なぜ大学のポスターは
「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか
ITmedia ビジネスオンライン
2015年12月7日 08時00分 (2015年12月7日 08時10分 更新)
大学のスローガンは同じような文言ばかり

前回は、日本の飲食・食品・製造業界にはびこる
「こだわり」という名の妖怪(=手垢にあみれた決まり文句)を扱った。
そのような決まり文句は、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉だ。
だから「空気コピー」と呼ぶことにした。
「こだわりの××」というフレーズは
現在の日本においてはまさに「空気コピー」だ。
何の役割も果たしていない。
お客さんの心を1ミリも動かさない。
あってもなくて同じ。いやないほうが圧倒的にいい言葉なのだ。
それにもかかわらず、日本の多くの飲食店や食品会社は、
何も考えずに使いまくっている。まさに「こだわりバカ」状態だ。
「空気コピー」は、何も「食」を扱う業界だけの専売特許ではない。
例えば、日本全国各地にある大学のスローガン(※)
などもまさに「空気コピー」のオンパレードだ。
※スローガン=コーポレートメッセージ、
ブランドステートメント、ブランドプロミス、
タグラインなどさまざまな言い方がある。
あなたもきっと、駅などで大学の広告ポスターを見たことがあるはず。
しかしそこに何が書かれていたか覚えている人はほとんどいないだろう。
なぜなら、大学の広告ポスターの多くは、
キャンパスにいる学生の顔の写真と「空気コピー」で構成されているからだ。
そのようなポスターや看板を見かけると、
私は思わず写真を撮ってしまう習慣がある。
何を隠そう私は、大学広告界における「空気コピー」のコレクターなのだ。
地方に出張に行くと、その土地でしか採集できない
大学のポスターに出くわすので思わずにんまりしてしまうくらいだ。
●空気コピーとしてスルーされるだけ
そうやってコレクションした大学のスローガンの一部を見てもらおう。
(大学全体ではなく一学部のスローガンも混じっています)
「世界へ、そして未来へ」
「日本の未来、世界の舞台へ翔こう!」
「Lead the Way自分、世界、そして未来を拓く」
「世界を知る。世界で学ぶ。世界とつながる」
「多彩な学びとその先の未来へ」
「世界をみつける」
「未来をみつける」
「ここに集い、世界に旅立つ」
「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」
「その先の自分を創る」
「GO GLOBAL! 」
いかがだろう?
このフレーズからどこの大学のものか想像つくだろうか?
個々のスローガンの優劣を論じているわけではない。
ただこうやって並べてみると、
いかに似た言葉が使われていて、
それが空気のような言葉になっているかが分かるだろう。…
大学のスローガンにおける妖怪(=手垢がついた決まり文句)は
「世界」「未来」「学び」「自分」などの名詞と、
「はばたく」「拓く」「みつける」「創る」
などの動詞の組み合わせたものだ。
それで「空気コピー」ができあがる。
極端にいえば、学生やキャンパスの写真に
これらの言葉を組み合わせて構成すれば、
大学のポスターは「一丁あがり」だ。
しかし、こんなポスター、誰も真剣に見ないし、
記憶にもまったく残らない。
お金をドブに捨てているのと同じだ
(制作している広告代理店や制作会社の実入りにはなっているだろうが)。
それぞれの大学が言おうとしていること自体は間違っているわけではない。
どの大学も、学生たちに「世界にはばたいてほしい」
と真剣に思っているだろうし、
「未来を拓いてほしい」と本気で思っているだろう。
しかし残念ながら、そのような大学側の思いは
誰にも伝わらない。空気コピーとして
スルーされるだけだ。
もちろん、毛色の違った言葉を使っているスローガンもあるにはある。
しかしどうしても「その大学でなければならない言葉」
に出会うことはほとんどない。
●大学の空気コピーはなぜうまれるか?
それぞれの大学の名誉のために言っておくと、
前ページのようなスローガンは、
決していい加減に決めたわけではないはずだ。
私自身、ある大学のスローガン設定に関わったことがあり、
このような文言が簡単には決まらない
というということを身に染みて知っている。
理事長・学長、執行部の承認はもとより、
教授会やOB会をはじめいろいろなステークホルダーが存在し、
様々な意見が寄せられる。
ポジティブなものならいいが、
多くはネガティブな視点でチェックするものだ。
規模の大きな大学になればなるほど、
簡単には決まらないものなのである。
そんな難関をくぐりぬけてきた言葉なのだ。
そもそも最高学府の教授や職員がその英知を集結して
(外部の優秀なブレーンの力を借りて)、
何とか少しでも自分の大学をよく思ってもらいたい
という一途な思いで産み出したはずの言葉である。
それが、こんな風にどこも同じような
「空気コピー」になってしまうのはなぜだろう?
理由は3つ考えられる。
(1)集合知によって無難なものになっていく
このようなスローガンが決まるまでに、
多くの人からの意見が寄せられる。
前述したようにネガティブチェックも数多く入る。
すると、どうしても当たり障りのない無難なもの
(どうでもいいもの)になっていく傾向がある。…
(2)自分の大学ことしか考えていない
多くの大学では視野が内向きになってしまっている。
つまり、スローガンを考えるときに、自分の大学のことしか考えない。
他の大学との差別化など競合という視点がない。
どこの大学も目指す目標にそんなに大きな差があるわけではないので、
結果としてどこも似たような空気コピーが生まれてくる。
(3)そもそも広告の効果がほとんどない
大学のイメージを変えるにはかなり長い時間が必要になる。
どんなにいい広告・広報活動をしたとしても
完全にイメージが変わるのは
一世代が替わるくらいの年月が必要だ。
一般企業のように広告の優劣によって、
すぐに売り上げが大きく変わるなどということもない。
そのような理由から、空気のようなポスターでも「ま、いいかと」なる。
以上のような理由で、大学のスローガンは「空気化」していくと考えられる。
これはお役所が発信する言葉の多くが「空気化」するのと同じ原理だ。
●言葉を強くする3カ条
言葉を空気化させないためには、普段から意識して
「強い言葉」を使う習慣を身につける必要がある。
そう、言葉には強い・弱いがあるのだ。
「強い言葉」とは、「印象に残る」「心に刺さる」
「行動したくなる」ような言葉である。
「弱い言葉」とは、「手垢がついた」「ありきたりな」
「心が動かない」ような言葉だ。
残念ながら、具体的にこの言葉を使えば
必ず強くなるというような魔法の言葉は存在しない。
言葉の強い弱いは、使われる場面によって大きく変わるからだ。
ある場面では強い言葉が、ある場面では弱くなることも珍しくない。
例えば、ダイエット本などの実用書などで
よく使われる「魔法の」「奇跡の」というような言葉。
本のタイトルとしては「強い言葉」になることも多いが、
例えばビジネスの現場では「信用できない」
「怪しい」と思われてしまう。
「弱い言葉」になってしまうのだ。
大学のスローガンでも同じだ。
「魔法の大学」がスローガンの大学では、
目立ちはしても誰も本気で行きたいとは思わないだろう。
このように場面によって言葉の強い弱いは変わってくるが、
最低限以下の3つのポイントを注意だけでも
言葉が強くなる可能性が高まる。
言葉を強くするための3カ条
(1)決まり文句を避け、できるだけ具体的に書く。
(2)言葉の化学反応を考える。
(3)圧縮して言い切る。
●言葉が強くなる可能性
順番に見ていこう。
(1)決まり文句を避け、できるだけ具体的に書く
決まり文句とはこの連載で取り上げているような手垢のついた文言のこと。…
このようなフレーズを使うと言葉はてきめんに弱くなる。
例えば、以下のようなお店の紹介文があったとする。
当店ではくつろぎの空間で
こだわりの鍋料理をおもてなしの心で提供しています。
これでは、鍋料理を提供する店なら、
どこでも流用できる典型的な空気コピーだ。
これを少しでも強いフレーズにするには、より具体的に書くことだ。
「お座敷に掘ごたつで完全個室。
名物『鰯のつみれ』が自慢のちゃんこ鍋で
心の芯まで温まれます」といった感じで。
大学のスローガンでも考え方は同じだ。
「世界」「未来」「はばたく」「拓く」
などの言葉をより具体的に変更するだけでも、
強い言葉になる可能性はある。
(2)言葉の化学反応を考える
異質な言葉同士が組み合わされると、
お互いが化学反応をおこして強いフレーズになることがある。
例が少し古いが、2009年にトヨタのテレビCMで使われ流行語にもなった
「こども店長」は典型的な例だ。
「こども」も「店長」もそれぞれは平凡な言葉だが、
組み合わされると化学反応がおこって「強い言葉」になった。
同じころ、流行語になった「草食男子」「肉食女子」もそうだ。
普通は人間には使わない「草食」「肉食」という言葉と、
「男子」「女子」との組み合わせが新鮮で「強い言葉」になる。
●大学のスローガンを強い言葉にした
前述した大学のスローガンで考えてみよう。
「世界」という陳腐な言葉であっても、
言葉の組み合わせ次第では
少しは引っ掛かりのある「強い言葉」になる可能性はある。
例えば、一般的に「大学」は「学ぶ」場所であるから、
その反対語の「遊ぶ」という言葉を組み合わせてみる。
世界で遊ぶ人、募集。○○大学
どうだろう? 「世界にはばたく」よりは、
少しは引っ掛かりのあるフレーズになったのではないだろうか?
(3)圧縮して言い切る
言葉は、短く圧縮して言い切ったほうが強くなる。
例えば、ドラマなどで主人公の強烈なキャラクターを表現するために、
圧縮して言い切るセリフが使われることが多い。
2005年に原作の漫画がドラマ化された『ドラゴン桜』では、
阿部寛さん演じる主人公・桜木建二が言い切る強いセリフを連発した。
中でも第一話のタイトルにもなっている桜木のセリフ
「バカとブスこそ、東大へ行け!」は
非常に印象に残る強いフレーズだった。
本来の意味合いとしては、「とりえや才能がなかったり、
やりたいことが見つかってないからこそ東大に入っておくべきだ。…
あとから何かしたいと思った時に就職にも有利だし
いろいろな可能性が高まる」ということだろう。
それを短く圧縮して言い切ったからこそ、
ストーリーを象徴するような強いセリフになっているのだ。
これを真似て、以下のようなキャッチコピーが書かれた大学ポスターがあったら、
とりあえず目をとめて内容を見てしまうと思うのだが、どうだろう?
バカとブスこそ、うちへ来い。○○大学
(川上徹也)
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20151207/Itmedia_business_20151207020.html
「世界にはばたき」「未来を拓く」ばかりなのか
ITmedia ビジネスオンライン
2015年12月7日 08時00分 (2015年12月7日 08時10分 更新)
大学のスローガンは同じような文言ばかり

前回は、日本の飲食・食品・製造業界にはびこる
「こだわり」という名の妖怪(=手垢にあみれた決まり文句)を扱った。
そのような決まり文句は、あってもなくても同じ空気のような存在の言葉だ。
だから「空気コピー」と呼ぶことにした。
「こだわりの××」というフレーズは
現在の日本においてはまさに「空気コピー」だ。
何の役割も果たしていない。
お客さんの心を1ミリも動かさない。
あってもなくて同じ。いやないほうが圧倒的にいい言葉なのだ。
それにもかかわらず、日本の多くの飲食店や食品会社は、
何も考えずに使いまくっている。まさに「こだわりバカ」状態だ。
「空気コピー」は、何も「食」を扱う業界だけの専売特許ではない。
例えば、日本全国各地にある大学のスローガン(※)
などもまさに「空気コピー」のオンパレードだ。
※スローガン=コーポレートメッセージ、
ブランドステートメント、ブランドプロミス、
タグラインなどさまざまな言い方がある。
あなたもきっと、駅などで大学の広告ポスターを見たことがあるはず。
しかしそこに何が書かれていたか覚えている人はほとんどいないだろう。
なぜなら、大学の広告ポスターの多くは、
キャンパスにいる学生の顔の写真と「空気コピー」で構成されているからだ。
そのようなポスターや看板を見かけると、
私は思わず写真を撮ってしまう習慣がある。
何を隠そう私は、大学広告界における「空気コピー」のコレクターなのだ。
地方に出張に行くと、その土地でしか採集できない
大学のポスターに出くわすので思わずにんまりしてしまうくらいだ。
●空気コピーとしてスルーされるだけ
そうやってコレクションした大学のスローガンの一部を見てもらおう。
(大学全体ではなく一学部のスローガンも混じっています)
「世界へ、そして未来へ」
「日本の未来、世界の舞台へ翔こう!」
「Lead the Way自分、世界、そして未来を拓く」
「世界を知る。世界で学ぶ。世界とつながる」
「多彩な学びとその先の未来へ」
「世界をみつける」
「未来をみつける」
「ここに集い、世界に旅立つ」
「ともに学び、探求し、共に世界を切り拓く大学」
「その先の自分を創る」
「GO GLOBAL! 」
いかがだろう?
このフレーズからどこの大学のものか想像つくだろうか?
個々のスローガンの優劣を論じているわけではない。
ただこうやって並べてみると、
いかに似た言葉が使われていて、
それが空気のような言葉になっているかが分かるだろう。…
大学のスローガンにおける妖怪(=手垢がついた決まり文句)は
「世界」「未来」「学び」「自分」などの名詞と、
「はばたく」「拓く」「みつける」「創る」
などの動詞の組み合わせたものだ。
それで「空気コピー」ができあがる。
極端にいえば、学生やキャンパスの写真に
これらの言葉を組み合わせて構成すれば、
大学のポスターは「一丁あがり」だ。
しかし、こんなポスター、誰も真剣に見ないし、
記憶にもまったく残らない。
お金をドブに捨てているのと同じだ
(制作している広告代理店や制作会社の実入りにはなっているだろうが)。
それぞれの大学が言おうとしていること自体は間違っているわけではない。
どの大学も、学生たちに「世界にはばたいてほしい」
と真剣に思っているだろうし、
「未来を拓いてほしい」と本気で思っているだろう。
しかし残念ながら、そのような大学側の思いは
誰にも伝わらない。空気コピーとして
スルーされるだけだ。
もちろん、毛色の違った言葉を使っているスローガンもあるにはある。
しかしどうしても「その大学でなければならない言葉」
に出会うことはほとんどない。
●大学の空気コピーはなぜうまれるか?
それぞれの大学の名誉のために言っておくと、
前ページのようなスローガンは、
決していい加減に決めたわけではないはずだ。
私自身、ある大学のスローガン設定に関わったことがあり、
このような文言が簡単には決まらない
というということを身に染みて知っている。
理事長・学長、執行部の承認はもとより、
教授会やOB会をはじめいろいろなステークホルダーが存在し、
様々な意見が寄せられる。
ポジティブなものならいいが、
多くはネガティブな視点でチェックするものだ。
規模の大きな大学になればなるほど、
簡単には決まらないものなのである。
そんな難関をくぐりぬけてきた言葉なのだ。
そもそも最高学府の教授や職員がその英知を集結して
(外部の優秀なブレーンの力を借りて)、
何とか少しでも自分の大学をよく思ってもらいたい
という一途な思いで産み出したはずの言葉である。
それが、こんな風にどこも同じような
「空気コピー」になってしまうのはなぜだろう?
理由は3つ考えられる。
(1)集合知によって無難なものになっていく
このようなスローガンが決まるまでに、
多くの人からの意見が寄せられる。
前述したようにネガティブチェックも数多く入る。
すると、どうしても当たり障りのない無難なもの
(どうでもいいもの)になっていく傾向がある。…
(2)自分の大学ことしか考えていない
多くの大学では視野が内向きになってしまっている。
つまり、スローガンを考えるときに、自分の大学のことしか考えない。
他の大学との差別化など競合という視点がない。
どこの大学も目指す目標にそんなに大きな差があるわけではないので、
結果としてどこも似たような空気コピーが生まれてくる。
(3)そもそも広告の効果がほとんどない
大学のイメージを変えるにはかなり長い時間が必要になる。
どんなにいい広告・広報活動をしたとしても
完全にイメージが変わるのは
一世代が替わるくらいの年月が必要だ。
一般企業のように広告の優劣によって、
すぐに売り上げが大きく変わるなどということもない。
そのような理由から、空気のようなポスターでも「ま、いいかと」なる。
以上のような理由で、大学のスローガンは「空気化」していくと考えられる。
これはお役所が発信する言葉の多くが「空気化」するのと同じ原理だ。
●言葉を強くする3カ条
言葉を空気化させないためには、普段から意識して
「強い言葉」を使う習慣を身につける必要がある。
そう、言葉には強い・弱いがあるのだ。
「強い言葉」とは、「印象に残る」「心に刺さる」
「行動したくなる」ような言葉である。
「弱い言葉」とは、「手垢がついた」「ありきたりな」
「心が動かない」ような言葉だ。
残念ながら、具体的にこの言葉を使えば
必ず強くなるというような魔法の言葉は存在しない。
言葉の強い弱いは、使われる場面によって大きく変わるからだ。
ある場面では強い言葉が、ある場面では弱くなることも珍しくない。
例えば、ダイエット本などの実用書などで
よく使われる「魔法の」「奇跡の」というような言葉。
本のタイトルとしては「強い言葉」になることも多いが、
例えばビジネスの現場では「信用できない」
「怪しい」と思われてしまう。
「弱い言葉」になってしまうのだ。
大学のスローガンでも同じだ。
「魔法の大学」がスローガンの大学では、
目立ちはしても誰も本気で行きたいとは思わないだろう。
このように場面によって言葉の強い弱いは変わってくるが、
最低限以下の3つのポイントを注意だけでも
言葉が強くなる可能性が高まる。
言葉を強くするための3カ条
(1)決まり文句を避け、できるだけ具体的に書く。
(2)言葉の化学反応を考える。
(3)圧縮して言い切る。
●言葉が強くなる可能性
順番に見ていこう。
(1)決まり文句を避け、できるだけ具体的に書く
決まり文句とはこの連載で取り上げているような手垢のついた文言のこと。…
このようなフレーズを使うと言葉はてきめんに弱くなる。
例えば、以下のようなお店の紹介文があったとする。
当店ではくつろぎの空間で
こだわりの鍋料理をおもてなしの心で提供しています。
これでは、鍋料理を提供する店なら、
どこでも流用できる典型的な空気コピーだ。
これを少しでも強いフレーズにするには、より具体的に書くことだ。
「お座敷に掘ごたつで完全個室。
名物『鰯のつみれ』が自慢のちゃんこ鍋で
心の芯まで温まれます」といった感じで。
大学のスローガンでも考え方は同じだ。
「世界」「未来」「はばたく」「拓く」
などの言葉をより具体的に変更するだけでも、
強い言葉になる可能性はある。
(2)言葉の化学反応を考える
異質な言葉同士が組み合わされると、
お互いが化学反応をおこして強いフレーズになることがある。
例が少し古いが、2009年にトヨタのテレビCMで使われ流行語にもなった
「こども店長」は典型的な例だ。
「こども」も「店長」もそれぞれは平凡な言葉だが、
組み合わされると化学反応がおこって「強い言葉」になった。
同じころ、流行語になった「草食男子」「肉食女子」もそうだ。
普通は人間には使わない「草食」「肉食」という言葉と、
「男子」「女子」との組み合わせが新鮮で「強い言葉」になる。
●大学のスローガンを強い言葉にした
前述した大学のスローガンで考えてみよう。
「世界」という陳腐な言葉であっても、
言葉の組み合わせ次第では
少しは引っ掛かりのある「強い言葉」になる可能性はある。
例えば、一般的に「大学」は「学ぶ」場所であるから、
その反対語の「遊ぶ」という言葉を組み合わせてみる。
世界で遊ぶ人、募集。○○大学
どうだろう? 「世界にはばたく」よりは、
少しは引っ掛かりのあるフレーズになったのではないだろうか?
(3)圧縮して言い切る
言葉は、短く圧縮して言い切ったほうが強くなる。
例えば、ドラマなどで主人公の強烈なキャラクターを表現するために、
圧縮して言い切るセリフが使われることが多い。
2005年に原作の漫画がドラマ化された『ドラゴン桜』では、
阿部寛さん演じる主人公・桜木建二が言い切る強いセリフを連発した。
中でも第一話のタイトルにもなっている桜木のセリフ
「バカとブスこそ、東大へ行け!」は
非常に印象に残る強いフレーズだった。
本来の意味合いとしては、「とりえや才能がなかったり、
やりたいことが見つかってないからこそ東大に入っておくべきだ。…
あとから何かしたいと思った時に就職にも有利だし
いろいろな可能性が高まる」ということだろう。
それを短く圧縮して言い切ったからこそ、
ストーリーを象徴するような強いセリフになっているのだ。
これを真似て、以下のようなキャッチコピーが書かれた大学ポスターがあったら、
とりあえず目をとめて内容を見てしまうと思うのだが、どうだろう?
バカとブスこそ、うちへ来い。○○大学
(川上徹也)
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20151207/Itmedia_business_20151207020.html