自宅にいることの多い母はテレビを見ることが多くなった。
しかしテレビから聞こえる声は、母には早口らしく、聞きとれないことが多かった。
『みんな同じ顔に見える。』
『新しいタレントさんは、よく知らない、私が知っていたら、長くやっている人か超有名人。』
『若い人の笑いは、ついていけない』
母はテレビを見ては長女に嘆く事が多くなった。
そんな中、母が好んだのは映画、それも少し古めの映画であった。
洋画の【ヒマワリ】や邦画の【東京物語】は特に母のお気に入りだった。東京物語を見て、イマイチピンときていない長女に対し、
『この良さがわからないようでは、人生経験が足らない。修行不足だ』
と何故か機嫌が悪かった。
実は私もイマイチピンとこなかった。
私もまだまだのようだ。