MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯16 金融のお勉強②「ヘッジファンド」

2013年06月16日 | 社会・経済

 世界中の特定のお大金持ちから資金を集めて、先物取引を含めた様々な方法により資金運用を行う金融商品やグループを、一般に「ヘッジファンド」と呼んでいます。

 ヘッジファンドの「ヘッジ」は「リスク・ヘッジ」の「ヘッジ」。英語で「押さえ」とか「保険」などという意味で、価格が下落しても大きく損をしないよう、リスクを減少するためにとられる行動を指します。そして、「ファンド」は基金の意味。そうしたリスク回避の機能を備える一種の投資信託を指す言葉です。

 一般的な投資信託は一口1万円から買えますが、多くのヘッジファンドは主に富裕層や機関投資家向けに作られた金融商品で、少なくとも数百万円以上の投資が必要とされるということです。証券会社で買える一般向けのヘッジファンドもあるようですが、ほとんどは非公開で特定の顧客にしか販売されていないということです。

 ヘッジファンドは日常的に非常に大きな資金を運用しており、顧客の利益を確保するため、株や国債、その他の各種債券、外国為替や穀物相場など様々な分野の金融市場において投資を行い、技術を駆使して利益の回収しています。 

 そんなヘッジファンドですが、そもそも裕層向けに作られた金融商品であるため、集められた運用資金が常識を超えて莫大だということが大きな特徴となります。さらに、その莫大な資金を元手にさらに借り入れ(レバレッジ(「てこ」の意))を行い、資金を大きくして時には何兆円というような商いをすることもあります。そうした大きな商いによって、その取引(「売り」や「買い」)によって市場の商品価格が上へ下へと大きく動揺する事態も、たびたび生じているようです。

 「空売り」という言葉がありますが、これは「先物取引」のところでも触れたように、実際にその株や証券や商品の現物を持っていないのに、市場に対して「売りかけ」を行うことを指しています。勿論、これは違法でも何でもなくて、先物取引における通常の取引手法の一つです。しかし、これがあまりに大規模に行われると市場が大きく混乱することがあります。

 よく耳にするヘッジファンドによる「売り浴びせ」というのは、ヘッジファンドがその資金力にものを言わせ、とても大きな規模でこの「空売り」をしかけることを指しています。

 こうした売り浴びせによりその商品の市場価格が大きく下落すると、売りが売りを呼んでさらに相場が下落するという事態が往々にして生じます。そこで、そのあとこれらを買い戻したヘッジファンドが大儲けするという状況が生まれるわけです。

 こうした暴騰・暴落などの大きな取引はニュースになりやすいわけで、このような取引を「投機的にすぎる」と批判する人も多いわけです。

 実際のところ、投資家による投資はそれだけで既に十分投機的なわけで、商品の円滑な供給や産業の育成、経済の活性化や人類の最大幸福を目的とした投資というのはあまり耳にしたことがありません。

 市場の心理を予測し決められたルールの中で行う投資行動に対するこのような批難は、どうにも的を射ているとは言い難いような気もします。むしろ、そういう市場の仕組みに実物市場の価格を委ねているという根本的な仕組みの方に、やはり目を向けるべきなのではないでしょうか。

 さて、ヘッジファンドは、莫大な資金を後ろ盾にして多様な金融商品市場に投資を行い、商品の価格が上がる際にも、また下がる際にも利益を狙うそんな存在です。しかし、そうは言っても投資は投資。リスクヘッジを旨としていても、市場における駆け引きにとどまらず、社会状況の変化は時として世界経済を襲い、レバレッジを効かせたヘッジファンドの取引に大きな影響を与えます。

 巨大なヘッジファンドが破綻すると、その影響が世界経済全体に及ぶこともあります。

 そもそも、一国の国家予算にも匹敵する金額を、一人の人間が投機的に運用するなどということに、どれだけ現実味があるというのでしょうか。また、運用している側にとっても、その資金の持つ「意味」のようなものがどれだけ理解されているのでしょうか。

 資金を運用する一握りの人間の思惑が、世界の経済に大きな影響を与える…。金融の世界はそうした危険性を常にはらんでいます。また、金融の世界というものが、一部の機関投資家達の「臆病な心理」と「脆弱な空気」のうえに成り立っているということを、私達は十分に心しておく必要があるということです。



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