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無印良品 「奇跡のV字回復」

2015年07月10日 22時49分33秒 | 学習支援・研究
無印良品、課長以上は「朝8時」から挨拶当番!
「奇跡のV字回復」を支えた社風改革

06:00東洋経済オンライン



「挨拶」で社風を変えた、良品計画の取り組みをご紹介します(写真提供:良品計画)
(東洋経済オンライン)


『現場力を鍛える』『見える化』などのベストセラーがある遠藤功氏が、
昨年11月に出版した『現場論 「非凡な現場」をつくる論理と実践』が、
発売20日で3万部を突破しました。

「日本企業の強さは現場力にある」という視点から、
現場力を鍛える仕組みがわかりやすく書かれた1冊で、
「私の職場でも応用できるヒントを見つけた」
「現場で働くことが楽しくなった」などの声が、
読者から多数届いています。

今回から2回にわたり、『現場論』のケース事例でも紹介した、
「無印良品」ブランドを運営する「良品計画」の
松井忠三(ただみつ)前会長との対談を掲載します
(対談は会長時代に行われました)。

2001年、松井社長が就任して「社風を変える」ために始めた
「朝の挨拶当番」、それがもたらした絶大な効果を解説します。

赤字38億円からの「奇跡のV字回復」
遠藤:「無印良品」ブランドを運営する良品計画は、
業績がすこぶる好調ですね。
営業収益が対前年比17.1%増の2,206億円(昨年度)。
小売業で2ケタの営業利益率は驚異的です。

松井:私が社長に就任した2001年は、
8月中間期に初めて38億円の赤字でしたから、
感慨深いですね。当時、あるアナリストからは
「一度ダメになった専門店が復活したことはないので、
頑張ってください」と皮肉られたくらいなので。

遠藤:まさに「奇跡のV字回復」ですね。
赤字体質から脱却するにあたって、
不採算店舗のリストラよりも、
あらゆる業務を徹底的に
「マニュアル化」することにこだわったようですね。

松井:そうですね。
ただ、社風が違う他社のマニュアルをまねて作っても、
当社の現場には定着させられませんでした。
働く人たちの意識や考え方、
要するに「社風」を変えないと、
優れたマニュアルだけを導入しても組織は変わりませんから。

遠藤:社風を変えるというのは、
最も重要ですが、最も難しいことでもありますよね。

松井:そうですね。
そこで始めたのが「朝の挨拶当番」です。
社風を変えるには、まずは挨拶から変えることにしました。
朝8時から会社の1階玄関で、出社してくる社員に挨拶を始め、
私自身、会長になってからも月に1回はやっていました。

遠藤:すごい。松井さんも「挨拶当番」をしていたんですね。
松井:挨拶はコミュニケーションの基本で、
それができない組織は、何をやってもダメですからね。
また、いくら新人研修で挨拶を徹底させても、
配属先の店長や本部の課長ができないと意味がありません。
それで、課長職以上に「挨拶当番」を義務づけました。

遠藤:なるほど、管理職から「挨拶当番」を始めたわけですね。
松井さんは、社長時代から「挨拶当番」をしていたんですか。

松井:もちろん、当時は私も週1回やっていました。
当時は、本部の課長職以上の3人が交代で、
自分たちから社員に挨拶をしていました。

遠藤:社員の反応はいかがでしたか?

松井:それまでの社風がしみ付いていた人の中には、
挨拶ひとつでも抵抗する人はいました。
「小学生みたいなことを始めたぞ」とか、
「なんだか堅っ苦しいな」とかね。
社員550人中、当初、挨拶しなかった社員は2人でした。

社風改革は組織に「新しいクセ」をつけること
遠藤:その挨拶しなかった2人の社員は、どうしたんですか?

松井:強制はしませんでした。
その代わりに、その2人の直属の上司を挨拶当番にして、
自発的に挨拶をさせるようにしました。
こういう取り組みは、会社が強制すると失敗します。
それに、小さなことから社員一人ひとりにしみ込ませないと、
社風なんて変えられませんから。

遠藤:あえて言葉にすれば、
「組織に『新しいクセ』をつける」といった感覚ですか?

松井:そうですね。その後も続けていると、
社員たちにも「朝から挨拶すると気持ちいい」
という感覚が生まれてきます。すると、
社内で取引先の方々と出くわしても、
自発的に挨拶するようになっていきました。

遠藤:続けているうちに、
社員たちがその効果を実感して納得すると、
「新しいクセ」が現場に定着し、
それが社風になっていくわけですね。
松井:「挨拶当番」以外にも、社風を変えるために、
役職の有無に関係なく「さん付け」で呼ぶ習慣も徹底させました。
部門長に5段階の「挨拶と『さん付け』チェック表」を渡し、
毎日の終礼で、社員に「挨拶」と
「さん付け」ができたかどうかを自己申告してもらいました。

遠藤:自己申告方式も、
社員に「やらされ感」を持たせないためですか?

松井:やはり、強制では身に付きませんからね。
さらに「ノー残業デー」を経て、
「毎日18時半退社」へと進めていきました。

遠藤:朝の挨拶を皮切りに、
「社風改革」を本格化されたわけですね。
しかし、18時半退社の徹底はかなり難しそうですが、
いかがでしたか?

松井:やはりノー残業デーの時点で、
自宅に仕事を持ち帰る社員がかなりいました。
そこで全員の仕事量を1割減らすなど、
業務内容の見直しも進めたのです。

遠藤:仕事量の削減を実現された点が、
会社の本気度を全社員に伝えるうえで、
とても重要だったと思います。そもそも、
仕事を自宅に持ち帰るだけなら、
社員の方々は18時半退社の効果を実感できませんしね。

成功体験から脱却するためのマニュアル
遠藤:話を少し戻しますと、
松井さんが、従来の社風からの脱却を決意された、
いちばん大きな理由は何だったのですか?

松井:当時は優秀な社員個人の経験を重視するあまり、
極端に言えば、店長が代わると店頭ディスプレーや
店舗レイアウトまでがらりと変わり、
現場もかなり混乱していました。

遠藤:それだと、常連のお客様にも不便を強いかねませんね。

松井:そうなのです。
また、ある売り場の業績が悪いと、
原因をきちんと究明せずに、
「店長がダメだ」という話にもなりやすい。
その結果、店長が何回も代わり、
「時々はうまくいく」という、
まだまだ幼稚な組織だったと思います。

遠藤:特定の社員に依存するあまり、
全社員が本来共有するべき業務上のスキルやノウハウが、
本部や店舗にもあまり蓄積されていなかったわけですね。

松井:ええ。
無印良品ブランドが始まって20年が過ぎた頃でしたが、
それは西武百貨店や西友を含めて、
当時のセゾングループの弱点でしたね。

遠藤:セゾン文化は、ひとつの時代をつくりましたからね。
その成功体験が強烈であるほど、
否定するのは大変だったはずです。
だからこそ、朝の挨拶レベルから、
社員に新たな習慣をしみ込ませる必要があったわけですね。

松井:そのとおりですね。
ひとつの成功体験は、時代が変わると、
むしろ会社の足を引っ張る原因になりがちですし。

遠藤:そこで「社風改革」を経て、特定の個人に依存せず、
「誰でも一定の成果を出せる」マニュアルづくりに取り組まれるわけですね。
対談後半は「視察殺到!無印良品のマニュアルの中身」
という観点から話を伺います。

(撮影:梅谷秀二)

http://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/bizskills/toyokeizai-72441.html