
ほんとうに観て良かったと思える映画の一つでした。敢えて書き連ねるほどの難しい事件が起こる訳ではないです。些細ないざこざと民族間の軋轢が物語の主軸になっていて、そこから両者が民族の垣根を超えてどう係わって理解し合うかを描いています。静かな感動を与えてくれる秀作でした。
この物語の主人公であるウォルトは朝鮮戦争を経験した元軍人と言う設定です。アメリカの映画やTVドラマを見ていると、元軍人でベトナム戦争や朝鮮戦争に従軍していたと言う設定がよくあります。正義感を持っている人だからこそ、その戦場での暗い過去を引きずってトラウマに苦しんだり、晩年の人生に重くのしかかってくると言うのもよくあります。
ウォルトの場合も、悲惨な悪夢をもたらした戦争と、無気力で個人主義が蔓延した平和の両者の時代を実体験した人の、やりきれない苦悩を持った人物だったと思います。近所の住人や自分の息子たちには人種差別主義者の偏屈で頑固な老人と言う風にしか見られていませんが、本人の心の奥には、誰にも語る事の無かった癒される事のない深い悔恨の情が渦巻いていたんです。
過去の自分を封印するように硬い鎧で覆われていた老人の心の扉が、隣に住むアジア系移民の姉弟が起こした些細な事件がきっかけで少しづつ開いて行きます。そして忘れかけていた温もりのある心の触れ合いを感じ、戸惑いながらも交流が深まります。その事が彼らの人生を大きく変えて行くことになってしまうのですが・・・。
誰もが抱える親の老後問題や人種差別問題をシニカルに笑いを誘うようにサラッと描いていて、ラストでは主人公ウォルトの過去に経験した戦争体験からくる”しょく罪”の思いと”愛”のメッセージが伝ってきて、久しぶりに涙がジワッとくるのを感じた映画でした。老いる事と、生と死を真正面から扱うと暗く深刻になりがちですが、この映画の場合は最後まで重くなり過ぎず、観終わった後に痛快さが残るエンディングでした。
私の採点≫

![]() ![]() ![]() ![]() | 「グラン・トリノ」 (4月25日(土)公開) 上映時間≫ 1時間57分 製作年:製作国≫2009年1月(wide) :アメリカ 英題≫「 GRAN TORINO 」 監督≫クリント・イーストウッド 出演≫クリント・イーストウッド / ビー・ヴァン / アーニー・ハー / クリストファー・カリー / コリー・ハードリクト 他 ストーリー≫『ミリオンダラー・ベイビー』以来、4年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた人間ドラマ。【妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合い交流が始まるが・・・】(Yahoo!映画より抜粋) 音 楽≫ クリント・イーストウッドさんの息子のカイル・イーストウッドさんが、この映画の音楽を担当しています。カイルさんはジャズベーシストで、自身の音楽プロモーションを兼ねて4月29日に来日しています。「ミスティックリバー」「ミリオンダラーベイビー」「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の時の音楽も担当されていたそうですね。 ランキング≫全米興行成績は初登場1位 米Yahoo!ユーザー6段階平均評価 「A-」(20549 ratings) 米Yahoo!批評家6段階平均評価 「B」(10 reviews) |
アメリカのYahoo!批評家の評価はBだったんですねぇ。
日本の映画ブロガーさんたちは軒並み高い評価&満足度なので、そのBという評価が意外な気がしました。
私はもう大満足の映画でした~。
>アメリカのYahoo!批評家の評価はBだったんですねぇ。
★あちらの批評家の評価Bと言うのは・・・、 アジア系の俳優さんたちへの評価なんじゃないでしょうか?(^^ゞ
最初、アジア系のお隣のお宅での会話がちょっと
私は棒読みっぽく聞こえたりしたのが気になりました。
タイ語?か、何か知らないけど、あの辺りの演技とかが、
素人っぽく見え過ぎたのかも知れません。
純朴そうな雰囲気が出ていたとも思うのですが!?(^_^;)
これはあくまで私の推測に過ぎませんよ!(笑)
出演者が名前も顔も知らないアジア系の俳優さん達が多かったので
私は、よりリアルに感じられたと思っています。
まず、言葉が非常に重要な要素となっていると感じました。諸集団がひしめき合い、それらの外側に一般社会というシステムが張り付いていて、それもひとつの集団的な様相を持っている(ように見える)。言葉は機能によって集団を分け隔て、集団の価値を守る盾であり、矛にもなる。辛らつな言葉だけがあるのではなく、一方で甘言といえる言葉もあり、コワルスキーは、辛らつな言葉を信用し、甘言には警戒する。コワルスキーと仲間との会話、コワルスキーとスーとの会話、スパイダーとタオとの会話、命令と言う言葉、英雄という言葉、占い師の言葉、コワルスキーと息子との電話での会話、様々な言葉があり、様々な経験を通過して、ついには、愛すべき隣人の喋っている意味が分からなくても受け入れることができるようになる。ここら辺は、「バベル」と比較してしまう。
言葉と同じくらい重要なのが、振舞いというもうひとつのカタチでしょう。これもやはり言葉と同じように機能する。
タオと、もう一人のタオである牧師と、かつてのタオ、すなわちコワルスキーには出会わなかった別のタオであるコワルスキー、三人のタオを中心に言葉と振舞いがカタチ造る社会というものを浮かび上がらせようとしているのではないでしょうか。牧師の存在が微妙で、彼は、コワルスキーの息子と同じくコワルスキーの属する集団の外にある(ように見える)社会一般のシステム(という集団)の住人で、したがって、コワルスキーと息子を、直接には見えないながらも、繋ぐことになる。
もう一人のタオ、朝鮮戦争で敵となった、タオと同年代の少年の記憶によって、覚悟と義務(それらも一つの振舞いというカタチを伴う。)の意味を問い直し続け、モン族との交流や事件を経て、三つの懺悔(これもやはり言葉であり、最も重要な言葉だと思う。)に至り、映画はクライマックスへ向かう。最後に受け入れるのは牧師達であるが、最後に愛したのは、タオ。葬儀と相続(遺言状の開示)という形式的な場におけるコントラストがおもしろかったが、どちらかを排除するわけではないんですよね。勿論、葬儀も相続も決まりごとだから、「やらなければならない」ことだけれど、一つに収めなければならないというのが。無形遺産の相続ということで言えば、「ノーカントリー」(の最後の独白の場面)を思い出します。
アメリカ的価値というのも決して一元化できるものではなく、諸価値がひしめき合っているということでしょうか、単純に「サラダボール」ということではなく、アメリカ人同士であっても。
だらだらととりとめのない長文申し訳ありませんでした。
一瞬、ブログへお邪魔したのか!?と思いましたが・・・(^.^)
全然、コメントはありがたいです!
私は「バベル」も「ノーカントリー」も観ていないので
比較して同感することはできないんですけど、
人が人を理解するには、やはり同じ空気を吸って同じ目線で物を見て、
同じ悩みを共有しないと無理なんだと思いました。
人を拒絶するのは簡単ですが、理解しようとするのはエネルギーが必要。
そのエネルギーが逆に作用する場合も有るし、バーニングする場合も!
バーニングって恐いですから!(~_~メ)
俳優も成功し、監督としても数々の作品は心にずっしり響き、印象に強く残るものばかりです
才能豊かな素晴らしい監督ですね☆
お久しぶりです。
>この作品はまだ観てないですが、皆さんの評価は高いですね
★笑えて泣ける映画ですよ。(^.^)
泣かそうと言う仕掛けがミエミエじゃないのが良いです。
>俳優も成功し、監督としても数々の作品は心にずっしり響き、
>印象に強く残るものばかりです
>才能豊かな素晴らしい監督ですね☆
★アメリカ西海岸にある小さな街の市長さんにもなりましたよね。
あと、自分のブランドのアパレル関係の会社も持ってるし、
確かそちらの事業も成功してるとか聞いたけど、
今現在どうなっているかは知りませんが・・・(^_^;)
とにかく何にでも好奇心旺盛な方で才能豊かな方ですね!
脱帽ですわ!(^^)!
いい映画でしたね。
>観終わった後に痛快さが残るエンディング
同感です。最後に流れるイーストウッドの歌声がテーマ曲にぴったりで、涙がポロポロと流れてしまいました。
>最後に流れるイーストウッドの歌声がテーマ曲にぴったりで、
>涙がポロポロと流れてしまいました。
★こう言う自然に涙が溢れてくるような展開は良いですよね。
わざと泣かせるスイッチがミエミエなのもありますけどね!(笑)
「ミスティック・リバー」はDVDで見たんですけど、
ほんとに後味が悪かったですね。そう言う感覚が残っていたので、
イーストウッド作品はちょっと引き気味だったんですけど、
タイトルの語感が気に入って観る事に決めたんですよ。
案外、良く当たるんです!(笑)
>「ミスティック・リバー」はDVDで見たんですけど、
>ほんとに後味が悪かったですね。そう言う感覚が残っていたので、
>イーストウッド作品はちょっと引き気味だったんですけど、
そうですね、彼の作品、エンディングがいつも賛否両論、後味悪いことが多いですよね。
でもこの映画のラストは感動して涙が出ました。実は別のラストであって欲しい、と言う気持ちはあるんですが、後味は悪くない。最後の出演で、ちょっと趣向を変えたかな、とも思いました。
>彼の作品、エンディングがいつも賛否両論、後味悪いことが多いですよね。
>でもこの映画のラストは感動して涙が出ました。
★そうですね。これまでの映画のテーマは暗い感じがしていました。
ほんとうに、この映画の何がこれだけ皆の心を惹きつけるのか・・・
古き良き時代の名残に浸れる映画だから?
よくわかりませんが・・・(^.^)