南城市佐敷新開の教会で!
石畳道
フル(豚小屋兼便所)
ヒンプン
母屋跡
行く時はだいたい地図を見てから行くが、なかなか着かない。
棚原旧宮里家(屋号:メーナーザトゥ{前宮里})は、平成22年度に屋敷跡地全体が町有地の歴史公園として供用開始されている。 屋敷跡地内には、沖縄の伝統的な屋敷の特徴的な建造物といえるフル(またはフール)やヒンプン、筋道から屋敷入口まで続く石畳や石段も状態よく残されている。 フルやヒンプンは、中国から伝来したといわれ、沖縄に伝わる信仰や俗信と結びついている。
フルとは、便所を兼ねた豚の飼育小屋であり、1坪から2坪を1区画にしたものが連なった石造建造物である。 夜遅く帰った際には、フルに立ち寄り、豚を起こして鳴かせてから部屋に入ると、外からついてきた悪い魔物が追い払われると信じられていた。 棚原では、フルにはフドゥーヌカミ(便所の神)が宿るとされ、ヤシチヌウガン(屋敷御願)や子どもがマブイ(魂)を落とし、その場所がわからない場合にも拝まれていた。 ヒンプンは、屋敷入口の内側に目隠塀として設置され、魔除けとしての役目も兼ねていたといわれる。 棚原では、遠い場所にあるムイヌサチ(森の先)に対するサンゲーシ(山がえし)として設けたとも伝わる。
同屋敷跡に残る母屋の石柱は2間ほどの距離で、当時かやぶきの別棟であった母屋と台所の間には、雨除けを兼ねた樋が通っていたという。 建物は戦災で破壊されたため戦後は居住者がおらず、屋敷建造物跡等がそのまま残された。
フルは、石積みの区画が2連あって、屋根は石の下端を疑似アーチ状に削って架構し、床は石敷きといった典型的な沖縄の石造技術が活かされている。 便所部分は目隠しのためかやぶきの屋根で覆われていた。脇には、フルから流れてくる汚水や生活排水等を溜める石造りのシーリが造られている。 ヒンプンは、大きな石を並べて造られており、フルと同じように石灰岩が使用されている。
棚原集落内道路から屋敷入口までつづく石畳および屋敷西側の石畳は、人頭大の石灰岩をまばらに敷き詰め、その間に拳大の小さな石が密に詰められている。 棚原には同様な造りの石畳道がみられたというが、現在ではほとんどが姿を消している。 フルは、衛生上の理由から昭和初期の県令における「養豚場取締規則」の改正によって、豚小屋と便所を併設することが禁じられた。 農村では近年まで当時のまま施設が残っていたが、現在、町内では数か所を残すのみとなっている。