ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『ローラン・プティのこうもり』 2012年2月12日(日)

2012年02月19日 | Weblog

Nさんよりこうもりの最終日分の寄稿頂きました。
写真は、ホワイエで販売されていた
バレンタイン限定のハート型ガトーショコラとのこと。
宜しくお願いいたします。

Nさんも今回は残念ながらボリショイは行けなかったそうです。、

新国立劇場バレエ団『ローラン・プティのこうもり』
2012年2月12日(日)
ベラ:小野絢子
ヨハン:菅野英男
ウルリック:吉本泰久

メイド:楠元郁子

グランカフェのギャルソン:マイレン・トレウバエフ 江本拓 福田圭吾

フレンチカンカンの踊り子:厚木三杏 西川貴子 堀口純

チャルダシュ:芳賀望
       川村真樹 さいとう美帆 寺田亜沙子
       丸尾孝子 米沢唯 細田千晶

小野さんがベラを踊ることが発表された当初、
6人目の子供に見えてしまうのではと心配していたのだが、
全く無用であった。
5人の子持ちにしては若い母親ではあるが
育児疲れやヨハンとの躾を巡る言い争いも不自然さがなく
生活感を出していた。
変身後は晴れやかで自信に溢れ、
コントロールの効いた正確な踊りに色っぽさが加わって
艶やかなヒロインを好演していた。
メイドにお皿を投げたり、電話を持ってきてもらってウルリックを呼ぶ場面では
勢いが勝り、気の強さが前面に出ていてなかなか男前だった。
恐らくは歴代のベラで最も小柄なダンサーであると思うが、
可愛らしいだけではない様々な要素を兼ね備えた魅力があった。
今回も新境地開拓に成功したといえよう。

菅野さんのヨハンは見かけは生真面目な父親のようで
とても浮気する男性には見えず、
どう変化していくのかを興味深く鑑賞した。
ベラが去った後はそれまでの気難しそうな表情から一変して
底に眠り固まっていたものが割れ始め、あっと驚かされた。
グランカフェでは一層弾け、
色気やセクシーさよりは明るさやユーモアで観る者を惹きつける
新たなヨハンの誕生と感じた。

小野さんと菅野さんは初めてペアを組み、共に初役同士だったが
騒動を乗り越え仲を取り戻す夫婦役に違和感がなく
心温まる舞台を作り上げていた。
今後の共演も楽しみである。

チャルダシュのダンサーも連日大活躍だった。
(11日、12日は長田さんに代わってさいとうさんが出演)
白鳥の湖やライモンダと異なり、
1曲終わってからはレビューのようなダンスを
ベラとウルリックと一緒に繰り広げるなど
体力の消耗が激しい役柄である。
最初は重厚感のある粘りの効いた踊りを披露し
その後はテンポが急速になり、
1度袖に入った後に再び登場し、軽やかな踊りをこなしていて
華やぎを与えていた。

初日にも触れたが、シュトラウスⅡ世の
軽やかで親しみやすい音楽が舞台を盛り立て、
幕間や終演後も自然と足取りが軽くなる。
またウルリックからベラへのアドバイスである
下を向いて悲しい顔をせず、前を向いて笑顔になることの大切さを
不安が募ってやまないこの時世、より強く心に響いた。
新春の演目として定着してほしいと願うばかりである。

次回公演は3月、ボリス・エイフマン振付の『アンナ・カレーニナ』である。
主役から群舞まで、身体をこれでもかと駆使する難易度の高い振付の連続に
2年前の劇場初演では誰もが驚愕せずにはいられなかった演目だ。
エイフマンバレエからのゲストの他、
新国立のダンサーの主演は前回も務めた厚木さん、貝川さん、山本さん組に
初役の長田さん、厚地さん、
トレウバエフさん(福岡雄大さんが怪我のため降板)が加わり2組に増えた。
エネルギー漲る舞台に期待したい。



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3 コメント

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残念でした (aruyaranaiyara)
2012-02-19 09:28:51
今回は、風邪でダウンしまして、全滅かなと思いましたが。
なんとか、最終日のこうもりだけ観ることができました。

これまで以上に、緻密でバランスのとれたNさんのレポートに、細部の情景が浮かんできました。
素晴らしい言の葉に、感謝と尊敬の念を抱くばかりです。
本当にありがとうございました、Nさん!

私が一番楽しみだったのは。
とても想像できない、小野ベラの艶姿への変身でした。

結果は、以前の「カルミナ・ブラーナ」のベビードール女神程のインパクトはありませんでしたが、
やはり、熟女とは違った「男心のくすぐり」を感じましたので、小野さんの起用は成功だったのではと思います。

ダンディなムスタッシュ姿の山本さんの踊りを観れなかったのは、返す返すも残念でした。
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ありがとうございます (N)
2012-02-19 12:45:04
aruyaranaiyara様

このたびもコメントいただきありがとうございます。
いつも丁寧なお言葉の数々に感激しております。
風邪を引き、苦しかったことと存じます。
どうぞ引き続きお大事になさってくださいね。

私も小野さんの変身ぶりに大変驚かされました。
次々と大役をものにしていくご活躍に
頼もしさを感じた次第です。
確かに、フォルトナの危うい魅力は忘れられません。

山本さんは見事なまでのダンディな色男でした。
次回機会があれば是非ご覧くださいね。


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あり (管理人)
2012-02-21 00:03:04
Aruyaranaiyaraさん
何時もコメントありがとうございます。
風邪の中ご覧になったんですね。
ご苦労様でした。
今後共 コメント宜しくお願いします。

Nさん
早速ご返事頂きありがとうございました。
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