さくらの丘

福祉に強い FP(ファイナンシャルプランナー)がつづるノートです。

終の住処のこと

2022年04月22日 | 福祉

終の住処のこと

 人生残り少なくなると、どこで暮らして最後の時期を迎えるのかと言うことが大切になる。もちろん最後の最後は病院などでお別れになるであろうが、それまでの期間の住まいのことである。

施設に入る?

 歳取ったら、老人ホームに入れば良いと思う人もいるだろうが、事はそんなに簡単ではない。現在、特別養護老人ホームでは、要介護認定3以上でないと事実上入居できず、在宅で介護可能な間は、施設入所しにくい傾向にある。また、一般的には施設入所すると、生活・介護の費用として月に10万円以上必要になるケースが多い。生活保護など生活が苦しい場合は、軽減・免除される。平均的な入所期間は2年程度が多くなっている。それでお迎えが来る場合が多い。

 そうすると施設入所するまでの期間は、在宅で訪問介護を含めて介護支援を受けながら生活をしていく必要がある。

 そうした時に自宅をどうすれば良いのか。例えば65歳から平均年齢の80〜90歳弱まで、どういった住まい方が必要になるであろうか。

 

マイホームでは?

 住み慣れた一軒家のマイホームで過ごす場合は、どうだろう。日常的な買い物や通院に不便はないだろうか。自動車運転免許を返納した後はどうだろか。

 ちなみに筆者の母親は、免許返納後に電動アシストサイクルで買い物と通院をしている。自転車に乗れなくなったら、タクシーを使う様に勧めている。もちろん、ご近所で助けてくださる方がいると、とても心強い。

 

 自宅自体は、在宅で介護を受けられるようになっているだろうか。居住空間やトイレ、お風呂の介助はできるか、車椅子で外から家の中に入ることができるか。チェックポイントはそれなりにある。これはマンションの場合も、同様なので、事前によく確認しておく必要がある。

 自宅のバリアフリー化をすでしてある人も、もう一度確認することをお勧めする。健常者には問題ない小さな段差の存在である。足元が覚束なくなると、大きい段差よりも小さい段差につまずきやすくなる。室内転倒しにくいように配慮しよう。

 廊下のある自宅の場合、廊下の幅を確認しよう。特に廊下を曲がる構造の場合、要注意である。今の工法では、幅90cm以上が推奨されている。

 このようにいくつかのチェックポイントがあるので、それらを確認し、リフォームをしておくことも検討したい。

 

マンションに移住?

 この所、郊外の一軒家から街中のマンションに転居する高齢者も多い。駅前のマンションを購入する人の内、かなりの割合を占めるようになってきている。確かの生活上の利便性が高く、一軒家をリフォーム、または維持管理していく煩雑さを考慮すると考えうる選択肢である。ただし転居に当たり、それまでの自宅を処分して、新たに物件を購入するケースでは、新たに住宅ローンを背負うことになることは極力避けたい。

 また、住み慣れた場所を離れることになり、ご近所付き合いなどそれまでの人のつながりが切れてしまう懸念もある。マンションは、部屋ごとの独立性が高く、生活スタイルが異なると、お隣とは言え、お目にかかる機会が意外に少ない。地域でのつながりがないと、案外孤立している高齢者も多いと言われている。

 

賃貸住宅は?

 最後に賃貸物件に住んでいる場合である。特に高齢のお一人様に多いケースである。シニア対応の賃貸物件があるものの、物件数自体が少なく、入居条件が厳しくなってしまう。

 一般の賃貸物件でバリアフリー化してある物件は少なく、単身者向けはさらに少ない。この場合、エレベーターのあるフロアの部屋、もしくは1階など階段を極力使用しなくても済む部屋が好ましい。階段を登らなくては入れない部屋は先々苦労する。

 そこで、今住んでいるところ以外に転居を検討すると、これにも難題がある。同居家族が居る場合は良いが、お一人様、特に男性の独居は、部屋を貸してくれる大家は多くないのが実情である。これは室内での孤独死を恐れているからである。

 実際、孤立している高齢者が部屋で亡くなり、発見まで時間がかかってしまうと、ゴミ部屋だったりして、契約解除から最終的な部屋のクリーニングまでに相当の時間とお金を要することもある。女性の場合は、男性よりも人のつながりがあり、早い発見に至る場合が多い。

 

 終の住処住処は、人それぞれ。どのような住み方、暮らし方をしていくのか、ぼんやりとしたイメージではなく、具体的に考えておくことが必要だ。