不動産投資はどうなのか (上)
不動産投資が一種のブームになっている様だ。巷に不動産投資セミナーが溢れており、一種の副業として不動産投資デビューする人もいるように聞く。
最初に結論を言うと、不動産投資自体は、「投資」として見た場合有望な策の一つであることは間違いない。しかし、中途半端に手を出すものではなく、しっかり勉強した上で臨まないと、思わぬ大きな損失を生み出すことになりかねない。特に現在は住宅価格が高騰しており、期待する様な利回りが確保しにくい状況にある。
過熱している不動産
今不動産関係は、オフィス需要が奮わない中で、住宅関連が過熱している。1月の首都圏の新築マンションの平均価格は6157万円で、1㎡当りの単価は94.7万円となっており、ほぼ100万円になろうとしている。
東京都区内ではさらに高くなり、例えば、スカイコートプライム大井町(大井町駅徒歩11分)で最も小さいタイプ21.2㎡の販売価格は、2870万円(1㎡当り130万円)である。これより販売価格が高い物件はいくらでもある。
一方、中古物件も引き続き価格上昇傾向が続いている。昨年12月の首都圏中古マンション価格は4498万円(70㎡換算価格、1㎡当り64.2万円)で8ヶ月連続して上昇している。東京の都心6区に限って言えば、9411万円(1㎡当り134.4万円)であり、一昔前の都心新築価格以上である。
こうした状況の中、不動産投資物件の価格も明らかに上昇してきており、手頃で利回りの比較的確保できる物件が市場に出回らなくなってきている。投資家の中では、「買いたいと思う物件がとても少ない」といった声や、「条件の良い物件は一瞬で蒸発してしまう(売れてしまうこと)」という声もあちこちで聞く。
不動産投資は上手くいくのか
「サラリーマン大家」と言って会社員として働きつつ、不動産投資に乗り出す人も多い。こうした人が最初におこなう物件として、ワンルームマンション投資がある。これを勧める事業者は数多く、無料セミナーなどで盛んに勧誘をおこなっている。
こうした事業者の中には、区分マンションの販売手法として、「損益通算によるサラリーマンの所得税還付」をアピールしている事例もある。そのイメージなのか「不動産投資をすると節税になる」という誤った情報も流布されている。こうした事例では、収支自体が最初から「損する」構造なので、何の得にもならない。その上、特に新築物件の場合は最初から物件価格が下がり、続けるほど損失が大きくなる危険を持っている。中古物件の場合も、販売価格自体が周囲の物件よりも明らかに高い価格になっていることがある。不動産投資では絶対におこなってはならないことである。
こうした中、「投資用マンション・不動産投資の失敗談」に関する調査が発表された。これによると、投資用ワンルームマンション(単身用)を購入したきっかけは次の通りである。Webで自ら検索するなどして、問い合わせしてセミナー等に参加することが契機となったり、営業電話を受けたりしたことが契機となっている人が半数以上である。
「自ら興味があり問い合わせた」(30.8%)
「職場に訪問や営業電話(不動産会社からの営業)」(26.0%)
「友人・知人の紹介」(22.1%)
「自宅に訪問や電話(不動産会社からの営業)」(20.9%)
そして購入に際して受けた営業トークの内容は、下記の通り。いずれも不動産投資で労せず得られない事柄であり、非現実的な内容と言わざるを得ない。
「少額の資金で始められる」(48.8%)
「長期的に安定した不労所得が得られる」(47.0%)
「節税効果が期待できる」(43.6%)
管理費や修繕積立金、税金など、購入後の将来的な費用についての説明は受けたかという問いに対しては、「かなり詳しく説明を受けた」と回答したのは25.1%と、4人に1人留まる結果となっている。費用面についてきちんと説明せず契約に至ったとすれば、重要事項説明違反の懸念もある。
そうして、「投資のリスクを理解したうえで購入したか」という質問に「完璧に理解していた」と回答した人は21.7%で、多くの人がしっかりと理解をせずに購入に至っていることが明らかになっている。
こうして不動産投資を開始するわけだが、実際に運用する中で、当初思い描いていた事との大きなギャップに直面することになる。「実際に不動産運用を始めてみて、購入前の想定とのギャップを感じましたか?」との質問に対しては、下記の通り、感じた人が6割を超えており、全く感じていない人は7%に留まる。
「かなり感じた(26.3%)」
「少し感じた(38.5%)」
「あまり感じていない(28.3%)」
「全く感じていない(6.9%)」
具体的には、月々利益がほとんど出ない。もしくは、ローン完済するまで利益が望めない。税負担を考慮していなかった。管理費の値上げがあり、一層利益がでなくなった、等の声が出されている。
損失が出るケースは
具体的に損失が出ている原因として、次の様なことが挙げられている。これらは、当初から不動産投資のリスクとして織り込むべき事もあり、いわば「勉強不足」であることも否めない。事業者の営業トークを丸呑みしてしまうと、こういうことが起きてしまう懸念がある。
「空室状態で収入がない(なかった 時期がある)(39.3%)」
「修繕費やリフォーム費で支出が多かった(37. 2%)」
「家賃が下落してしまった(34.0%)」
「管理費・修繕積立金が値上がりした(31.7%)」
こうなると損失をいかに小さくするかが課題となり、収益回復を目指すことになるが、取り得る方策の幅が限定されてしまう。最後は物件の売却となるが、実際に売却できる金額と購入価格との乖離により、売却を決意できないことも発生する。ここは損失を続けるのか、損失を見切るのかの重大局面であるが、持ち続けて物件価格自体が上昇するケースはかなり限定されると思われる。やはり出血をいかに抑えるかという方策が採られる場合が多くなりそうだ。
このようにサラリーマン大家の不動産投資の多くは、区分所有のマンションを、ローンという借金をしながら収益を追求する仕組みが多く、実際の投資利回りは低くならざるを得ない。その割には、投資金額自体が大きくなるので、損失を抱えると損失額が大きくなってしまう傾向は否めない。
それでは不動産投資はダメなのか?
結論から言えば、依然として不動産投資は有望な投資方法である。ただし、ほとんどの場合は、楽して多くの利益を得るという考え方自体ないと考えた方が良い。
それではどうするのか。次へ続く。
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