さくらの丘

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進むキャッシュレス決済、一方で不安も

2022年10月29日 | お金

進むキャッシュレス決済、一方で不安も

 

コロナ禍で進んだキャッシュレス決済

 経済産業省はこの6月に、2021年のキャッシュレス決済比率を発表した。これによると2021年のキャッシュレス決済比率は、32.5%となった。経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目指し、キャッシュレス決済の推進に取り組んでいるということだ。

 2010年以降キャッシュレス決済の割合は徐々上昇してきているが、コロナ禍の2020年以降、年率3%程度上昇しており、コロナ禍の影響により非現金での決済に勢いがついたのも事実であろう。内訳は、クレジットカードが約27.7%で増加かつ最大、次いで電子マネーが2%でやや減少、3番手がQRなどによるコード決済で1.8%と急増、デビットカードは約0.9%で微増となっている。クレジットカードは既に使用経験のある人も多く、最も手軽に使用されている。一方スマホを介した「〇〇ペイ」といったQRコード決済が大きく増加した。海外でウエイトの高いデビットカード決済は、日本では振るわない。

 

キャッシュレス決済の現状

 キャッシュレス決済をよく利用しているとする人の割合は、2019年の約54%から、2021年には約64%と10ポイントも上昇している。内訳としては、クレジットカード決済がやや減少傾向となる一方で、コード決済が急増している。これはスマホのお財布化の進行を示すもので、クレジットや電子マネーのようなカード提示ではなく、スマホを介した決済が日常化してきていることを示している。実際コンビニのレジ付近で観察していると、スマホで決済している人が多いことに驚く。スマホさえ手元にあれば、買い物できてしまう社会が実際に目前にある形だ。

 コード決済の業種別導入状況を見ると、飲食業・小売業・観光業での導入比率が高く、60%を越えている。確かに、これらの業態でQR決済可能との表示が多く掲示されており、観光地でも良く見かけるのは事実だ。公共施設でも対応可能なところが既に40%を越えてきている。消費者の購入単価は、1000~3000円未満が最も多く、次いで5000~1万円未満、3000~5000円未満となっており、1000円未満は4番目である。少額決済に留まらず、様々な機会で1万円程度までの決済がおこなわれている事実がある。

 

キャッシュレスを活用している人は

 ここからは、この1年間にオンラインショッピング又はオンライン個人間売買(オークション、フリマ等)での購入をしたことがあると回答した人を対象とする調査となる。

 この対象者では、オンラインを含む買い物などでの支払いをするときに、キャッシュレス決済を利用していないのは僅か2.2%である。相対的に20歳代の割合が低いが、支払い能力の低い学生が含まれていることに依ると考えられえる。最も活用しているのは、40歳代であり、次いで50歳代となる。また、60歳代でも良く活用されている。2019年と比較したキャッシュレス決済を利用する頻度を見ると、「以前は現金での支払いだけだったが、キャッシュレス決済を利用するようになった」とする人が約17%存在し、キャッシュレス化の機運もあるが、コロナ禍の影響もあったとみるべきであろう。

 この1年間のオンラインショッピングでの支払い方法は、全世代でクレジットカード決済が大勢を占める(75%以上)が、次いで多いのはコード決済であり、20~50歳代では50%程度の利用になっている。60歳代のみ30%台で、シニアにはあまり人気がない。これ以外の決済方法は、キャリア決済、プリベイトカード、デビットカード、銀行振り込みなどとなるが、この間増加しているのは「後払い決済」である。全体に20歳代を中心に若い世代の活用が多い傾向になっている。

 

後払い決済とは

 「後払い決済」は、商品が手元に届いた後に、送られてきた請求書、電子メール等で送られる請求通知、アプリに表示される請求画面等を利用して、定められた支払期限内に代金を支払うことで決済が行われるサービスである。当月の購入代金を翌月にまとめて支払う後払い決済サービスも提供されている。現在国内では、これをおこなうサービスが次々に登場しており、コード決済と組み合わせたサービスも登場している。

 後払い決済の利点として、現在利用している人は、「クレジットカードを持っていなくても購入できる」「クレジットカード番号を入力せずに購入できる」「注文時に購入金額を用意できなくても支払い期限内に用意できれば購入できる」「キャンペーン等の優遇が得られる」を挙げている。つまり使用する敷居が低いのである。クレジットカードがなくても、今支払できなくても、繰り延べして購入することができてしまう。

 現在利用している人の約46%、約半数は、後払い決済利用時に不便・不安なことが「特にない」としており、便利に使えるものと捉えられている。しかし一方、「支払が遅れたときの手数料や延滞料等」「複数の後払い決済サービスを利用することによる使いすぎ」「コンビニ等で支払うことが不便」といったことも挙げられている。

 

具体的な事例では

 ここで1例として、「PayPayあと払い」を取り上げて、どのような仕組みになっているのかを紹介する。なお、「PayPayあと払い」に問題があって取り上げるのではなく、あくまで1例として紹介するのであって、実際には各社の後払い制度の仕組みによって、多少なりとも異なっていることに注意してほしい。

 PayPayは、一般的にはPayPay残高にチャージをおこない、QRコードを用いてそこからの引き落としで決済をおこなう。「PayPayあと払い」は、PayPay残高へチャージをすることなく支払いができ、支払った代金はPayPayカードのご利用料金と一緒に口座から引き落としされる仕組みである。PayPayカードと一体に使用できることになる。

 支払限度額は、本人認証なしの場合1日5千円、月5千円だが、PayPayカードで本人認証すると最大1日50万円、月200万円となり、この限度内で個人個人が設定できる。月末までで締められ、翌月27日に他のクレジットカード使用料と一緒に払う。年会費は無料。翌月27日の一回払いの場合、手数料も無料となっている。

 しかし、この27日に支払いができないと年率14.6%の遅延損害金が発生する。一度に支払うことができない場合、「リボ払い」を選択できるとされている。

ここでリボルビング払いを使用してしまうと大変なことになってしまう。

 

さいごに

 キャッシュレス決済は、便利な仕組みであることは間違いない。特に若い世代を中心としてスマホをお財布化して、コード決済を手軽に使用できるようになっている。手元の現金が動かないことから、「お金を使った」感が乏しく、チャージ残高などを気にせず使用できてしまうと、ついつい買い物回数が増えてしまい、思わぬ支払いを請求されてしまうことがある。

 キャッシュレスの進行は、同時に本人のお金の管理能力を問われることである。

 

☆ 2021年のキャッシュレス決済比率を算出しました、経済産業省、2022年6月

  [参考・2月(確報)]店頭購入及びキャッシュレス決済に関する意識調査結
   果」、消費者庁、2022年3月

 キャッシュレス決済実態調査、経済産業省、2021年6月

 キャッシュレス決済の動向整理、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2022年9月

 PayPayあと払いとは https://paypay.ne.jp/help/c0206/

 

 


定年後の仕事の意味

2022年10月21日 | ライフプラン

定年後の仕事の意味

 

アンコールキャリア? 

「アンコールキャリア」という言葉をご存じだろうか。この間日本でもあちこちで使われる機会が増えてきているようだ。言葉の定義はいくつかあり、必ずしも定まっていないが、「アンコール」とは、コンサートであれば演奏が終わった後に、再びステージに登場することである。つまり、アンコールキャリアは、日本で言えば、定年まで働き続けているステージが終わり、その後の働き方を指すことになる。

 元々は、2008年に社会起業家のマーク・フリードマン氏が著書で使い始めた言葉である。事例としては、元マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏が、マイクロソフトの後に引退せずに、ビル・ゲイツ財団のフルタイム勤務を始めたことが挙げられたりしている。ここから、定年後にそれまでとは違う新たな仕事に就くことを指して、アンコールキャリアとされる場面もあるが、必ずしも新しい仕事には限定されない。違いは、働くことの意味など、まさに働き方である。

 以前はセカンドキャリアと言われることが多かったが、セカンドキャリアが、それまでの仕事からキャリアを積み上げて、次の仕事に活かしていくことを指し、キャリアそのものが中心になることから、アンコールキャリアとは少しニュアンスが異なる。

 

働くシニアの実像

 日本の高齢就業者数は、この間増加し続け2021年は909万人になっている。15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は13.5%と過去最高である。高齢者の就労率は、年代別にみると60~64歳では71.5%と既に4人に3人が仕事に就いている。65~69歳でも50.3%と遂に半数以上が仕事をしている。ちなみに70歳以上でも18.1%で増加中となっており、団塊の世代で現在も仕事をしている人はいる。この世代は、女性の就労率が元々低かったが、女性の就労率も一貫して上昇しており、60~64歳で60%と既に半数以上が仕事に就いている。

 こうした高齢就労者の半数以上は雇用者(約58%)であり、さらにその75%は非正規の職員・従業員である。この非正規の職員・従業員の就業の理由別割合は、男性は「自分の都合のよい時間に働きたいから」(30%)が最も高く、次いで「専門的な技能等をいかせるから」(18%)、「家計の補助・学費等を得たいから」(16%)などとなっている。女性では、「自分の都合のよい時間に働きたいから」(38%)が最も高く、次いで「家計の補助・学費等を得たいから」(21%)、「専門的な技能等をいかせるから」(8%)などとなっている。つまり男女ともに収入を得ることよりも、自分の都合で働くことに重きを置いている。

 

仕事のやりがい

 ニッセイ基礎研究所が、57 歳~61歳の公務員(元公務員)と正社員(元正社員)を対象に行った調査の結果によると、「定年前の人の間でも、定年後の人の間でも、定年後に働き続ける最も大きな理由は、『老後資金が十分でないから』であった。ただし、「定年を迎えた人の方が、定年を迎えていない人よりも、老後資金のみを理由として挙げている人の割合は小さく、定年を迎えた人が実際に定年後に働く理由としては、老後資金の充足に、やりがい等の理由が加わっている人の割合が大きい傾向が見られた」としている。

つまり、定年後働く動機として、「お金」は重要な要素であるが、「仕事内容が好きだから/仕事を通して社会に貢献したいから/人と関わりを持つため」といった仕事そのものを楽しむ姿勢や、やりがいを軸とする働き方への意向が強くなっている、ということである。

 

 このことは、Indeedがおこなった調査でも同様の傾向になっている。「収入よりもやりがいや社会貢献を重視した仕事をした方が良い」という質問に対して、「そう思う・どちらかというとそう思う」の合計は、60歳代で約57%、70歳代では約68%と大半を占めている。

定年前まで役割や責務として仕事を続けてきた人々の多くが、定年後の働き方として自らの生き方を改めて考えて、実践していこうとする意識が大きくなっている。まさにアンコールキャリアである。

 

さいごに

 このようにアンコールキャリアとして、これまでと同じでない舞台で仕事を続けようとする人たちが既に多くなっている中、これに対応する仕事が社会的に提供されているだろうか。リスキリングも良いことだと思うが、アンコールキャリアとして相応しい仕事のあり方を社会的に考えていくことが必要だ。特に65歳以降、70歳代でも仕事に就く意欲が増加しており、それに見合う仕事の機会が今は特定の職種などに限定されており、これをもっと数多くの職種で提供していくことが求められている。

 

★ 統計からみた我が国の高齢者、総務省、2022年9月

  定年後の働き方―定年前の予定とのギャップ、岩﨑敬子、ニッセイ基礎研究所、
   2022年10月

  「シニア世代の就業」に関する意識調査、Indeed、2022年10月

 

 


シニアに定着しているスマホライフ

2022年10月08日 | ライフプラン

シニアに定着しているスマホライフ

 

 このコロナ禍でシニア世代のインターネット活用が広がり、ネットショッピングも身近なものになってきた。同様にスマホの活用も着実に進んできている。

 筆者が、先日携帯電話のキャリアショップで順番待ちしている時にお話しした女性もその一人である。70歳代後半のその女性は、スマホを取り出してLINEで孫とも情報交換しており、インターネットで調べ物もできると喜んでいた。シニアでもごく普通に使えるツールとして定着しつつあることを改めて感じた。

 

スマホとシニアの関係

 スマホが日本で発売されたのは2008年のiPhone登場である。この時還暦を迎えたシニアは、現在74歳となり、それまではガラケー全盛の時代であった。キャリアメールやカメラは当時より使用されていたが、スマホアプリのような使い方の広がりはなかった。一方、現在65歳のシニアは、50代前半にはスマホに接する機会を何らか得ている可能性が強く、10年近くの年齢の違いで、スマホ自体の受け止めが大分異なるのである。

 つまり60歳代シニアにとっては、スマホは身近な存在であり、生活にある程度溶け込むように使用できる存在であるが、70歳代シニアにとっては若者の使うもの的なイメージやインターネットへの親和性も相対的に低い存在となるが、知れば便利に使える存在であろう。そして80歳代以上のシニアでは、スマホでの文字入力も難しいことになってくる(個人差はもちろんある)。

 ちなみに現在の20歳(Z世代)は、小学生からスマホと共に生育してきており、もはやスマホは自分と一体化した存在(デジタルネイティブ)である。

 

 

 スマホは生活に必要な存在

 電通が発表した「シニアのスマホライフ実態調査」(2022年7月実施)を元にシニアのスマホ利用実態を紹介しよう。ただしこの調査は、60歳代と70歳代男女合計1000人にインターネットで実施された調査なので、元々インターネット親和性の高い人が回答している割合が多くなる、というバイアスが発生するものの、全体的な傾向はみることができる。

 スマホが生活に必要だと思っている人(「絶対に必要だと思う」「必要だと思う」の合計)は85%であり、シニア世代に既に定着し、生活に密着していることが伺われる。全体に男性よりも女性の割合が高く、特に60歳代女性では90%に達する。「スマホを持って生活が良くなった」と回答した人は約65%であり、ここでも女性の評価が高い。

 女性は、「家族や孫との会話が増えた」、「人とのつながりが増えた」といった項目が男性よりも有意に高く、コミュニケーションツールとして積極的に活用されていることが分かる。また、「わからないことをすぐに調べられるようになった」、「暇な時間を楽しむことができるようになった」といった項目では、男性よりも明らかに高く、総じてスマホを使いこなしているのは主に女性たちである。

 

様々な使い方が広がってきている

 週1回以上利用している用途のベスト3は、メール、LINE、通話である。LINEは男性よりも女性、通話は女性よりも男性が多く使用している。続く10位までは、ニュース、天気予報、ネット検索、ショートメール、写真・動画撮影、地図・ナビ、ポイントアプリ・サービスの利用となる。実生活に役立つ情報が求められており、それらが実際に使用されていることが浮かび上がってくる。

 以下、動画視聴、乗換案内、ネットショッピング、SNS(LINE以外)、金融サービス、健康管理などと続き、実際に様々な用途で使用されていることが浮かび上がってくる。健康や体調を管理するサービスも20%の人に活用されており、シニアらしい使いかたでもある。一方、非シニア世代との使い方の違いとしては、ゲームやフリマ・オークションの利用や音楽配信サービスの利用が少ないことである。

 またスマホでのキャッシュレス決済の利用経験は、全体で74%となっており、コロナ禍もあり、大分シニアでも進んできている様子が伺える。

 

 さいごに

 電通によると、「スマホによって生活がとても良くなった」と回答した女性は、女性全体と比べてスマホ機能の利用が多岐にわたっている、としている。スマホを使ってやりたいと思ったことが実現できると、その成功体験がさらなる活用へと導いていくのであろう。そうして自分が使えるツールとしてスマホが定着していくのである。

 自分一人ではできないと思っていたことができるようになること。これまでもインターネットを通して多くのことが、一人でもできるようになってきた。シニア世代もそれらを使いこなして、自分の生活に取り込んでいくことができるようになる社会が目指される。それを実現させることもDXである。

 

☆ 「シニアのスマホライフ実態調査」(株式会社電通、2022年9月)