梨屋アリエ『エリーゼさんをさがして』(講談社)は
久しぶりに読んだ、YA(ヤングアダルト)小説の新刊です。
初日、夢中になって、ほぼほぼ読了、
二日目、残りを読んだところ、複雑な気分になりまして・・・
う~ん・・・という感じ。
まずは、あらすじを。
中学二年生の亜実は、突然、母にピアノ教室をやめさせられる。
「ちっともうまくならない」から「環奈ちゃんの引き立て役」ばかりで
「時間とお金の無駄」にしかならないと・・・
同級生の環奈はコンクール入賞を狙うほどの実力者・・・
亜実は、とても及ばないけれど、環奈のピアノも好きだし、
何より、自分はピアノを弾くことが楽しいのに・・・
一人きりの帰り道、
坂の途中で、買い物帰りに休憩する、おばあさんと出会う。
やがて、ちょっとした、おしゃべりを交わすようになる。
大好きなベートーヴェンの「エリーゼのために」にちなみ、
ひそかに「エリーゼさん」と名付け、
坂道で、エリーゼさんと会うことを心待ちにする。
そんなとき、地域のディサービスで
ピアノの伴奏ボランティアの募集ポスターを見かけ・・・
・・・という、お話。
亜実は、絵が大好きな同級生の水野くんや、
ボランティア志願者の、はっちゃけた女子高生と出会い、
次第に、その世界を広げていきます。
ピアノも、ディサービスで弾く、お年寄りの好きな曲の楽譜を
図書館で探し、時にネットから耳コペしていくうちに
演歌や唱歌を、楽しみながら伴奏するようになりました。
一方で、両親に対しては、敬語でしか話せないほど・・・
顔色をうかがい、距離をとって接しています。
このあたりの心の動きが、それはそれは丁寧に描かれ、
かつての十代の頃と重ねながら、読み進められました。
・・・ところが・・・二日目に読んだ、最後の20頁ほどがねぇ・・・
見かけなくなった「エリーゼさん」を探し、
水野くんと地域の「ふれあいカフェ」を訪ねます。
そして、亜実は高齢者やその状況について考えていくのですが・・・
う~ん、介護保険制度やフレイルについて、何頁も語られてもね・・・
今、現実に高齢者を抱え、自分自身も老いを感じている状況にいて
諄々と説かれたところで鼻白むばかりで・・・(意地悪な見方ですがw)
このあたりが、わたしのYA小説を読む限界なのかもしれません・・・
YA小説は、十代読者を想定しているのですから、
アラカンおばちゃんが読めば、違和感を感じる部分があっても
当然でしょうか・・・寂しいけれど。
著者の梨屋氏は、1998年に講談社の児童文学新人賞を受賞、
受賞作を読んだことまでは覚えていますが、以後、ご無沙汰。
確か同世代でいらしたはず・・・
それだからなのか・・・
たとえば亜実のお母さんが、いつも苛々しているところなんて
わかるような気がするんですよね・・・
高齢者についても、ご自身の体験から、お書きになっているのでしょう。
きっと、年齢相応に、いろいろと抱えられたうえでの作家活動・・・
それを抱えてなお、長きにわたり、書き続けられていらっしゃったことに、
同世代として、敬意を表します。