内では、こうした商品ブランドを「サブブランド」と呼び、
歴代の経営トップは「SONY」ブランド同様、大切にしてきた。

その1人、大賀典雄氏のこだわりは、
米アップルのスティーブ・ジョブズ氏ばりのすごみさえ感じる。
世界中で有名な「SONY」のロゴのデザインは、
大賀氏自身が文字の大きさや太さなどに何度も手を加え
現在のかたちに落ち着いたという。

思い入れは、商品ブランドであろうと同じ。
バイオの育ての親で、ソニー元社長の安藤国威氏は在任中、
「ソニーにとって、ブランドとはDNA」とまで話していた。

しかし、今のソニーには、ブランドへの思いを語っている余裕などないのかもしれない。
ムーディーズ・ジャパンには格付けを投機的等級に落とされた。
「物言う株主」として知られる大株主の米有力ヘッジファンド、
サード・ポイントからは、一挙手一投足を注意深く観察されている。

先週から始まった決算発表シーズン中、
過去最高益を予想する好業績ラッシュが続いている。
そのなかで赤字転落を予想したソニーの存在は、
悪い意味で際だってしまっている。その点、
最高経営責任者(CEO)の平井一夫氏らソニー経営陣による
バイオ売却の判断は当然と思える。しかし、
今回の決断が、この先につながると判断するのは早計かもしれない。

M&A(合併・買収)の世界では、
事業を買収した後の経営がポイントとされるが、
事業を売った側にとっても、その後が大事だ。
どんな企業に変わるのかを分かりやすく説明しなければ、
痛みも伴うせっかくの経営改革の真意が投資家らに伝わらない

10年を超えた停滞
米IBMがちょうど10年前に決断したパソコン事業の売却劇は、
「IT(情報技術)の巨人」がソフトウエアや
情報サービスに事業の軸足を大きく移す象徴的な出来事として知られている。
NECは先週、子会社でインターネット接続事業者(プロバイダー)の
NECビッグローブの売却を決定。遅ればせながら、
法人向けの情報システム事業で生きていくことを宣言するディールだった。

つい最近までソニー以上に事業売却や撤退を繰り返していたパナソニックは、
自動車分野や住宅設備分野に一気にシフトする戦略を打ち出している。
事業領域の再定義は明確だ。

それらと比べて、ソニーはどうか。
縮小均衡の残像を焼き付けてしまったのではないだろうか。


写真:テレビ事業の分社とパソコン事業の売却を発表する
ソニーの記者会見(6日、東京都港区)


ソニーの6日の会見では、これからのエレクトロニクス事業について語るとき、
スマートフォン(スマホ)やゲーム、画像センサーといった
3本柱に集中
する姿勢を改めてアピールすることに終始した。
後はリストラの説明。会見を聞いていて、
過去にソニーの社員やOBから何度も聞いた話を思い出してしまった。

「うちは長年、新しい技術やアイデアで画期的な商品を生む
『技術のソニー』といわれてきたが、今は
リストラやM&Aに頼る『算術のソニー』になってしまった」――。
つまり、合理化などで一時的に収益が上がったとしても
根本的な競争力は回復しない、という嘆きだ。

そんな話を初めて聞いたのは、
ソニーの業績悪化が株式市場全体の動揺を引き起こした
「ソニーショック」のころだった。
もう10年以上がたっている。

ソニーの格付けを引き下げたムーディーズは、
その背景を「特に懸念されるのはテレビおよびPC(パソコン)事業が
直面する財務上の課題
であり、いずれも、
厳しいグローバル競争、急速な技術変化、
製品の陳腐化に直面している」と説明している。

リストラばかりでは、何も残らない
それらは、過去10年にわたってソニーがずっと指摘され続けてきた課題そのもの。
デジタル時代に猛スピードで起きる「製品の陳腐化」などへの対策は、
目先の数字をひねり出すための算術では答えは出ない。

あるソニー幹部は「平井体制になって以前よりも
経営判断のスピードは上がっていると思う。
そこだけは評価してほしい」という。しかし、
改革への期待感があっても、リストラばかりでは、
何もソニーに残らなくなってしまう。

ここまでソニーを追いつめた
アップルや米グーグルの経営は一見、自由度が高そうでいて、
厳しい判断を続けている。
グーグルは先週、子会社の米モトローラ・モビリティーが手掛ける
スマホ事業を中国のレノボ・グループに売却
すると決めた。
知的財産を押さえるという当初の目的を果たすと、
買収から2年もたたず、あっという間に手放してしまうドライさだ。

それでも、次々と新しい事業を立ち上げているグーグルに対し、
「ハゲタカ」「リストラ屋」などといった批判が巻き起こることはないのだろう。
そんな立場にたてる日はソニーに訪れるのだろうか。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0601F_W4A200C1000000/?df=3より

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10日(木)4講目の授業

2014年04月10日 18時13分39秒 | SIUの授業
グローバルビジネスと経営

この授業は、この学科2年次生を対象とした授業です。
今年より開講で、講師もはじめて担当します。
なにぶん、専門科目ではないので、自信はありませんが、
大学はじめ、学科の推薦もあり、担当することにしました。
半期15回の授業ですが、よろしくお願いします。

本日は初回の授業でしたので、授業の概要とテキストの指定を行いました。
テキストはすでに購入している人もいました。
シラバスやテキスト購入のプリントを見て履修希望者は、
必ず来週まで(場合によっては履修締め切りの再来週まで)には
購入しておいてください。
来週はテキストは使わないで、授業を行います。
本日は32名が出席してくれました。


写真:syllabusの見本です

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

旭川信金、あす創立100年

2014年04月10日 13時33分43秒 | キャリア支援
旭川信金、あす創立100年 
預貸とも道内最大、リスク取る力の向上課題

(04/10 16:00)
 
【旭川】旭川、富良野地域を中心に営業する旭川信用金庫(原田直彦理事長)が
11日で創立100年を迎える。2002年の富良野信金との合併を経て預金量、
貸出金量で道内最大の信金に成長した。
旭川信金は「今後は取引先の本業支援など、
課題解決に積極的に取り組める体制を目指したい」としている。

 
前身は「有限責任旭川信用組合」。
日露戦争後の不況や大凶作で中小の商工業者が苦境に陥ったことから、
地元有志によって1914年(大正3年)に設立された。
道内信金では、11年創立の渡島信金に次いで2番目に古い。

51年に旭川信金に改組。
97年の拓銀破綻により、98年に旭川市の指定金融機関となった。
また2002年に富良野信金と合併し、これを機に預金、
貸出金ともに帯広信金を抜いて道内信金トップとなった。
13年まで10年間、理事長を務めた杉山信治会長は
「都市型の旭川信金と、農村型の富良野信金で、
リスク分散の面などで経営の補完関係ができた」と振り返る。

経営効率化でリーマンショック後の不況を乗り切り、
経営体質を強化してきた。2013年9月中間仮決算では
預金量7667億円、貸出金3005億円でいずれも道内信金最大。
内部留保も順調に積み上げ、経営の健全性を示す自己資本比率は
富良野信金と合併した02年3月期の11・38%から、
13年9月期で21・70%まで上昇。国内基準の4%を大きく上回っている。
13年6月就任の原田理事長は
「自己資本の充実とローコスト経営で体質は強固だ」と胸を張る。

旭川は北洋銀、道銀などの地銀やメガバンク、
道北、道東の信金が支店を構える激戦地域だ。
旭川信金には「経営は健全だが、
他に比べてリスクを恐れ、融資に慎重になりすぎている」
(金融関係者)との声もある。

旭川は今後、人口が減少し、中小、零細企業の窓口として信金の役割は
一層重要になってくる。従来の資金繰りだけでなく、
取引先の本業拡大への支援も求められているが、
「ビジネスマッチングなどの支援は本格化の緒についたばかり」(杉山会長)。
原田理事長は「取引先に深く入り込んで信頼関係を持つことが重要。
事業の可能性を見る目利き力と、
リスクを取れる力を高めることが課題だ」と話している。
(金谷育生)

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki4/532484.htmlより

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドラッカーが指摘:会社一筋、燃え尽きに注意 

2014年04月10日 10時10分02秒 | キャリア支援
会社一筋、燃え尽きに注意 
ドラッカーが指摘
ドラッカーに学ぶココロの処方箋(3)

2014/3/30 7:00
日本経済新聞 電子版

希望する社員を65歳まで雇用延長することが企業に義務づけられた。
今後、職場で働き続けるシニア社員が増加するだろう。
しかし、仕事一筋で頑張ってきたシニア社員が、
雇用延長をして職場に残った時、
さまざまな心の葛藤が生まれ…。
本連載では「組織内のメンタルヘルス(こころの健康)問題への対応」を
コンサルティングする臨床心理士の尾崎健一氏が、
ドラッカーの名言をキーワードに用いて、
望ましい企業内メンタルヘルス・マネジメントについて解説。
3回目は「仕事と人生」について考えてみよう。

「いまや会社は、社員を会社人間にしておくことが、
本人のためにも会社のためにも危険であり、
いつまでも乳離れできなくさせる恐れのあることを認識すべきである」。
ドラッカーは1954年に刊行した『現代の経営』でこう述べている。

この言葉は、21世紀の今、日本の企業で起こり始めている問題を
予言しているかのようだ。雇用延長が
メンタルヘルスに与える影響もその1つだ。

年金支給開始年齢の引き上げに伴い、
企業には65歳まで希望する社員の雇用延長が義務づけられた。
定年延長や再雇用によって働き続ける高齢の社員が
今後増加するとみられている。
年上の部下を持つ上司の仕事のしにくさや、
いつまでも先輩に抑えつけられる若手社員のモチベーション低下など、
マネジメント上の課題に加え、
懸念されるのが高齢社員のメンタルヘルスへの配慮である。

再雇用や役職定年においては、一般的に
それまでの職責や権限を減じられる。
自尊心が傷つき、メンタルヘルスが悪化した例を紹介する。

会社一筋の人生は何だったんだ
Aさんは、IT(情報技術)メーカーの技術部門から
営業部門に移り営業部長にまで駆け上った。
技術部門でのリーダーシップをかわれて営業部の技術支援課長に就くと、
好景気の後押しもあって、営業部門でも大きく貢献した。
技術系出身らしく顧客に対する専門的な説明に説得力がある。
Aさんを中心とした営業部の支援部隊の成果は上がり、
Aさんは順調に営業部長に昇進した。

しかし、営業部長になった頃から会社の業績が急速に悪化、
その責任の矢面に立たされることも多くなった。
競合他社の営業部門からヘッドハンティングされた副部長が着任し、
新しいやり方を取り入れることになった。
これまで自分の経験から組み立てていた戦略に対して、
他社のやり方には戸惑うことが多く、
副部長との衝突もあったが何とか実績を出さねばと
自分の主張は押し殺して幾つかのプロジェクトを成功させた。

その成果を花道に昨年定年退職を迎え、
現在は嘱託として週3日勤務している。
前年までは部下だった副部長が上司となり、
仕事も責任のない仕事ばかりだ。
Aさんはやりがいを感じられず、
かつての部下の仕事を手伝おうとしても、
露骨に疎ましがられることもある。

最近では営業部門ではなく、
技術部門時代の後輩と飲みに行くことが多くなった。
酒を飲むと涙を流したり、
飲み過ぎて翌日体調を悪くすることがしばしばだ。
妻や子供は働いており、休みの日も何かと忙しくしている様子で
定年退職後に時間ができたからといって
特段会話が増えたわけでもない。

「これまでの俺の人生は何だったんだ。
若い時は新規開発に打ち込み、営業時代は
馬鹿みたいに徹夜して提案書を作った。
家族よりも仕事を優先したことも自分の中では誇りに思っている。
会社を一番と考えてきたのに、会社生活の最後にきてこのザマだ。
人生の中で今が一番惨めだ。これから先、
何をすればいいのかわからない……」という愚痴が
行きつけの飲み屋で何度も聞かれるようになった。

そして先月、かかりつけ医からアルコール依存症との診断により
専門医による治療が命じられた。

仕事以外のよりどころを
会社人生の終盤や定年退職後に精神的不調を訴えるケースが多くなってきている。
「荷下ろしうつ病」や「定年後うつ病」などと呼ばれ、
「不眠」「食欲不振」「疲労感」や「著しい気分の落ち込み」
「不安感」といった「うつ病」と同様の症状がみられる。
精一杯頑張って、大きな目標を達成したあとに起こる
燃え尽き症候群も同様な症状である。
Aさんの場合、アルコール依存症との診断であるが、
背景には定年後の空虚感や無力感から
アルコールに依存するようになったと考えられる。

経済成長期の社会においては、
働く人の人生設計は会社や組織の成長とともにあった。
しかし「社会が知識を基盤に構成され、
知識労働者が主役になる『ネクスト・ソサエティ』ではそうでなくなる」と
ドラッカーは予言し、こう続けている。
「ほとんどの人間にとって、同じ組織の仕事を続けるには、
40年、50年は長すぎる。飽きてくる。
面白くなくなる。
惰性になる。耐えられなくなる。周りの者も迷惑する」

とはいえ、公的扶助が減り、先行きが不安な現代の日本では、
できるだけ長く働き続けたいと考える人は多い。
しかも雇用延長が義務づけられて、
働き続けることが可能になった。それ自体は望ましいことだが、
体力が減退したりやる気の維持が難しくなったりするうえ、
周囲から疎んじられる状況で働くことで、
精神的に不安定になるケースも少なくない。

こうした不調感は、会社一筋に身をささげてきた人に多いようだ。
仕事のみが全ての人の弊害を、ドラッカーは
仕事オンリーの人間は、視野が狭くなる。
組織だけが人生であるために、組織にしがみつく。
空虚な世界へ移るという恐ろしい退職の日を延ばすために、
若い人たちの成長の妨げになってでも、
自らを不可欠な存在にしようとする」と表現している。

仕事以外にやることがあれば、無力感から回復する可能性もある。
Aさんの場合も、アルコール依存の治療とともに
仕事以外に自分のやるべきこと、やりたいことを見つける必要がある。
「仕事を失うことが人を傷つけるのは、金銭ではなく誇りのためである。
仕事とは人格の延長である」とドラッカーは言っている。
仕事以外で人格を実感したり、表現できる場所を持つことで、
私たちは仕事の失敗や失職への不安に強くなれる。

仕事以外でよりどころとなる活動としては、
まず「趣味」やそのための「学び」が挙げられる。
また少年サッカーのコーチやマンションの管理組合の理事を務めるなど、
地域コミュニティーへの貢献も有意義であり、
しかも会社生活のように定年はない。もちろん、
仕事に生かせる資格取得や新分野の勉強などで
新しいスキルを磨くことも有効だ。


仕事一筋の人生では、会社生活の終盤、期待通りのポストや
画像の拡大
仕事に従事できずにメンタルヘルスが悪化する可能性が高まる。
仕事以外にやりがいを感じられる場所を確保しておきたい


仕事一筋の人生では、会社生活の終盤、
期待通りのポストや仕事に従事できずに
メンタルヘルスが悪化する可能性が高まる。
仕事以外にやりがいを感じられる場所を確保しておきたい
 
ドラッカーは副業やNPO活動を「パラレルキャリア」と呼んで勧めている。
以前は、業務に支障が出るとの理由から
副業禁止の会社も多かったが、経済成長が頭打ちで雇用が多様化した昨今、
多くの会社が副業に対する制限を緩和し始めた。
自分のやりたいことや社会貢献活動など、
仕事以外の活動に時間を使う人もより増えている。
これが会社にしがみつかなければならないと感じるストレスから解放してくれたり、
セカンドキャリアとして人生のよりどころとなる可能性は高い。

そしてもちろん、家族との関係もある。
自分の家族内での立ち位置を確認し、
家族をよりどころとするために必要な活動は何かを見直そう。
ドラッカーは「自分の仕事以外に、興味を示さず学ぼうとしない人は、
会社という立場からみても、決して優秀な人材とはいえない

(『明日のための思想』)と言っている。

過去の経験を積極的に聴く
シニア世代の社員が増加する現代、
私たちはどうすればいいだろうか。
仕事以外のよりどころを既に持っている、
または持つべきだと気づいた人はいいが、
気づかないまま調子を崩してしまう人もいる。
特に、年齢を重ねた社員がそうならないために周りの人は何ができるだろうか。

1.まず人生の先輩としての敬意を
仕事の生産性が下がり、責任ある職位に就いていなくとも、
高齢の社員は組織の中で長い間生き抜いてきた経験を持っている。
それは年下の上司や同僚にとって未体験の領域である。
そのこと自体に敬意を払うことをまず心掛けたい。

2.積極的に尋ねる
過去の経験を積極的に尋ねてみる。
それは古い経験で、現在のビジネスには合わないこともあるかもしれない。
しかし、それは本人の記憶と仕事への意欲をよみがえらせる。
自尊心はメンタルヘルスと仕事の生産性向上につながる。

「自分はもう何も役に立てない」
「話すことなんてない」と言っていたとしても、
しゃべり始めたら「実は自分は話したがっていたことに気付いた」という例はたくさんある。
落ち込んでいるシニア世代から武勇伝がきかれるようになれば、
周りの人の対応としては成功だ。

3.体調への配慮
高齢者のメンタルヘルス不調の要因は、
「喪失感」と並んで「体調の変化」が挙げられることが多い。
厚生労働省の調査によれば生涯医療費は60歳以降に急激に増加している。
個人差はあれど加齢と共に確実に体調の変化が現れ、
以前できていたことができなくなって不調を感じるものだ。
年下の上司や同僚はそうしたことも理解し、
配慮すべきだといえる。

ただし「体調が優れないと言うと、
仕事をさせてもらえないのではないか」と心配するシニア社員もいる。
そうした社員にとっては、体調を頻繁に聞かれることは
プレッシャーにもなる。性格や状況によって対応を変えることが必要だが、
少なくとも「体調に配慮している」という気持ちを伝えることだ。
そして不調がある場合には早めに専門家受診を勧めよう。

4.時には責任ある仕事も
本人の意欲と体調への配慮をした上で、
可能な範囲の責任ある仕事を任せることも成果とやる気につながるものだ。
「仕事を任せる」ことは年齢にかかわらず、
人材マネジメントという観点からも必要なので、
上司は積極的に実践すべきである。

雇用が延長され、かつ競争が激しくなるこれからの社会では、
シニア社員に単なる「会社に来ている人」ではなく、
「成果を出している人」になってもらう必要がある。
そのためには、ドラッカーが言うように
「人を問題、雑事、費用としてでなく、生かすべきもの」として捉え、
能力発揮の支援をすべきだといえよう。

参考文献:
『明日のための思想』(1960)、
『経営者の条件』(1966)、
『マネジメント-課題、責任、実践』(1973)、
『明日を支配するもの』(1999)、
『ネクスト・ソサエティ』(2002)
以上すべてドラッカー、
厚生労働省「生涯医療費」(2010)

尾崎健一(おざき・けんいち)
ライフワーク・ストレスアカデミー代表取締役、臨床心理士。
コンピューターメーカーに勤務後、大学院に進学し、
臨床心理士資格を取得。
その後、メーカーおよびEAP(従業員支援プログラム)にて人事部、
メンタルヘルス問題対応の仕事を担当して独立。
現在、企業のメンタルヘルス対応の仕組みづくり、
人事労務問題対応のコンサルティングなどを行う。
著書に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、
『黒い社労士と白い心理士が教える問題社員50の対処術』(共著、小学館集英社プロダクション)など。

[日経情報ストラテジー2013年3月号の記事を基に再構成]

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2700W_X20C14A2000000/?df=4

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする