3月下旬、学生時代の友人に誘われ、新型コロナの影響で3年ぶりの開催となった東京モーターサイクルショーに(本当に久々に)出かけました。
展示されている車両は、いずれも発売が始まったばかりのニューモデル。排ガス規制が強化された影響もあって、デザインや機能などもブラン・ニューの花盛りで、スーパースポーツからレトロモダンにいたるまで、時代の移り変わりを大きく感じさせるものばかりでした。
まず驚かされたのは、(以前はなかった)展示車両のエンジン排気量の多彩さです。私の知る時代であれば、(国産オートバイと言えば)二輪免許の排気量カテゴリーごとに50㏄、125㏄、250㏄、400㏄、750㏄と、クラスがきれいに分かれていました。しかし現在では、150㏄だの350㏄だの、1300㏄だの1600㏄だのと、バイクの性能や性格に合わせ(とにかく)バラエティに富んだ印象です。
また、日本のメーカーのオートバイであっても、生産国はインドであったりタイであったりと様々で、それぞれの個性が放つ「多国籍」な印象は、それはそれで何とも不思議な感覚を覚えたのも事実です。
さて、オートバイ乗りといえば80年代のリターンライダーばかり。「もはや二輪市場に未来はない」などと言われて久しい昨今ですが、どっこい会場は若者のグループやカップルの姿も多く、平日だったにもかかわらず(それなりに)活気のある様子を呈していました。
何でも二輪車は、新型コロナ感染拡大の影響が出た2020年以降、蜜にならないレジャーや移動手段として注目されるようになり、現在でも販売台数は増加傾向にあると聞きます。日本のメーカーに限っても、出荷台数はコロナ前の2019年度が33万1207台だったのに対し、2021年度には37万8720台と5万台以上の増加となっているということです。
さらに、二輪車業界が好調である背景には、以前から市場を支える40代以上のベテランライダーに加え、10~20代の新規参入も増えたことが指摘されているようです。
運転免許の教習所でも2輪免許取得を希望する若い世代が急増しており、予約が取れない状況になっているという話も聞きます。そういえば私の職場でも、毎朝、お気に入りの二輪車に乗って(颯爽と)通勤してくる若いメンバーの姿が増えてきているような気がします。
そうした中で開かれた今回のモーターサイクルショーで驚かされたのが、排気量125ccの、いわゆる「原付二種」のラインナップの豊富さです。スクーターやスーパーカブばかりでなく、ダックスやモンキーなとのネオレトロ、スーパースポーツにオフロードと、ニューモデルがここぞとばかりに並んでいます。
聞けばこのクラスは販売台数も好調のようで、2021年度の原付二種の販売数は12万5674台。10年前の2011年度と比較しても3割以上の増加率だということです。また、この販売数はオートバイ販売数全体(37万8720台)の約33%を占めており、その比率は10年前からおよそ10ポイント程度増加しているとされています。
以前は、50ccの原付ほどお手軽ではなく、かといって高速道路にも乗れないという中途半端なポジションで、メーカーもさほど力を入れてこなかった125ccバイクが、どうしてこれほど注目されるようになったのか。
5月24日の東洋経済ONLINEに、自動車ライターの平塚直樹氏が「年齢性別問わず人気急上昇、原付二種が売れる訳」と題する一文を寄せていたので、参考までにその内容を紹介しておきたいと思います。
最近は街中で若い世代のライダーをよく見かけるようになった。そして、そうした若い世代が手軽に乗ることができ、またサラリーマンなどの中高年世代の普段の足としても人気が高まっているのが125㏄の原付二種のバイクたちだと氏はこのコラムに綴っています。
しかも価格が比較的リーズナブル。最近は、250ccのバイクでも90万円台のモデルがあったり、50ccのスクーターでも20万円前後とかなり価格が高騰する中で、原付二種は、ほとんどのモデルが30万円台から40万円台で手に入るということです。
原付二種では、50ccの原付一種のように2段階右折などの制約も少ない。一般道路では交通の流れをリードすることができる性能を持ち、そのうえ車検もなく維持費が極めて少なく済むことなどが、人気の要因となっていると氏は指摘しています。
一方、原付二種の魅力はこうした実用性ばかりではない。近年になって様々に特徴づけられたモデルが発売され、日常の足だけでなく、ツーリングなどレジャー用途に使うライダーも多いことが特徴だというのが氏の見解です。
高速道路こそ走行できないものの、一般道をのんびりと走り、郊外の景色を楽しんだり、後席のキャリア(荷台)に荷物を積載しキャンプなどのアウトドアに出かけたりなど、さまざまな用途で使えることが人気の秘密となっている。手軽で足つきも良いうえ、その気になれば遠出もできる。(遠い地平に目をやる)オートバイ乗りのロマンをくすぐってくれるのが、原付二種ということでしょう。
特に、最近国内で販売されている110ccや125ccといった排気量のバイクは、その多くが2輪車が大きなセールスを記録している東南アジアやインドなどに向けて開発されており、(いわゆる)「グローバルモデル」と位置づけられているものも多いと氏はしています。
このため、ほぼ日本だけの販売となる原付一種のスクーターなどと比べると、世界的に販売できることで大きな売上高も見込める。メーカーが国内でもラインナップを充実させやすい背景にはそうした理由にもあるということです。
環境や安全に対する様々な規制とともに、オートバイが高校生や大学生では手の届かない大変高価な乗り物になってしまったこの時代、アルバイトやサラリーマンのお小遣いで何とか買えるこのクラスは、今後ますます魅力的に磨かれていくことでしょう。
これまであまり縁のなかったこうした125ccクラスのオートバイが、人生の身近な楽しみ方のバリエーションを増やしてくれることを、私も大いに期待したいと考えているところです。
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