12・10・17
蜘蛛の糸その後―1―
芥川龍之介、蜘蛛の糸には後日談が伝わっています。
出典は不明ですが、もしかすると夏の修練会で
天風先生がお話しなさったのが天風会では
語り継がれているのかも知れません。
カンダタが蜘蛛の糸が切れて再び地獄へ落ちてから
三百年ほどたったある日の朝のことでございます。
今朝もお釈迦様は
蓮池のふちをお歩きになっていらっしゃいました。
ふと蓮池のほとりに佇まれて
蓮の間から底の方を覗き込まれたのです。
すると血の池地獄で蠢いているカンダタの姿があったのです。
でも、三百年前のカンダタと様子が違うことに
お釈迦様は気付かれました。
心なしか笑みを浮かべ
血の池地獄で這いずり回っている亡者に
時には手を差し伸べているのです。
不思議に思ったお釈迦様は
カンダタに尋ねてみようと思われました。
そして、カンダタに向かって銀色に光る蜘蛛の糸を
スルスルと投げ下ろされたのでございます。
カンダタは蜘蛛の糸を手繰り寄せたのですが・・・
「いや!待てよ!」
カンダタには閃くものがありました。
「この蜘蛛の糸はオレのものだ!下りろ!下りろ!」と
叫んだ途端に今まで、何でもなかった蜘蛛の糸が
手元から切れてしまったのです。
地獄から脱出する千載一遇のチャンスを
逃してしまったのです。