あなたは何歳から年金を受け取りたいですか?
2022年4月より、公的年金の繰下げ受給を選べる年齢の上限が従来の70歳から75歳まで引き上げられた。繰り下げは、1か月単位で繰り下げることが可能で、月当たり0.7%増額になる。一方繰り上げ受給も従来から可能であり、最短60歳から年金を受け取ることが可能になっている。この繰り上げの場合の減額率は、2022年4月より、月当たり0.4%となった(1962年4月2日以前生まれの人は、0. 5%なので注意が必要)。仮に60歳から受給すると、元々65歳から受給する年金額が24%減少することになる。
MUFG資産形成研究所が実施した調査では、65歳から受給したいとする人が43%あまりと最も多く、次いで66歳以降への繰り下げの意向が約28%となっている。この間厚生労働省を始めとして、繰り下げ受給できることが繰り返しアピールされており、4人に1人以上が繰り下げ意思を持つようになっている。一方、60~64歳での繰り上げ受給についても約11%がその意思を持っているようだ。
これを年代別に見ていくとさらに違いが生じる。繰り上げ受給の意向は、20歳代が最も多く、年齢が上がるほど減少し、60歳代が最も少なくなっている。60歳代では、65歳からの受給開始意向が最も多く、全体の6割以上である。一方、繰り下げ意向は4人に一人であり、他年代と比べて決して高いわけではない。年金受給が間近になるほど現実的な考え方になり、繰り上げ意向が減少し、わからないという回答も減少していく。20歳代からすると年金受給まで相当な期間もあり、将来的な年金不安も大きく、なるべく早く受給したいとの考えに傾くのであろう。
実際の繰り上げ、繰り下げ状況はどうだろう
老齢厚生年金の場合、2020年時点で繰り上げ受給している人の割合は0.5%に留まるが、国民年金だけの場合は、28.2%に上る。これは国民年金の場合、自営や非正規、もしくは無職で受給している人が多く、早期に年金受給して生活安定を図る方策として繰り上げ受給を望む人が多いことを現している。
一方繰り下げ受給は、老齢厚生年金の場合1%とこれまた少ない水準に留まっている。65歳までの雇用延長している人の多くが仕事を辞めるパターンが主流の中では、繰り下げする余裕がどれだけあるのかが鍵になる。国民年金だけの場合も1.7%と割合としては少ない。こちらも繰り下げる余裕の有無が最大の鍵である。
繰り下げのデメリットもちゃんと考えて
繰り下げ受給はメリットばかりではない。デメリットになりうることもあるので、よく考えて選択したい。具体的には、老齢厚生年金を繰り下げ受給すると、繰り下げ期間中は加給年金が受給できなくなる。加給年金はいわば年金の「家族手当」のようなもので、厚生年金の被保険者が65歳到達時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者、18歳到達年度の末日までの子(または1級・2級の障害がある20歳未満の子)がいる場合に支給される制度である(他にも条件があるので、具体的には専門家に相談すること)。また、繰り下げ期間中に亡くなってしまうと繰り下げは適用されず、65歳からの年金支給分での支給になる。
さらに、当然支給期間が短くなるので、長生きすれば確かに月々の受給額が増えるが、早く亡くなってしまうとメリットにはなりにくい。相対的には、女性の寿命の方が長いので、繰り下げ効果が得られる可能性が高いとは言える。
自分のライフプランに合わせて適切な選択を
年金の繰り下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることもできる。また、繰り下げの手続きはいたって簡単で、65歳になる時に年金の請求手続きをしなければ良い。自動的に繰り下げ待機になり、65歳以降年金受給するために請求手続きをする時に、繰り下げ受給を選択すれば、その時までに増額された年金を受給できる(未支給分をまとめて受給もできるが増額にはならない、一部特例あり)。
急いで決める必要は無いので、繰り下げしても生活維持できる状態であることを前提にしつつ、年金受給タイミングまでに心づもりをしておこう。
※ MUFG資産形成研究所 「金融リテラシー1万人調査」
20~60歳代の企業勤務者8,500名のWeb調査
厚生労働省 令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況、2021年12月
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