苦しくなる低所得者層の生活(上)
直近様々な商品の値上げが発表されている。私たちが日常的に使用している商品の多くが雪崩を打つように値上げ発表されている。立て続けにこうした発表があると感覚的にマヒしてしまうが、全て合わせると、着実に家計を圧迫することになる。
値上げの要因は、原油高、円安、原料価格の高騰、輸送・運搬費用の増大など、商品をめぐるサプライチェーン全体に及んでいる。この動き自体は、強弱はあるものの、全世界的に共通の課題であり、欧米でもインフレが急速に進みつつある。
こうした動きは、2022年の国民全体の生活に確実に影響を及ぼすが、特に所得の低い層に大きな影響を及ぼすことが深刻に懸念される。この件について2回に分けて紹介をおこなう。
着実に上昇している価格
私たちの生活に密着した商品やサービスの費用が着実に上昇しつつある。2021年トータルで見たときには、前年とほとんど変わっていないが、昨年9月以降消費者物価指数の総合が前年を上回るようになっている。2021年12月時点の主な費目では、食料費が前年同月比2.1%、水光熱費が11.2%と上昇した。また細かい費目でいえばガソリンが22.4%と大幅アップである。家計全体の影響度合いで見ると、水光熱費の影響が最も大きく、次いで食料費となる。食料費は、アップ率が低くとも、元々の費用割合が大きいので、金額的な上昇額が大きくなる。
全体としては、エネルギーに関わる費用が大幅アップしており、生活を一番圧迫している。水光熱費やガソリン費用は、日常生活で必要に迫られ使用している費目なので、節約しにくい費用である。同様に食料費も、生活を維持する基本なので、外食を抑制するなど以外では節約が難しい費用であり、生活への影響は大きい。こうした節約しにくい費目の上昇は、ほとんどの人々の生活にダイレクトに影響を与えることになる。
低所得層に負担が大きい
この程、みずほリサーチ&テクノロジーが発表した推測によると、2022年の食料・エネルギー価格の上昇に伴う支出増を2022年の負担増とした金額を明らかにした。これによると年収500〜600万円世帯では、食料が2.9万円、エネルギーが2.4万円、合わせて約5.3万円の負担増が見込まれる。これら支出の収入に占める負担率は約22%であり、前年より1%アップとなる。年間5万円の負担増は痛いが、他の支出を削ってやりくりは可能であろう。
一方、年収1000万円以上の世帯では、食料4.0万円、エネルギー2.7万円、合わせて約6.8万円となり、500万円世帯よりも負担増は増加する。しかし、収入に占める負担率は11.5%であり、前年より0.5%アップとなる。つまり収入自体に占める食料・エネルギーの構成比が元々高くないので、負担額が多少大きくても、その影響度合いは小さいので、それほど気にしなくても済む構造になっている。
さて、年収300万円以下の低所得者層はどうであろう。食料2.2万円、エネルギー1.9万円、合わせて約4.2万円となり、500万円世帯よりは減少するものの、大きく減ることにはならない。そして収入に占める負担率は約40%で、前年より1.8%もアップしてしまう。この世帯における負担増は、生活にかなり大きな影響を与えてしまう。
元々食料費は、生活に必要不可欠であることから、低所得者層ほど、家計の消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が上がる構造にある。実はエネルギー費用も、同様の傾向となっており、所得が低いから「暖房しない」という選択肢は普通ない。普通に電気・ガス・水道などは使用するのである。
このように2022年予想される消費負担増は、低所得者層により重くのしかかることになることが予想される。このことは消費税の逆進性と同じで、所得が低いほど負担が重くなる構造で、負担増となる額の重みが全く異なるのである。
コロナ禍で既に深刻な状況におかれている
実は、低所得者層は、この2年間のコロナ禍で最も大きな影響を受けた層である。コロナ禍により収入源となった世帯がおおよそ25%程度いるともされるが、多くは非正規労働で低い収入水準にあった人たちである。元々収入の低い世帯にあっては、収入減少はダイレクトに日常生活に支障を来したのである。そこに2022年は、支出面で物価高による負担増が、さらにのしかかることになる。深刻な影響を及ぼすことが懸念される。
次回は、実際の低所得者層の生活実態に迫る。
2020年基準消費者物価指数 全国 2021年(令和3年)12月分及び2021年(令和3年)平均(総務省)
必需品の価格上昇で家計に逆進的な負担発生(みずほリサーチ&テクノロジー、2022年1月)