MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯15 金融のお勉強 ①「先物取引」

2013年06月15日 | 社会・経済

 「先物取引」という言葉を、メディアで耳にする機会も多くなりました。

 しかしながら、「先物取引」をこれから先に実際に取引される価格(相場)を見込んで、「いつの時点でいくらで買う」という権利を売り買いする取引…と説明されても、実際にそうした「売り買い」をしていない身にはなかなか具体的なイメージがわきません。

 例えばあなたが金1kgを持っていて、半年後に誰かに500万円で売る契約をしたとします。(必要があれば、先に500万円受け取ってしまってもいいでしょう。)いずれにしても、それはこの時点で半年後の取引の価格を確定させてしまうということです。

 そして半年後、金の相場が600万円/kgに上がっていれば、この権利を500万円で買った人は、600万円するものを500万円で手に入れられた(売れば600万円になる)のですから、差引100万円儲けたことになります。(同時にあなたは、600万円で売れたものを500万円で売る約束をしてしまっていたのですから100万円の損失を被ったということです。)

 しかし、もしも半年後の金相場が400万円/kgに値下がりしていたとしたら、あなたは時価400万円の金を500万円で買ってもらえた(手元に金が無かったとしても400万円で金1kgを買って相手に渡せばいい)わけですから、100万円の利益を得たとこになります。

 これが、先物取引の「基本」ということになります。

 一方、相手方は、当然値上がりを見込んでこの契約をする(→権利を買う)わけですから、上がると見込めればどんどん買う。そして値段が下がるんじゃないかと見込んだ人は、今の内にとどんどん売りを出していく…こういうことになります。

 (ここから先が少しややこしいのですが、)実際に売る品物(ここでは金1kgですが)が例え手元になくても、決済する時点で確保できれば(最終的に市場価格で買えば)いいのですから、こうした取引では、誰でもここぞと見たらどんどん「売り(カラ売り)」の約束をしていくことができることになります。

 しかし、現実の社会では、契約した人がお金だけ持って逃げてしまったり、破産して約束を守ってくれなかったりするリスクもないわけではありません。また、最初から期限までに品物を用意する資金が無い無一文の人が、はったりで売りを出している可能性もあります。

 そこで、一定のルールと透明性の下にこうした取引を管理する「先物取引市場」という市場が造られることになりました。

 相対の取引ではなく金融商品としてこうした債権のやりとりを公開で管理するとともに、取引への参加者からは一定の証拠金を取って信用力を担保するなどの仕組みを整えたというわけです。

 こうした先物市場で取り扱われる商品には、例えば「穀物相場」と呼ばれて昔から有名な小豆や大豆(最近ではコメの先物取引が開始されるというこで話題になりましたがJA・全農の協力が得られす上手くいっていないようですね。)であったり、金、銀、プラチナなどの貴金属、石油であったり、天然ガスなどのエネルギー、株その他の債券類などがあるようです。つまり、(資源を中心に)ありとあらゆる物資が、現在では先物取引の対象となっているということです。

 しかし、このように聞いても、世界各地にたくさんの先物市場があって大変な資金が動かされおり、そこでの取引によって世界中の資源などの相場が決まっているという事実が、私のような一般人には何となくピンときません。

  先物取引には、現物の市場価格の急激な高騰や暴落といったリスクを、売り買いの思惑の中でヘッジ(相殺)する作用もあると言いますが、取引自体に現物の動きが伴うわけではありません。

 現物の生産や利用に全く関係のない人達が、相場の上下の思惑のみで売り買いを行っている。さらには、売買の権利が債券としてバラバラにされて国境を越えて取引されていたりするという話を見聞きするにつれ、世界中の人々の生活や命に直結する貴重な物資をそんなバーチャルな感覚で投機の対象にしていいんかいなと…真剣に悩んだりしてしまいます。

 情報技術の進展による取引の国際化や短期的な取引が一般化する中、行き場を失った(国家予算規模の)大量の資金が投資先を探して流れ込むなど、機関投資家の短期的な思惑で取引価格が大きく変動することも日常的に起こっているようです。

 こうした一部の先物市場の取引価格が、穀物やエネルギー、工業原材料などの世界全体の現物取引に大きな影響を与えているという実態が、なぜ放置されているのか。こんな不安定なものに世界の資源を任せてしまっていることに震えるほどの不安を感じるは、たぶん私だけではないと思うのですが…。



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