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統計に見るシニア世帯の現況(下)

2022年12月02日 | ライフプラン

統計に見るシニア世帯の現況(下)

 

 前回に引き続き国民生活基礎調査の結果から見るシニア世帯の現況である。今回は世帯の所得からの傾向となる。調査時点の前年(2020年)の所得を聞いており、コロナ影響初年度の状況を反映している。

 全世帯の2020年平均所得金額は約564万円となっているが、中央値は440万円であり、実際には平均所得以下の割合が約61%となっており、100〜400万円未満のウエイトが高くなっている。平均所得は、1000万円を超える約13%の人が全体を大きく引き上げており、2000万円以上の所得のある人が2%以上もいる。

 

年金をおぎない働くことに

 この内高齢者世帯(前回同様、世帯の全員が65歳以上、18歳以下の人を含む)の所得は約333万円となり、公的年金・恩給が約207万円と62%を占めている。一方稼働所得(働いて得る所得)も約72万円と21%を占める様になっている。つまり年金が収入の中核となりつつも、働くなどで収入増を図ることが増えてきていることを現している。

 このことは2008年結果と比べると、「年金・恩給」約210万→約207万円、「稼働所得」約53万→約72万円、「財産所得」約18万→約23万円となり、年金はむしろ目減りしつつ、それを補うように働いたり、財産による所得を得ることにより補う構造になっていることに現れている。

 実際、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のなかで「公的年金・恩給の総所得に占める 割合が100%の世帯」は約25%(2008年は約64%)となっており、1/4に過ぎない。雇用されて働く所得は、平均約59万円となっており、何らか働くことで所得を得る人が増えているのは事実である。公的年金が増えない時代にあって、自己防衛もあり、65歳以降も働く人が増えているのにはこうした背景もある。

 

やはり生活は苦しい

 こうしたことを背景とした生活意識は、全世帯で「大変苦しい」「やや苦しい」とする世帯が約54%を占めている。特に、児童のいる世帯では約60%と切実である。しかし高齢者世帯で見ると、約52%と全世帯平均を下回っている。これをもって高齢者全体に余裕があると見るのは早計である。実際には、高齢者間での格差が大きいことは様々なところで指摘もされており、特にストック(資産・財産)の少ない層も多く、実際の生活上の苦しさは、子育て世帯と同様、もしくはそれ以上となっている。

 直近の商品価格の値上がりは、特に低所得者層への影響が大きくなっており、高齢者世帯でも収入の低い世帯への影響は甚大である。水光熱費や食費は半ば固定費的に払う必要があり、他の支出を削って補える範囲が小さいので影響は甚大だ。

 



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