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【中国サイバー事情】ハッカー阻止に究極の技術「量子通信」導入へ 世界初の量子実験衛星の打ち上げ成功に欧米科学者も腰を抜かした…

2016-09-01 00:43:40 | 日記

 2016.8.30 10:00

【中国サイバー事情】ハッカー阻止に究極の技術「量子通信」導入へ 世界初の量子実験衛星の打ち上げ成功に欧米科学者も腰を抜かした…

8月16日、中国・甘粛省の酒泉衛星発射センターで打ち上げられる、量子科学実験衛星「墨子」を載せた運搬ロケット「長征2号丁」(新華社通信=AP)

 中国が世界初の量子科学実験衛星「墨子」の打ち上げを16日に成功させ、通信技術の専門家から「スパイ防止の技術開発で中国が飛躍する」(米メディア)と警戒の声があがっている。衛星はハッカーによる機密取得を阻止できる量子通信の実験を行う。国の威信をかけ巨費を投じたプロジェクトにより、中国はサイバー時代の先端テクノロジーで先頭に立つのか-。

 衛星は16日未明、甘粛省の酒泉衛星発射センターからロケット「長征2号丁」を使って打ち上げられた。 「宇宙での量子実験に新たな道を開く」。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は、プロジェクトを統括する中国科学技術大学の潘建偉教授の声を伝え、実験が成功すれば、中国は世界がしのぎを削る新技術の最前線に躍り出ることになると伝えた。

 量子通信は、量子力学の知見を基礎に、盗聴や暗号解読が困難な安全性の高い通信が可能になるとされ、欧米各国などが基礎研究を進めている。仮に通信傍受を試みたり、通信内容を書き換えようとすると、通信内容自体が“崩壊”する。理論的にハッキングはまず不可能とされることから、軍事機関も高い関心を寄せている。

 量子通信の技術開発は欧州や米国、日本などが取り組み、地上での通信実験はすでに行われている。ただ「墨子」のように、宇宙と地上間の通信を介した実験は初めてとなる。

 衛星打ち上げに成功した中国の取り組みについて、ジュネーブ大学のニコラス・ギシン教授は、米紙ウォールストリート・ジャーナルに対し、「中国は量子衛星レースに勝利する公算が極めて高い」と話した。同教授はその背景として、中国が国家プロジェクトとして大規模に開発に乗り出している点に言及している。

 もっとも実験のアイデアは元来、ウィーン大学のアントン・ツァイリンガー教授が提唱したものだったという。英BBC放送(電子版)によると、ツァイリンガー氏が2001年、欧州が共同で宇宙開発を進める「欧州宇宙機関」(本部・フランス)に計画を持ちかけたが、実現しなかった。

 墨子による実験の中心人物である潘教授の博士論文の指導教官は、ほかならぬツァイリンガー氏だった。教え子が先生のなしえなかった実験を継いだ格好になる。ツァイリンガー氏は現在、潘氏の計画に協力しているという。

 潘教授は15日の中国国営テレビで、「われわれは世界中の研究室で技術をすべて吸収し、(中国に)持ち帰った」(ウォールストリート・ジャーナル)と語っている。中国の科学者が、各国が脈々と進めてきた量子通信の開発成果を取り込み、巨大な国家資本をバックに、一気に実験の実現に持ち込もうとする側面が垣間見える。

 「通信を根本から変革する技術の夜明けを告げるプロジェクトだ」。米誌フォーチュン(電子版)は衛星実験をそう紹介し、サイバー攻撃をシャットアウトできる通信技術の開発競争が幕を開けたとした。

 ただ、実験には多くのハードルがあるというのが専門家の共通した見方だ。そのひとつが、秒速数キロという高速で軌道を周回する衛星と地上との間で、量子通信を成功させるのが簡単ではない点だ。

 これまでの実験で量子通信の最長距離は、光ファイバーを使った約100キロだった。潘教授自身、打ち上げ前の科学誌ネイチャーのインタビューで、太陽光をはじめさまざまな干渉要因がある環境下で、衛星と地上の間で量子通信を実現するのが「挑戦」だとしている。また、ある実験関係者は、量子通信の「光子」を衛星と地上でやりとりする難しさについて、「上空100キロから、回転している貯金箱の投入口に、コインを正確に投入するようなものだ」と語っている。

 衛星を起点にした量子通信は、欧州やシンガポールなどの研究チームも研究を進め、着々と知見を重ねている。巨額の投資が可能な中国が、実験を成功させられるのかどうか、競争相手となる海外の研究機関は注意深く見守っている。将来的にどの程度の投資をつぎ込むのか、瀬踏みする判断材料にもなるとみられる。(塩原永久)

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