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「売らない営業」という働き方もある

2015年07月18日 13時02分27秒 | 学習支援・研究
女子社員の「売らない営業」が会社を変えた
東洋経済オンライン 2015/7/3 06:00 太田 彩子


画像:Honda Cars茨城南の土田麻理子さん[拡大]

現在、自動車の購入決定権の約8割は女性にあると言われていますが、
ホンダの新車営業(全国1万1,000人以上)に占める女性比率は
わずか4.1%。自動車ディーラーの世界は
まだまだ男性中心で、その営業方法も男勝りの
「押せ押せ営業」が主流。ただ、
それをいい形で裏切る「新たな勝ちパターン」も登場しています。
その例として今回紹介したいのが、
Honda Cars茨城南の土田麻理子さん。
経理職出身で2児の母でもある彼女は、
「スタープレイヤー」的な派手さはないものの、
「地道なコツコツ営業」で過去3年間の年間販売業績は、
2012年度51台、2013年度64台、2014年度72台と、
トップセールス級の結果を確実に出し続けています。
「女性活用」が叫ばれる一方、
まだまだ男性中心の現場で、
「長時間労働」や「根性」がモノを言う……
という色が根強い営業の分野。
どうやって女性の活躍推進をすればよいか
わからないという経営者やリーダーは少なくありません。
その打開策を伺うべく、今回はHonda Cars茨城南を訪ねました。

Honda Cars茨城南は、15店を束ねるホンダの販売会社。
220名の社員中、営業は69名。1カ月の販売台数は、
全国の営業の平均が4.8台なのに対し、
同社は6.0台。業界全体を見渡しても、
健闘している一社です。

その店舗のひとつが、土田さんの在籍する石岡正上内(いしおかしょうじょううち)店です。
自動車のディーラーといえば国道沿いにあり、
土日は来場者で賑わうイメージですが、
こちらは車通りの少ない路地に面した立地。
取材中も来客者はゼロ。店内は閑散としていました。

通常ディーラーでは、新規飛び込み客の購入が販売台数の6割を占めると言います。
それが石岡正上内店の場合、「1カ月にゼロ」
という月も珍しくないといいます。
ディーラーとしては致命的……と思われるかもしれませんが、
石岡正上内店の「勝ちパターン」は、
そんな逆境があってこそ生まれたものなのです。

経理担当だった普通の主婦が自動車営業に? 
Honda Cars茨城南の取締役営業部長の福田敏彦さんは、
そんな石岡正上内店の立地悪条件に加え、
少子高齢化、自動車離れ、将来的な増税(10%)といった
市場環境の変化から、新規来店顧客に頼りすぎる運営に限界を感じ、
むしろ既存顧客に働きかける必要を感じていたと言います。

なかでも「車検の獲得」営業は、他社からの切り替え需要の獲得や、
代替えの需要を喚起できる大切な取り組み。
そう強く考えていましたが、
当時はまだ具体的に着手できていない状況でした。

5年前、石岡正上内店に異動してきたのが、
土田麻理子さん。現在は39歳で、
10歳と5歳になる2人の女の子を持つワーキングマザーである彼女は、
おとなしく控えめな性格の、いわゆる「普通の女性」。
ですが、社内のロープレ大会で1位を獲得するなど、
積極性や粘り強さを持つ人でした。

そんな土田さんに可能性を見出した福田さんは、
当時まだ業務職(経理担当)だった彼女に、
手つかずだった車検の獲得営業を託したのです。
土田さんはまず、担当になった顧客リスト260件の中から、
車検対象になっている顧客へ順次電話をしました。
しかし、車検の予約はなかなか入らず、
対象の50%未満の獲得しか出来ません。
これではらちが明かないと思った彼女は、
会社の了承を取り付け、顧客を1件1件、
地道に訪問することを始めたのです。

「とにかく外へ行ったら、元気に笑顔で挨拶する。
そして、いきなり車検の売り込みをするのではなく、
きれいなお庭が目についたら『これなんていうお花ですか?』とか、
小さな自転車が停めてあったら『お子さんはおいくつですか?』とか、
お客様に寄り添うように雑談をしていきました。

そうするうちに、不思議とお客様の方から
『実はね、あなたのところのお店、遠いのよ』
『ディーラーで車検なんて、敷居が高いと思っちゃうのよ』といった、
ディーラーに関する不満や相談をしてくださるようになったんです」(土田さん)

獲得率は2カ月で13ポイント向上
電話ではけんもほろろだったお客様が、直接顔を合わせ、
会話を繰り返すうち、本音をぽろぽろとこぼすようになりました。

さらに顧客接点を強化するため、土田さんは
「石岡正上内店ワクワク新聞」という手書きの新聞を作成、
顧客に配布しました。「車のことだけでなく、
料理レシピとか生活の知恵的な、
主婦目線で女性顧客に役立つ情報を
心を込めて書くようにしました」(土田さん)

こうして当初は車とは関係ない信頼関係を一人、
また一人と積み重ねることから始まった土田さんの車検獲得営業は、
顧客の中に眠っていた潜在的ニーズを着実に掘り起こし、
目に見える成果を会社にもたらします。

土田さんが顧客訪問を開始する前は、
車検実績率49%だったものが、
開始後2カ月間で62%に。わずか2カ月で、
なんと13ポイントもアップさせるという快挙を達成したのです。

しかし、新車販売がメインの自動車ディーラー。
「売らない営業」を、しかも営業としては
素人の女性が取り組むことを、会社は不安に思わなかったのでしょうか?  
福田さんによると、実は当時、
女性が訪問で車検獲得活動をすることに対し、
社内の反対の声は少なくなかったそうです。

「車離れが危惧される時代、既存顧客に働きかける
中長期的な営業の必要性は会社側としても認めてはいましたが、
目の前の来店客に頼って営業していた方が
即効果が出て、楽。売り上げも上がっていただけに、
あえて車検獲得を推進することに疑問を示す声もありました。
「女性が車なんて」という業界の風習にとらわれた声も
根強く残っていたのです。

しかし、土田さんは地道なコツコツ営業で、
顧客の心をつかみ、結果的に成功事例をもたらしてくれました。
もし男性が車検獲得を担当していたら、
単刀直入に『車検の時期なんですけど……』と
切り出していたでしょう」(福田さん)

既存顧客の掘り起こしには、押せ押せ営業は逆効果。
継続的な関係を望むなら、なおさら根性第一の営業では続きません。
当時、茨城南は全国のHonda Carsの中でも1、2を争う販売トップ店であり、
社内でも「勝ちパターン=押しの強い営業」という固定観念が
あったといいますが、土田さんのコツコツ営業は、
それを覆す「勝ちパターン」を提示したのです。

創業以来、第一号の「女性営業」に
車検獲得取組の成功で、訪問活動は社内の定例活動となりつつあるなか、
土田さんには晴れて営業への転任が要請されました。
「実は、営業になると大変そうだし、
私には無理と思って、ずっと拒んでいたんです。
でも、ある日、福田部長から「営業」の肩書きがついた名刺をわたされて……。
しょうがない、やってみよう! と(笑)」(土田さん)

こうしてHonda Cars茨城南、1978年創業以来、
第一号となる女性営業が誕生しました。
土田さんは持ち前の「コツコツ営業」で
「着実に売れる女」の階段を昇り始めたのです。

次回は、土田さんの顧客の声を交えながら、女性営業ならではの武器、
さらには女性営業がどうすれば活躍できるのかについて、
考えてみたいと思います。

 (構成:井口啓子)

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