進むキャッシュレス決済、一方で不安も
コロナ禍で進んだキャッシュレス決済
経済産業省はこの6月に、2021年のキャッシュレス決済比率を発表した。これによると2021年のキャッシュレス決済比率は、32.5%となった。経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目指し、キャッシュレス決済の推進に取り組んでいるということだ。
2010年以降キャッシュレス決済の割合は徐々上昇してきているが、コロナ禍の2020年以降、年率3%程度上昇しており、コロナ禍の影響により非現金での決済に勢いがついたのも事実であろう。内訳は、クレジットカードが約27.7%で増加かつ最大、次いで電子マネーが2%でやや減少、3番手がQRなどによるコード決済で1.8%と急増、デビットカードは約0.9%で微増となっている。クレジットカードは既に使用経験のある人も多く、最も手軽に使用されている。一方スマホを介した「〇〇ペイ」といったQRコード決済が大きく増加した。海外でウエイトの高いデビットカード決済は、日本では振るわない。
キャッシュレス決済の現状
キャッシュレス決済をよく利用しているとする人の割合は、2019年の約54%から、2021年には約64%と10ポイントも上昇している。内訳としては、クレジットカード決済がやや減少傾向となる一方で、コード決済が急増している。これはスマホのお財布化の進行を示すもので、クレジットや電子マネーのようなカード提示ではなく、スマホを介した決済が日常化してきていることを示している。実際コンビニのレジ付近で観察していると、スマホで決済している人が多いことに驚く。スマホさえ手元にあれば、買い物できてしまう社会が実際に目前にある形だ。
コード決済の業種別導入状況を見ると、飲食業・小売業・観光業での導入比率が高く、60%を越えている。確かに、これらの業態でQR決済可能との表示が多く掲示されており、観光地でも良く見かけるのは事実だ。公共施設でも対応可能なところが既に40%を越えてきている。消費者の購入単価は、1000~3000円未満が最も多く、次いで5000~1万円未満、3000~5000円未満となっており、1000円未満は4番目である。少額決済に留まらず、様々な機会で1万円程度までの決済がおこなわれている事実がある。
キャッシュレスを活用している人は
ここからは、この1年間にオンラインショッピング又はオンライン個人間売買(オークション、フリマ等)での購入をしたことがあると回答した人を対象とする調査となる。
この対象者では、オンラインを含む買い物などでの支払いをするときに、キャッシュレス決済を利用していないのは僅か2.2%である。相対的に20歳代の割合が低いが、支払い能力の低い学生が含まれていることに依ると考えられえる。最も活用しているのは、40歳代であり、次いで50歳代となる。また、60歳代でも良く活用されている。2019年と比較したキャッシュレス決済を利用する頻度を見ると、「以前は現金での支払いだけだったが、キャッシュレス決済を利用するようになった」とする人が約17%存在し、キャッシュレス化の機運もあるが、コロナ禍の影響もあったとみるべきであろう。
この1年間のオンラインショッピングでの支払い方法は、全世代でクレジットカード決済が大勢を占める(75%以上)が、次いで多いのはコード決済であり、20~50歳代では50%程度の利用になっている。60歳代のみ30%台で、シニアにはあまり人気がない。これ以外の決済方法は、キャリア決済、プリベイトカード、デビットカード、銀行振り込みなどとなるが、この間増加しているのは「後払い決済」である。全体に20歳代を中心に若い世代の活用が多い傾向になっている。
後払い決済とは
「後払い決済」は、商品が手元に届いた後に、送られてきた請求書、電子メール等で送られる請求通知、アプリに表示される請求画面等を利用して、定められた支払期限内に代金を支払うことで決済が行われるサービスである。当月の購入代金を翌月にまとめて支払う後払い決済サービスも提供されている。現在国内では、これをおこなうサービスが次々に登場しており、コード決済と組み合わせたサービスも登場している。
後払い決済の利点として、現在利用している人は、「クレジットカードを持っていなくても購入できる」「クレジットカード番号を入力せずに購入できる」「注文時に購入金額を用意できなくても支払い期限内に用意できれば購入できる」「キャンペーン等の優遇が得られる」を挙げている。つまり使用する敷居が低いのである。クレジットカードがなくても、今支払できなくても、繰り延べして購入することができてしまう。
現在利用している人の約46%、約半数は、後払い決済利用時に不便・不安なことが「特にない」としており、便利に使えるものと捉えられている。しかし一方、「支払が遅れたときの手数料や延滞料等」「複数の後払い決済サービスを利用することによる使いすぎ」「コンビニ等で支払うことが不便」といったことも挙げられている。
具体的な事例では
ここで1例として、「PayPayあと払い」を取り上げて、どのような仕組みになっているのかを紹介する。なお、「PayPayあと払い」に問題があって取り上げるのではなく、あくまで1例として紹介するのであって、実際には各社の後払い制度の仕組みによって、多少なりとも異なっていることに注意してほしい。
PayPayは、一般的にはPayPay残高にチャージをおこない、QRコードを用いてそこからの引き落としで決済をおこなう。「PayPayあと払い」は、PayPay残高へチャージをすることなく支払いができ、支払った代金はPayPayカードのご利用料金と一緒に口座から引き落としされる仕組みである。PayPayカードと一体に使用できることになる。
支払限度額は、本人認証なしの場合1日5千円、月5千円だが、PayPayカードで本人認証すると最大1日50万円、月200万円となり、この限度内で個人個人が設定できる。月末までで締められ、翌月27日に他のクレジットカード使用料と一緒に払う。年会費は無料。翌月27日の一回払いの場合、手数料も無料となっている。
しかし、この27日に支払いができないと年率14.6%の遅延損害金が発生する。一度に支払うことができない場合、「リボ払い」を選択できるとされている。
ここでリボルビング払いを使用してしまうと大変なことになってしまう。
さいごに
キャッシュレス決済は、便利な仕組みであることは間違いない。特に若い世代を中心としてスマホをお財布化して、コード決済を手軽に使用できるようになっている。手元の現金が動かないことから、「お金を使った」感が乏しく、チャージ残高などを気にせず使用できてしまうと、ついつい買い物回数が増えてしまい、思わぬ支払いを請求されてしまうことがある。
キャッシュレスの進行は、同時に本人のお金の管理能力を問われることである。
☆ 2021年のキャッシュレス決済比率を算出しました、経済産業省、2022年6月
[参考・2月(確報)]店頭購入及びキャッシュレス決済に関する意識調査結
果」、消費者庁、2022年3月
キャッシュレス決済実態調査、経済産業省、2021年6月
キャッシュレス決済の動向整理、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2022年9月
PayPayあと払いとは https://paypay.ne.jp/help/c0206/