さくらの丘

福祉に強い FP(ファイナンシャルプランナー)がつづるノートです。

シニアお一人様の家計実態

2022年08月26日 | ライフプラン

シニアお一人様の家計実態

 

 生涯未婚率が徐々に上昇してきている。これにより年齢の高い層でのお一人様が一貫して増加しつつある。今後、65歳以上のお一人様も増えていくことが想像される。こうした人たちの家計実態はどのようなものであろうか。家計調査の2021年実績から迫っていくことにする。

前提条件として

 前提条件としていくつかパターンを想定する必要がある。家計調査で65歳以上区分の平均年齢は76.7歳となっており、多くの人が職業に付いていない。また、持ち家率が平均で75%を越えており、女性の方が有意に持ち家率の高いことが実態である。この違いは、住居費に大きな違いとして現れる。おひとり様で民間住居を賃貸している人の住居費は5万円程度であるが、持ち家(それも多くは一軒家)の人のそれは、1.2万円程度で大きな違いとして現れる。つまり、おひとり様は、元からお一人様の人と、死別・離別等でお一人様になった人の2パターンの存在を示しており、この家計調査結果では後者のパターンが大勢を示していると考えられる。

 また、統計上は男女別の人数以外の数値が出ていないので確認できないが、死別した女性のお一人様の場合、住民税非課税になっている割合が高く(遺族年金は非課税)、直接税の平均が年間7.2万円余りと低めに出ていることも考慮すべきである。また、住民税非課税であると介護保険料も半額以下に抑えられ、後期高齢者医療保険料も減額されるので、年間社会保険料も抑えられる。このため平均年間約7.4万円は低く抑えられている金額である。この年代の女性は専業主婦や非正規労働者として就業していた人が多く、年金受給額が少ないことによる影響である。

今後正規労働者として就業していた男性・女性が65歳を迎える段階での年金受給額と非消費支出とは異なるので、注意が必要だ。

家計の収支は

 さて、65歳以上の単身無職世帯の実収入は、13.5万円(年間162万円)となり、既に勤めによる収入はなく、年金収入がほとんどである(一部自営業で収入を得ている人もいる)。また仕送りを受け取っている人も存在する。

 これに対して、非消費支出(税金・社会保険料)は、月1.2万円(年間14.7万円)は低く抑えられている。ちなみに夫婦のみの無職世帯は年間36.8万円であり高くなっている。

 これにより、可処分所得は12.3万円となる。一方、消費支出は13.2万円であり、収支は9400円(年間11.2万円)の赤字である。大幅赤字ではないので、ある程度の金融資産があれば、計画的に取り取り崩していくことで問題なく生活を送れるという判断もあり得る。

 

 消費支出の主な項目は、次の通り。

  食費   3.6万円  外食含む。夫婦二人では、6.5万円
             人数が減っても半分にはならない

  住居費  1.3万円  持ち家の割合が高いため

  水光熱費 1.2万円  夫婦二人では、1.9万円 
             人数が減っても半分にはならない

  交通通信 1.2万円  ガソリン代やバス電車代、そして電話・携帯代金

  保険医療 0.8万円  通院(1割負担が大半)と介護(一般的なサービス)
             ならこの程度

  交際費  1.5万円  

  諸雑費  1.3万円

 現在の自身の支出額と照らして見てみると、特別高かったり、低かったりしないのではないだろうか。年齢なりに質素でありつつも堅実な生活を送っていることがうかがわれる。

住宅と介護の費用

 住居費は、先に述べたように持ち家でない場合やマンション住まいの場合は、これより多い金額を考える必要がある。

 一般的に不安要素として挙げられる介護費用は、介護認定の度合いにもよるが、一般的な在宅・施設介護サービスを受ける範囲であれば、それほど多額の費用は必要としない。介護保険の上限までサービス提供受けたとしても、介護度5で月額3.6万円(1割負担)を越えるサービス利用するケースはまれだ。要介護4~5で特別養護老人ホームに入所すると、全部で月額12~15万円程度必要になるが、その分食費が不要になるなど実際的に必要になる金額は変わってくる。また一般的な入所期間は概ね2年程度であるので、必要な金額もある程度計算できる。仮に4~5年になっても、打つ手は様々にあるので、あまり心配してもしょうがない。

おわりに

 お一人様の場合、不安要素も多いと思われるが、こうした実例をもとに、自分なりのシミュレーションを立てておくと、無駄な心配をしなくて済むであろう。世の中、不安を煽るような言説もあり、冷静に考えることが大切だ。特に不安に乗じてサービス(民間の「介護保険」など)の契約をするのは、冷静に考え、専門家に相談したりして判断していくようにしよう。

 

<参考資料>

家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)、総務省、2022年8月

 

 

 

 


日本人のヘルスリテラシーを上げていくために

2022年08月20日 | 福祉

日本人のヘルスリテラシーを上げていくために

 

  私たちの周りには様々な「健康」に関わる情報があふれている。コロナ禍の中でも、免疫力を高めるなどの「情報」により、いくつかの食品の売れ行きが急増したりした。日本人トータルとして、「健康」に関わる関心は高いのは事実だ。

しかし、ヘルスリテラシーの観点では、日本人は諸外国と比較して低い水準に留まっている。そのことが何をもたらしているのであろうか。

 

 ヘルスリテラシーの定義は様々な説があるが、以下が典型的な定義である。

  健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力であり、それによって、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの。(中山和弘、2021)

 

 この定義で大切な点が2つある。

 1つは、健康についての情報を手に入れるだけではなく、それを自分で理解・活用できる知識や意欲・能力を持つ必要があることである。情報自体は溢れるほど身の回りにあるが、自分で考えたり、調べたりする気持ちや実行力が必要である。

 2つめは、そのことを踏まえて、健康維持・向上に向けて自分で判断して、実行していくことを生涯続けていくことである。特に生涯かけて自らの生活の質の維持・向上を目指すことがとても大事になる。例えば介護も人任せではなく、自分自身で決めることである。

 

 さて、このヘルスリテラシーは、ヨーロッパでは個人の能力及び日常生活の様々な場面の困難さを測定する調査手法が開発されており、これに基づき各国での調査がおこなわれている(中山和弘、2022)。調査の結果は50点満点の平均点で現され、最も数値が高かったのはオランダ(37.1点)、次いでアイルランド(35.2点)、ドイツ(34.5点)と続く。アジアでも台湾(34.4点)、マレーシア(32.9点)など高得点の国もある。一方、日本は25.3点で、調査がおこなわれた国の中でダントツに低い点数となっている。日本のヘルスリテラシーは、明らかに低いのである。

 代表的な質問で見ると、「気になる病気の症状に関する情報を見つけるのは」『難しい』とする割合は、日本46.1%に対してオランダ7.5%と大きな開きが生じている。また、「メディア(テレビ、インターネット、その他のメディア)から得た病気に関する情報が信頼できるかどうかを判断するのは」『難しい』とする割合は、日本73.2%に対してオランダ47.4%である。他の設問でも『難しい』の割合は、日本が総じて有意に高い回答となっていることが特徴である。病気を含む健康関連の情報が沢山あるものの、適切に相談したり、自分で判断することが苦手な日本人の姿が浮かび上がってくる。

 

 日本のヘルスリテラシーが低い傾向となる要因として、日本のプライマリ・ケアの整備が不十分であることが挙げられている。プライマリ・ケアは、「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」(日本プライマリ・ケア連合学会)とされるが、日本ではまだ一般的ではない。ヨーロッパでは医師の約3分の1が家庭医であると言われるが、日本は残念ながら病院中心の医療体制となっており、すぐに大きな病院を受診することになってしまうケースが多い。身近でもっと相談できる仕組みがないのが実情である。

 また、医師と患者の関係でも、「医療を施す」という言葉にある様に、患者は常に受け身になってしまうことが挙げられる。このことが、患者自らが自分の健康状態を考えて、主体的に関わる関係を阻害していると考えられる。

 こうしたことが、一人ひとりが自らの健康状態を考えて、情報を集めて、判断していくことを阻害していると思われる。

 

 国の進める地域包括ケアでは、医療と介護の連携を地域レベルで構築して進めていくことが計画されている。既に一部の地域で医療・介護の連携が良い形で進んでいる事例も生まれているが、全体からするとまだ一部に留まっている。

 今後は、この医療・介護連携を進めるに当たっては、これらサービスを受ける人たちに寄り添って丁寧な相談を通して、本人の希望や意思を反映して進めることが求められる。そのためにも、ヘルスリテラシー向上に向けた地域の取り組みも重要なキーとなる。子どもからシニア世代まで共通する課題として、ヘルスリテラシーの向上を進めていきたい。

 

(参考資料)

ヘルスリテラシーとは、中山和弘・田口良子、2021年

日本人のヘルスリテラシーは低い、中山和弘、2022年

 

 


個人寄付は定着するのか

2022年08月12日 | お金

個人寄付は定着するのか

 

 日本では寄付は定着しないと永らく言われてきた。しかし現在進行中のウクライナにおける戦争を巡っては、非常に多くの人が義援金などの寄付をおこなっていることが明らかになっている。寄付は、今後人々の生活に定着していくのだろうか。

 

 日本赤十字社がこのほど、『ウクライナ人道危機と支援に関する調査(2022年)』とする調査を実施した。この2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、日本赤十字社は緊急支援に取り組んでおり、この活動について全国1200人対象に調査をおこなったものである。

 この結果によると、個人として何らかのウクライナ現地やウクライナ避難民に関する支援をした人は40.3%にのぼる。そして寄付や募金をした人は31.1%にもなる。

 ウクライナへの軍事侵攻を巡っては、連日マスコミ報道のメインとして取り上げられ、市民を巻き込む戦争の悲惨な事実が次々に明らかになるなど、一般的な関心もかなり高くなっていた。これに対して、個人として何らかの支援をしたいと考える人々が多くなったことが考えられるが、約4割の人々が実際に募金などのアクションをおこなったということは、とても大きな意味を持つ。これには、日常的な様々な場所で手軽に募金などの寄付をおこなえる場所が増えたことも背景にはある。

 

 寄付白書2021(日本ファンドレイジング協会)によると、2020年の個人寄付総額は、1兆2126億円となっている。もっとも、この中には6725億円のふるさと納税が含まれている。ふるさと納税も寄付の一形態である。これを除くと約5400億円となる。いずれにしてもここ数年寄付額は増え続けており、2020年は過去最高の寄付額だった。

東日本大震災のあった2011年は、震災寄付が約5000億円あり、その他個人寄付を合わせて1兆182億円であった。ちなみに、ふるさと納税は2008年より始まっており、2011年時点では約650億円の寄付額で、今よりは大分少ない金額であった。

 こうしてみると個人寄付総額の増加は、ふるさと納税の寄付総額の伸長による部分が大きく、2018年にはふるさと納税だけで5000億円に達している。また、大きな災害や戦争の有無によって、寄付金額が左右されることも事実である。その意味で、2022年はウクライナ問題での寄付が大きく増えることにつながってくるのであろう。

 しかし、そうした要因を除いても個人による寄付額は増加傾向にあり、様々な寄付のあり方が広がっている。個人的には税制的優遇措置の拡大を含めて、寄付の文化をより豊かにしていく方向を目指すべきだと考える。