5月5日のマリインスキーのダンチェンコ劇場での公演はフォーサイス振付集でした。
1幕物のバレエ4部作。最初がステップテクスト。
音楽:J.S.バッハ (オケではなくスピーカーより) 振付・舞台装置・照明・衣装:ウィリアム・フォーサイス
大柄のエカテリーナ・コンダウーロワ 今回のモスクワでのマリンスキー公演では色々な役で活躍していました。
男性3名は典型的ダンスノーブルと言われるイーゴリ・コルブとアレキサンダー・セルゲイエフ、マキシム・ケレフトフ
観客席が明るいまま音の無く一人の男性ダンサーが踊り始める。何かを引っ張っているようなポーズ。二人目の男性ダンサーと交代したところでやっと少しだけバイオリンの音。音楽は途切れ途切れに流れ明かりもそれに伴って舞台も暗くなったり観客席も暗くなったり明るくなったり。可也照明の明暗を舞台だけでなく観客席を含めて意識した演出。 コンダウーロワが真っ赤なレオタードで登場し男性ダンサーとデュエット、時に男性ダンサーがコンダウーロワを取り合うような踊り。1984年の初演の時にポストモダン呼ばれた斬新なバレエ。しなやかさを感じさせる踊り。
コンダウーロワの長くて柔軟な手足が最大限に利用されたダンス。
カテコ動画
カテコ中も途中で暗くしたりとバレエそのままの照明。
ご本家?のフォーサイスは、意識の殻を破ってくれるような表現に出会えるので好きでした。いつも遠くに行こうとしてるように感じます。ダンスとしては「オフバランス」と言う批評用語で形容されますが、私はそういう狭義のダンスの技術論よりも、フォーサイスが踊りで示してくる考え方が好きです。(といっても最近見てないですが)
ここを拝見し「マリインスキーのフォーサイス」はそれとは全く独立して、一つのモダンなエンターティーメントとして楽しめるものになっているのかと思います。
フォーサイスは自身の振付作品について柔軟で、一度作ってしまったものは、誰か他の人によって別の踊られ方が可能だとしているようで、一度樹立したものが他者の手で解体されるのをむしろ歓迎してるようにさえ見えます。(?)
ザハロワも踊ってる「イン・ザ・ミドル・・」について。この作品を20年位前にフォーサイスから振付けられてパリ・オペラ座で初演したルグリというダンサーが、日本のNHKのバレエレッスンの番組の中で、「今(マリインスキーなどで)踊られている同作品は、自分たちがフォーサイスから直接指導された時のそれとは全然違う。今回後進に指導するに当たって、なるべく初演時の踊り方に戻すようにした」等発言してました。振付創った本人が多様な踊り方を許容してるのですが。初演者の矜持かしら。でも変化のプロセスが判って興味深い話でした。
フォーサイスにしてもバランシンにしても「マリインスキーの」が付くとは思うけど。特にバランシンは、マリインスキーやボリショイで見て、バランシンの良さが判るかは?なのですが、ご本家のはずのニューヨークシティバレエが今あんまりいい具合ではないらしく、「バランシンはNYCBで見た方が判る」とも言い切れなくて。
マリインスキーでは、評価を確定した振付作品が高度に訓練されたダンサーを得て、楽しめるモダンバレエになっているのでしょうね。
<ボルト>
ここに書くのも恐縮ですが、話は変わりますが、モダンバレエネタとして。
管理人様もご覧になったかもしれませんが、日本のバレエ雑誌にムハメドフのインタビューが載り、その中で、グリゴローヴィチがショスタコーヴィチ「ボルト」を手がけるプランがあり実現しなかった、とのこと。ラストは「将校の自殺を描く」と言う話でした。ここや他で現ボリショイの「ボルト」について見た方のコメントを読んだ印象とはかなり違います。(グリ&ショスタコヴィチの意図は当方知識がありませんが、軍隊のある国で軍人の自殺はタブーだと思うので、それは上演したらやばくも意義のあるものになったと思われますが。前にエイフマンの所でちょっと出たのですが「体制」がある時に芸術で現実に侵犯する主張をやるのとなくなってからやるのは重さが違うと考えます)私は知識がないのでこの件はこんな話があったということで。私はショスタコヴィチの意図を判らずに書いてますが、きっと知ってる人は知ってる話だと思います。
ついでに別の話ですが、ポソホフ「シンデレラ」での批評に「マリア・カラスの靴を履かせた」等の一文が。そんな寓意もあったのでしょうか。
下に出てきたシクリャーロフや他にも、マリインスキー日本公演でハンサムだと一部で言われてた人はいたようです。今度皆で「合同公演」やるのでまた人気が拡散しながらそれぞれファンが出るのでしょう。では。
何時もながらの専門的コメント誠にありがとうございます。
ボリショイも最近は段々増やしているフォーサイスやバランシンですが今回マリインスキーを見てこの種の踊りはマリインスキーが前からやっていた分一日の長があるかなと思っていたのですがそれでもオリジナルとは大分違うんですね。オリジナルを見たことの無い当方には判断付きませんでした。
きっと仰るとおりだと思います。
コルプらの「ステップテクスト」とはズレた話になってすみません。
「イン・ザ・ミドル・・」の方は既に現代の古典化し各国のダンサーが踊ってるので多様なあり方があるかも。私もフォーサイス オタクではないので、踊りを見てすぐそれぞれの違いを解析できるわけでもなく、パリの初演者の話で「そうだったっけ?」と思った位です。振付家がオリジナルにこだわってないので、「オリジナルが本物」とかこだわらず「フォーサイスA」があって「フォーサイスB」があってと見ればいんでないかと。
そうはいかないのがバランシンですが、私もバランシンスタイルへのこだわりはありますが、それはある時「本当のバランシンスタイルを見せたい」との意思を持った公演企画者がそれを見せてくれたからで、今「コレを見れば」と指定できる所もないので、あまり大きいことも言えないのです。私のバランシン初体験は東京バレエ団「水晶宮」で、その時は色々な色のチュチュを着たダンサーが次々出てきて「ハイ、赤が出ました~」「ハイ、青が出ました~」てな感じでなんじゃこりゃ~、面白~い位のことしか考えてなかったです。舞踊で音楽を表現するなんて高級なことは全然判ってなかった。それでも、公演は私という観客に「演目の紹介」という機能は果たしていたと思いますしね。
今はバランシンも古典化し、モダンバレエはもっと新しい振付家たちの時代になるのかもしれません。管理人様のいらした埼玉にある「彩の国さいたま芸術劇場」でフォーサイスより後の時代のモダンを上演したりします。
「ボリショイのバランシン」は導入当時はスザンヌ・ファレルの指導が入り力入ってたけど、今一番力を入れてる作品ではないのでは?指導の問題は大きいです。でも今度「合同公演」ではクリサノワとグダーノフがバランシンも踊るので、彼らなら音楽的に踊ってくれると期待しています。クリサノワ、JA、HPの白鳥姿は美人に写ってます。
このブログには教えられることが多く、「セレナーデ」の所でも知らなかったことを知りました。今はどんどん新しい作家に移行していきそうなので、また機会があったらバランシン ネタでも書き込ませて戴ければ。それでは。
バランシンも見ましたしUP遅れています。
一つづつ順番にUPするには演目が多くて一寸時間掛かってます。お待ちの程。
ステパネンコガラの感想の方もお願いしてありますので暫しお待ち下さい。