さくらの丘

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価格上昇が続く物価と生活への影響

2022年05月28日 | ライフプラン

価格上昇が続く物価と生活への影響

 

値上げの夏

 様々な商品価格の上昇が続いている。食品に例を挙げれば、世界的な食料品・食品原料の値上がりに加え、原油価格の高騰に伴う物流費や各種原材料費の値上がり、円安に伴う輸入原料の高騰が続いており、これまで価格改訂に慎重であった企業らが、相次いで値上げの実施に踏み切っている。値上げの仕方は、単純な価格引き上げから、内容量の見直しをおこなうなど、各社ともぎりぎりの選択をしてきている。早めに値上げを実施した企業では、価格改訂の当初見通しを上回るコストアップにより、再度の値上げを実施せざるを得ない商品も、今後顕在化する見通しである。

 帝国データバンクの発表によると、5月19日時点、食品主要105社で2022年に入り4,770品が値上げ実施済みで、今後6月以降さらに3,615品の値上げが予定されているとして、「値上げの夏」と表現している。

 

消費者意識は

 この間の円安・物価上昇について「お金に関する意識調査」の調査結果(5月実施)が発表されている。この調査によると、「最近の円安・物価上昇について、自身の生活で実感しているか」との設問に対して、「実感している」、「やや実感している」を合わせて73%と多くの人が感じている。特に50歳代では90%弱と大半の人が実感している。また、「最近の円安・物価上昇を受けて、生活に変化はあったか」との問いには、「苦しくなった」、「やや苦しくなった」を合わせて50%を越える人が苦しさを答えている、ここでも40~50歳代で強く苦しさを感じている。

 そして、「最近の円安・物価上昇を受けて【出費を減らしたいもの】」との問いに対しては、回答割合の多い順に、水光熱費、食費、交通費・ガソリン代、通信費となっている。まさに一番価格上昇しているものを削減したいとの気持ちの現れであろう。

 この調査はあくまで意識調査であり、この間のマスコミ報道などによって消費者の意識に、「値上げ」「生活圧迫」といった言葉が浸透することによって、こうした結果に結びついたとも考えられ、実際の生活実感がどれほど反映されているのかは厳密に捉えられない。しかし、消費者の気持ちの傾向として読み取ることはできる。

 こうした意識の浸透は、実際に購買力の有無に関わらず、消費を抑制する方向に動くので、この春まで多少財布の紐が緩む雰囲気を吹き払っていくことにつながりそうだ。

 

影響が大きいエネルギー関連と食費

 このように値上げの波は、私たちの生活全般に及んでいるが、その影響度合いで見ると、エネルギー関連(電気・ガス代とガソリンなどの燃料代)の影響が最も大きく、次いで食費関連となっていく。これらの商品の値上げの波は、実は夏までに山をこえることにはならない見込みだ。つまり「値上げの秋」もほぼ確定的である。

 エネルギー関連の値上がり傾向は、昨年末からずっと続いており、このまま原油価格と為替水準が変わらない限り、少なくとも9月までは上昇し続ける見込みである。電気代については、燃料費調整という仕組みがあり、これに上限設定がある場合、概ね9月頃が上限に達する見込みであり、それ以降は値上げが抑制されることになる。ガス代についても原料費調整のある契約においては、同じく9月ごろに上限に達する可能性がある。各自の契約内容を今のうちに確認しておこう。

 

値上げで変わる消費のあり方

 こうした値上げの波は、複数の研究機関の試算により今年トータルで見た場合、一般的な家庭で2~3万円のアップになるとされている。そしてアップ分の多くは、エネルギー関連費用と食費となる。これらの費用は、実際的には節約が最も難しいものである。従って、上記節約したい項目は、現実的には節約しにくいので、他の消費費目での削減を余儀なくされる。この点、最も節約しやすい費目は、いわゆる旅行・レジャー費用になってしまう。そうすると新型コロナで痛めつけられてきた周辺業界に差してきた薄日は、再び曇り空に変わっていくことが懸念される。

 特に食費は、可処分所得に占める割合がエンゲル係数と呼ばれ、所得が少ないほどその割合が高くなる傾向となり、低所得者層ほど値上げの影響を大きく蒙ることになる。これらの層は、新型コロナ禍の影響を大きく受けた人たちでもあり、コロナ禍の山を越えつつある中で、今度は値上げによるダメージを受けることになってしまう懸念が浮かび上がる。

 

※ 帝国データバンク 食品主要105社価格改訂動向調査(5月)

 ビッグローブ(株) 「お金に関する意識調査」、2022年5月