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さて7時の定刻から延々と舞台両側の画面で子供達やいろいろな人のInterviewの画像などを流して観客が席に着くのを待ってから漸く8時近くになって公演が始まりました。プログラムはロシア語表記のみ。従ってロシア語の先生にレッスンの一環として一部訳を手伝ってもらいました。
第一部
1. レーザーショー :スポンサーの名前などのレーザーショー。
2. (彼に)捧ぐ :娘でボリショイのバレリーナのイルゼ・リエパ
勿論父親に捧げる踊りということだと思います。イルゼは当方がボリショイを見出した先シーズンよりはスペードの女王が上演されていないせいかボリショイで踊っていないのでは。当方は初めて見ました。元はプリマだったのではと思いますが現在は年齢(43歳?)のせいか第一ソリストです。この日イルゼは合計3回踊るのですがこの最初のこの演目では髪の毛は長く白い服に長いスカーフを使った踊りでした。音楽はこの前見たスパルタクスで聞いた音楽で父親の得意だったスパルタクスの音楽をバックに踊りを振付けた物ではと思われます。
3. 眠りよりパ・ド・ドゥ:マリインスキーのエフゲーニア・オブラスツォーワ、ヴラジミール・シクリャロフ
初めて見るペアでしたが若いペア。女性は可愛いとは思ったのですが踊りは取り立てて凄いというものでもありませんでした。これからが期待でしょうか。
4.白鳥の湖よりアダージオ:シプリナとフィーリン (写真の2人)
TWO SHOTを撮る前のシプリナですが綺麗であることに変わりなし。彼女の白鳥は未だ見ていないので11月23日に全幕見るのが楽しみです。その時のパートナーはArtenですが。
5. カルミナ・ブラーナより白鳥 :ハーレム・バレエのラモン・トエレン
白鳥という題名ですが先ず舞台上の台にみんなに担がれてラモンが入場。その後みんなでよってたかってナイフで切り付けられたり、断末魔の痙攣をしたり、何度も復活して何度も殺されているようにも見えました。白鳥であることを象徴するのは頭に載せた白い髪のような被り物なのでしょうね。
6. ジゼルの2幕よりパ・ド・ドゥ : ネリー・コバヒゼとウヴァーロフ
最近成長著しいネリーと病み上がりのウヴァーロフ ペア。未だウヴァーロフは全力で踊っているとは思えませんでしたがジャンプや回転をそつなく、只無理せず踊っているようでした。そもそも彼が怪我したのはこのジゼルの2幕ということですから悪夢を克服する為に敢えてこの演目を踊ったのか。因みにネリーはティスカリーゼが同郷のグルジア出身のネリーを見出して可愛がっているとのことのようですが今回は相手役はウヴァーロフでした。ティスカリーゼは2幕でこの日の主役といえるイルゼとDVDにもなっているスペードの女王を踊ったのでこの日の趣旨からすれば相手はネリーでなくイルゼというのは当然でしょう。
おまけ:この後パンフに記載のないクレムリン・バレエのエスメラルダの上演。 そもそもこの舞台が本拠のクレムリン・バレエですがボリショイ通より見に行く価値ないよと聞いていたのですがさもありなんでした。最近プレミアのエスメラルダでしたがソロもコルドも大したことありません。衣装もこのカテコでは良く判らないかも知れませんがやっぱり台所事情でしょうお金の掛かっていない衣装です。
ボリショイ・オペラ、マリインスキー・オペラには、チャイコフスキー作曲「スペードの女王」があったと思うので、もし機会があったら気が向いたらどうぞ。
私はこれをレンタルビデオで見た(聴いた)ので、わりと簡単に入手できるかと思うのですが。昔のソ連のオペラ映画で、総力を結集して、これぞ芸術!というもので、打ちのめされました。
オペラ「スペードの女王」が、ロシアの国民的詩人プーシキンへの深い愛を感じさせる圧倒的なものなのに対して、フランス人のプティの創ったバレエは、プーシキンの原作の影響が薄く、原作をあまり踏襲せず軽妙洒脱なバレエを創るのがお得意のプティらしい、ライトな仕上がりとなりました。総合芸術としてのバレエの凄さを感じさせるよりは、主役二人のスターオーラをカジュアルに楽しめるものではないでしょうか。
私はイルゼ・リエパを好きだったことがあり、この初演時は期待したので、どうも期待過剰だったらしく、個人的には彼女には少し失望しました。ファンの過剰な思い入れってやつですね。(もちろん彼女は主要な3者のうちもっとも高い評価を受け、主役のツィスカリーゼをしのぐ称賛を受けてます。でも私は彼女ならあれ以上がやれると思っていたので。)プリセツカヤをあまり褒めすぎたくないのですが、プティはほんとはプリセツカヤを使いたかった(年齢が高過ぎて無理だった)そうで、目は確かだと思いました。最後に、運命の怖さ、主人公が絶頂から突き落とされる怖さが、演出的にどうしてもほしいと思ったのです。
イルゼの役は、プティの他作品にも通底する、何か、運命の恐さその他を感じさせる女性像だという気がするし、外表的にトランプの女王姿が異常に似合う、というより上のものが欲しかった。彼女は美貌も才能もあったけど、舞台に立ち続けられないと伸びきれないものだなあと残念に思いました。ゲルマンへの怯えのほうはよく出ていたし、彼女のダンス処理の独創性には瞠目しましたが。たぶんプリセツカヤなら、私の演出上の期待に応える踊りはできただろうと想像しています。イルゼのほうがずっと美しいけれど。キャスティングとは難しいものです。(これは辛口で一般的には絶賛ですので、イルゼ。)
日本ではバレエ「スペードの女王」もすでに上演され、多くのプティの振付作品やモダンバレエが上演されているので、バレエ「スペード」のプティ振付には、寂しいものを感じました。私の見たプティもの十数作の中で、振付だけなら一番低い水準で、比較的近年見たものでも「クラヴィーゴ」あたりのほうが上だった気がします。ボリショイでツィスカリーゼ初演なら「ノートルダム・ド・パリ」のほうが、作品としては上なのですが、「スペード」は装置も簡単だし、今のボリショイには便利なのかなとも思います。
もちろんロシアはソ連崩壊後色々だし、ロシアでのモダンバレエの上演はきっと日本よりずっと少ないので、大成功で当然ですが。
演出家プティはツィスカリーゼの外見を上手に使い、私はツィスカリーゼは順当な成功だと思いますが、5月に観たソロル役の方が、彼の内面世界の投影を感じてもいます。私がリーザ役で見たルンキナは悪い男に騙されるかわいそうな女の子を過不足なく好演で、主役二人ほどの評価はないでしょうが、個人的にはツボでした。
音楽をチャイコフスキー「悲愴」を使ってしまったことは、クラシック音楽系から批判がありDVDにも注釈入ってますが。・・・この振付なら全然別の音楽でも、作れると思うし。バレエは一段低く見られることもあるし、こういうことは神経使って欲しいですね。
昔から日本で長く楽しんできたプティについて、ちょっと考えさせられてしまった作品でしたが、主役二人のスターオーラは今、いっそう増して、それを客席で浴びる分にはアドレナリンやアルファ波の出る舞台だったのではないかと。
日本でバレエを見ていると、パンフや雑誌類の解説がもっと詳しいほうがいいなとか、芸術性よりミーハー的なものが受けてしまうというか扱い自体がそうだとか、思うところあって細かくなってしまいました。バレエは、これからは軽い娯楽になっていくのかなと思ってますが。
プーシキンは本人の生涯そのものが小説かドラマのようで、エネルギッシュで凄くて遠い世界に思えたのに、ボリショイオペラを観るとその世界が身近に感じるから不思議です。ハーモニーの巧さにも、自分の知らない高みを感じてしまいました。
歌劇「スペードの女王 映画版」
ロマン・チホミーホフ監督
指揮、演奏 エウゲニー・スヴェトラーノフ ボリショイ劇場管弦楽団
出演 スラブ・アンジャパリーゼ タマーラ・ミラーシュキナ ソフィヤ・プレオブラジェーンスカヤ等
撮影モスクワ、レンフィルム
だったかと思います。
ちゃんと記録してないのでいい加減ですみません。当時の俳優が演じオペラ歌手が吹き替えしてたようです。古いものですが雨はふってませんでした。ここを観た方で縁があったらどうぞ。
何時もながら詳細の情報ありがとうございます。スペードの女王の映画探してみますね。