不動産投資はどうなのか (下)
それでは不動産投資はダメなのか?
結論から言えば、依然として不動産投資は有望な投資方法である。ただし、ほとんどの場合は、楽して多くの利益を得るという考え方自体ないと考えた方が良い。
現金かローンか
不動産を投資用に購入して運用する場合、自己資金のみで購入する方法と、金融機関からの借入をおこない、ローンを返済しながらおこなう方法に大別される。自己資金のみで購入することを一般的に「現金購入」というが、財力があれば最も収益が上がる方策である。例えば、都心部のタワーマンションを現金購入して、賃貸物件として貸し出すと、仮に利回りは低くとも、一定金額の収入が見込める。一定の期間保有して、物件価格が下がらない時点で売却すれば、確実に利益確定できることになり、実際にこうした投資を行っている投資家も存在する。ただし、元手の財力に余裕がないとこうした方策は取れない。
現金購入が難しい場合は、銀行など金融機関の不動産投資ローンを活用して、資金調達して購入をおこなうことになる。数年前まではフルローンと言って、事実上頭金ゼロ円で全額ローンを組むこともあり得たが、「かぼちゃの馬車事件」以降、頭金最低でも10%以上は要求されるようになっている。世の中、不景気色が強くなってきており、今後金融機関によってはさらに頭金を用意する様に要求されることも大いに考えられる。また、当然だが自分で居住しない限り住宅ローンは使用できない(一時これを勧める不正案件があり問題になった)。
問題はローンの借入可能額や金利であるが、これは購入しようとする物件や本人の属性などによって、金融機関が判断するので一律には出すことができない。一般的に大きな会社のサラリーマンとして継続的に勤務していれば、あまり問題にはならない。個人事業主など自営業の方は、苦労しがちである(金融機関による)。
注意点は所々あるが、納得できる頭金と利率でローンを組むことができれば、比較的少ない自己資金で運用をおこなうことができることになる。不動産投資においてもレバレッジ効果を最大限活用した投資スタイルは成立しうるし、こうして成功している不動産投資家も多く存在する(ただし多くは専業の不動産投資家である)。
不動産収入と収益
不動産収入は、言わずもがな家賃収入であり、基本的には毎月収入がある。不動産物件に書いてある「利回り」は、年間家賃収入の購入金額に対する割合であり、正確には「表面利回り」である。
一方不動産収益とは、家賃収入から経費を差し引いて残った金額を指す。経費とは、集合住宅であれば管理費・修繕積立金、管理を業者に委託するのであれば管理委託費が必要になる。戸建てや1棟物件であれば毎年一定の修繕金額を経費に折り込むことになる。こうした日常的な経費と固定資産税の租税や火災保険などの保険料等を家賃収入から差し引いたものが、実質家賃となり、これをベースに利回り計算したものが、「実質(又は、純)利回り」である(購入時の経費は、経理処理も絡むので今回省く)。
そして、家賃収入から経費を差し引いた不動産収益からローンを組んだ返済額を引いたものが最終利益となる。これが最初からマイナスだとまったく利益が出ない物件となってしまう。また最終的に1〜2%程度の利益だと実際に手元に残る金額も小さくなり、そもそも不動産で投資する意味が大きく薄れてしまう。
例えば、首都圏のワンルームマンションで表面利回り5%以下の物件では、実質利回りが2%台までに低下してしまう物件も数多く存在する。こうした物件にローンを組んで投資する意味があるのかを真剣に考える必要がある(例外はある)。
出口を常に考える
不動産投資をおこなう際に常に念頭に置く必要があることは、購入した物件を売却することである。売却可能であることが最低条件であり、これができないと単なるお荷物になってしまうので、絶対に避けなければならない。また所有物件の実勢売価が購入時より大幅に下落することも避けなければならない。そのことが予見される場合は早期に売却をすることになる。一般に旧耐震の物件は避ける様に勧めている向きもあるが、実際にはケースバイケースである。
この間の不動産価格上昇期では、購入価格よりも高い金額で売却する事例もあり、最終的な利回りはこれにより跳ね上がることにつながった。しかしそろそろ天井とも言われており、今後も不動産価格が上昇し続けるとは考えられない。
出口をしっかり考えて物件購入することが大切であるし、だからこそ購入時の価格妥当性も問われることになる。また物件自体の状態も大きく関わる。物件の立地や災害ハザードから、集合住宅であれば管理の状態が問われる。
直近マンションなどの集合住宅の管理状態が鋭く問われる様になってきている。きちんとした保守・修繕がおこなわれているのか、長期修繕計画が整備されているのか等、物件そのものの維持管理がきちんとおこなわれていない物件はリスクが高いと言わざるを得ず、今後大きく価値を損なうことも考え得る。
最近目にするワンルームマンションでは、管理がおざなりになっており、修繕がまともに出来ていない物件も度々見受けられる。
まず勉強すべし
ここまで書いてきたことは不動産投資の基本項目であり、これ以外にも知っておくべき事柄は多く存在する。世の中には、不動産投資の手ほどき書籍も数多く存在し、それらを用いてまず勉強することが何を置いても必要だ。
株式投資で多少間違いにより、損失が出ても被害額自体は小さく済むことも多いが、不動産の場合元手の出費や投資額が大きくなり、損失額は大きくなりがちである。良く知らないけど、投資してみた的な感覚では、実際に損失を生むことになりかねないので、まずはしっかり勉強することが肝要である。ずぶの素人だと不動産会社にも舐めてかかられることも実際にあるので要注意だ。
また、不動産に「目玉商品」はないとも言われる(例外はある)。明らかに安い物件には、何らかの理由が必ず存在する。そうしたことも勉強する内に分かる様になるであろう。
何時、何を買うか
正直言うと今この時期は、不動産投資に乗り出すには良いタイミングとは言えない。理由は、物件価格が高くなりすぎている。このため、利回りの高く、物件価値が高いものが数少ないのである。特に急ぐ必要がないのであれば、今急いで購入を考えない方が良さそうである。
それでは何を購入するのが良いであろう。利回り10%以上を目指すべきという事も一般的には言われたりもする。しかし実際にそのような物件に出会える機会はなかなか無いのが事実である。
何だと言われてしまうが、目指すのであれば「一棟物件」から購入することをお薦めする。なぜかというと自分で経営することによって「勉強」するからである。不動産で学ぶべき事は実は多岐に渡る。これらを実践する中で学んでいくことができる。
集合住宅の区分所有(部屋単位のこと)は、実質利回りと、立地や諸条件をよくよく検討した上でないと、投資規模に見合う収益を得にくいのが事実である。集合住宅で投資をおこなうのであれば、個人的にはファミリー向け物件がお奨めである。ワンルーム物件は、単身者向けとなり、契約更新を2回おこなう(一般的に4年ということ)割合がかなり少なくなる。その分不動産で問題となる空室リスクが高まってしまうが、一般的にファミリー物件は、それ以上の居住期間となる可能性が高いので、空室リスクを低減できる傾向がある。
一旦空室になった際の入居対策には一定の費用も見込まれ、空室期間が収益に直接結びつくことでもあり、極力短い期間で入居者を迎える必要がある。
結局は
一棟物件は、実はそれなりに手がかかる(自主管理の場合)。管理を委託すれば手軽になるが、その分収益も減ることになる。この点、サラリーマン大家には辛い点となる。日々の問い合わせなどに丁寧に答えて、対策を直ちに講ずることが求められる。集合住宅の区分所有は比較的手軽だが利回りが下がる傾向になってしまう。区分を購入するぐらいなら、REITに投資した方がましという意見もあり、それなりに納得できる面もある。
ただし今後不動産投資に本格的に取り組むのであれば、一棟物件であれ、区分所有物件であれ、まずやってみることが始まりにはなる。不動産は息の長い、長期投資である。少なくとも5年から20年付き合っていく投資スタイルをスタートさせることもなり、こうした形態に臨む意欲があれば、よく勉強しつつ、専門家の意見などを聞きながら一歩足を踏み出すのも良いことだと思う。
(筆者の経験と反省と踏まえて)