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哲学エッセイ?~『生き物の死にざま』

2020-09-16 | 2022夏まで ~本~
賑やかな蝉時雨の中、我が家の庭にも蝉の死体が落ちていて・・・
時々、近寄ると、「セミ爆弾」よろしく、急に飛ぶので、
肝をつぶします。

それが最期の抵抗?なのか、結局、また転がって、命尽きる・・・
そんなセミの最期。

必ず、仰向けになっています。空を眺めながら死んだのか・・・
と思いきや、蝉の目(複眼)は身体の背中側についているので、
空は見えないのだそうです。

見ているのは地面、その地面こそが、寿命のほとんどを過ごした
「なつかしい場所」・・・



稲垣栄洋『生き物の死にざま』(草思社)は、
こんな風に、生き物が、どう死んでいくかが語られるエッセイです。

とりあげられるのは、プランクトンから昆虫、ハ虫類、哺乳類までいろいろ、
それで「生き物」と、くくられたのでしょう。

一見、「へええ」というような動物雑学エッセイみたいですが・・・

数年前、生き物の生態をわかりやすく描いた
シリーズ本が大人気を博したこともありました。
そういった本とは確実に一線を画しています。

それは、必ず、「死」について描かれているからです。
生き物の死にざまを読んだ後、
「じゃ人間は?オマエはどうだ?」と問いかけられているような・・・

だから、心がしんとしてしまう・・・


(著作多数の著者。以前、チラ読みした↑の本も、稲垣栄洋氏の著作でした)


文系人間のアタクシにとって、衝撃にも等しかったのは・・・

細胞の染色体に「テロメア」という部分があるのだとか。(初耳!)
「テロメア」は老化の原因とされており、
これさえなければ不老不死も可能とも言われているそうです。

それなのに「生物は、わざわざテロメアを進化させてきた」
つまり「『老いて死ぬこと』は、生物が望んでいることなのだ」と
書かれていました。

そんな、そんなぁ・・・
老化なんて望んでいませんけど?テロメア、勘弁してよ!

・・・と、アタクシ、声を大にして叫びたい。

けれど・・・それは、今ここに生きるアタクシの叫びであって、
生物の進化の中では、無ということです・・・
(そもそも100年後に、アタクシを覚えているヒトなんていないもんね)

生命は世代交代を進めるために、「老いて死ぬ」仕組みが作られ
わたしたち生き物は、テロメアという『時限爆弾』を抱いているわけです。

そんななかで、「老化」の仕組みを退化させた生物もいます。

それが「ハダカデバネズミ」・・・
この生き物は、理由は不明ながら、
病気にも強く、がんにもなりにくいのだとか・・・(羨ましい限り!)

では、彼らが死なないのかというと、そうではなく・・・
老化がないから老衰で死なないだけ。

老いなくても死ぬのです。

・・・深くありませんか?



うまくまとめられませんでしたが、全編、このようなエッセイなのです。
哲学的な文学エッセイのような生物の本でした。

・・・とはいえ、煩悩まみれのアラカン女のアタクシ。
心がしんとして、うんうんとうなずいても、加齢という名の老化に、
日々悩まされると、やっぱり心穏やかではいられませんのです。


・・・とにかく、昨夏の出版後、版を重ね、
今年の夏に、第二弾が出たのもうなずける本でした。


◆書影は、版元ドットコム使わせていただいております。

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