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写真・図版えみるさんが通っていた通学路に立つ風見しんごさん＝昨年１２月１５日午後、東京都世田谷区、杉本康弘撮影

写真・図版風見しんごさんの長女えみるさん（風見さん提供）

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■小さないのち　道に潜む危険

　タレントの風見しんごさん（５４）は、小学５年生だった長女えみるさん（当時１０歳）を登校中の交通事故で失った。

　「あれから１０年。ようやく、えみるに報告できる環境ができつつあります」

　東京都世田谷区の風見さん宅に近い住宅地。朝の通学時間帯、スクールゾーンに指定されている路地の入り口には進入を防ぐ車止めが置かれる。見守りに立つ保護者の前を、子どもたちが元気に歩いていた。

　えみるさんの事故を機に保護者や教員らが毎朝、路地に立つようになった。小学校のＰＴＡ副会長、小熊奈央さん（４２）は「活動を通じて路地に入る車は確実に減っている」と話す。

　事故があったのは２００７年１月１７日の朝。えみるさんが赤いランドセルを背負い、家を出たほんの数分後だった。青信号で横断歩道を渡っていて、交差点の向こう側から右折してきたトラックにひかれた。

　トラックが通ってきた路地はスクールゾーンだった。住民など許可を得た車のほかは通学時間帯は通行禁止だが、「抜け道」として使われていたという。

　ログイン前の続き風見さんは「えみるが最期に見た光景はどんなだったのだろう」と今も考える。「車が通るはずのない道。当たり前のことが、なぜできなかったのか」

　世田谷区は都内有数の住宅密集地。区道の半分はガードレールを設置する幅もない。通学中の事故が相次ぎ、３年前には下校中に路側帯を歩いていた小３の女児３人が軽トラックにはねられ、１人が亡くなった。

　スクールゾーンに車が入り込むのは珍しくないが、車止めを置く人手がなく、区立６３小学校のうち区教委が車止めを貸し出しているのは３分の１に満たない。

　風見さんは事故後、時間が許せば通学路で登校を見守り、現場の交差点に黄色い横断旗も寄付した。交差点の信号は昨年２月、人と車の流れを分ける歩車分離式に切り替えられた。

　「子どもは大人がつくったルールに従うしかない。不便があっても、少しずつ譲り合って、安全を確保していくしかありません」

■対策、住民が理解を

　警察庁の交通統計によると、通学中の交通事故で死傷した子ども（幼稚園～中学生）は、２０１５年までの１０年間で３万６３４０人に上る。死亡は９４人で集団登校中の子どもの列に車が突っ込む事故も相次ぐ。

　京都府亀岡市では１２年に集団登校中の児童ら１０人が軽乗用車にはねられた。女児２人と引率の女性が死亡し、７人が重軽傷を負った。これを受けて国は通学路の緊急点検を実施、歩道と車道の区別がないなど対策が必要な場所が７万４４８３カ所あり、うち９割で対策が行われた。

　だが、緊急点検で問題がない、とされた場所でも事故は起きている。横浜市では昨年１０月に集団登校中の列に軽トラックが突っ込み、男児１人が死亡。ガードレールはないが、路側帯を緑に塗装する「グリーンベルト」があり、対策は必要ないとされていた。事故を機に市は子どもの視野を遮らない「ガードパイプ」の設置を検討している。

　車の速度を抑える対策もある。埼玉県川口市は市の面積の１割ほどの地域で制限速度を３０キロに規制している。きっかけは、０６年に保育園児の列に乗用車が突っ込み、２１人が死傷した事故だ。生活道路を時速約５０～５５キロで走行していたという。速度規制がない道路で法定速度は６０キロだった。

　市は県警と協力して生活道路の制限速度を３０キロにする取り組みを進め、これをモデルに国が１１年から全国で「ゾーン３０」を始めた。昨年３月時点で全国２４９０カ所が指定されている。

　通学路に車が入れないようにする対策として、新潟市中心部の日和山地区では全国初の取り組みが進む。決められた時間になると、路面からゴム製の柱状の車止め「ライジングボラード」が自動的に出てくる。

　今春、設置される。費用は１基で５００万円程度。柵の設置や見守りで人手がかからない半面、費用に加えて、生活に車が欠かせない地域で住民の理解をいかに得ていくかも課題だ。（重政紀元、津田六平、阿部朋美）

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■登下校中に起きた主な交通事故

２０１０年１０月　宇都宮市　小学校教諭が運転する乗用車が登校中の児童らをはねて、５人が重軽傷

１１年４月　栃木県鹿沼市　クレーン車の運転手がてんかんの発作を起こし、小学生の列に。児童６人死亡

１２年４月　京都府亀岡市　無免許の少年が運転する軽乗用車が小学生らの列に。女児２人と引率の女性が死亡。７人が重軽傷

１３年９月　京都府八幡市　乗用車が小学生１３人の列に。５人が重軽傷

１４年９月　東京都世田谷区　軽トラックに小学生がはねられ、１人死亡、２人重軽傷

１６年３月　群馬県高崎市　小学生の列に乗用車が突っ込み、小１の男児１人死亡

１６年１０月　愛知県一宮市　下校中の小４の男児が、スマートフォンでゲーム中だったトラックの運転手にはねられ死亡。

１６年１０月　横浜市　軽トラックが小学生の列に。小１の男児１人死亡、４人がけが

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