デリシャスパーティ♡プリキュア (左から順に)
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キュアプレシャス
キュアヤムヤム
今シーズンのデリシャスパーティ♡プリキュアは、「ごはんは笑顔」をテーマとして、「ごはん」をモチーフとした作品です。1月29日に、最終回が放送されました。印象に残ったストーリーを紹介いたします。
● 第26話「ここねのやくそく!ピーマン大王への挑戦」
ここねは、幼少期の頃からピーマンを食べるのが苦手でした。克服するために、様々な調理法のピーマン料理を食べようとするも、なかなか食べることができません。
そこで、ピーマンを知ることから始めてみては?とのアドバイスがあり、みんなでピーマン畑を訪れました。そこには、大事に育てられた形も色も様々なピーマンがありました。ここねは自分でピーマンを収穫し、農家の方の「食べてくれる人の笑顔を想い、大事に育てています!」という言葉もあり、ピーマンに対する気持ちが変わりました。最後には、ここねはピーマンを食べられるようになり、みんなで料理をおいしくいただきました。
苦手な食べ物の代表格でもあるピーマンが題材となり、栽培されている様子も描かれました。苦手だと思っているものでも、その起源や背景を知ることにより見方が変わり、ネガティブな先入観を払拭できる効果はあると思います。苦痛な方法ではなく、そのものの良さを知り親しみを感じるようになることで好き嫌いを克服するのは、とても効果的な手法だと思います。
また、農作物や畜産物を育てた方々の想いを知ることは大切であり、育てることの喜びや難しさ、収穫前の状態の姿を学ぶと新しい発見があります。その先にあるおいしさは、格別なものになると思います。
● 第39話「お料理なんてしなくていい!?おいしい笑顔の作り方」
同級生たちとともにサッカーの試合に参加したゆいは、みんなでお弁当を食べていました。同級生のわかなのお弁当は、父・ましばがいつも作っており、栄養バランスがよいメニューです。試合からの帰り道で、ゆいはましばに会いますが、ましばはふらふらと倒れてしまいます。この日の夜は、ゆいの家でみんなで夕食を食べることにしました。ましばは本当は料理が苦手で、仕事が忙しいにも関わらず、わかなのために寝る間も惜しんでお弁当を作っていました。心配するわかなに、ゆいは祖母から聞いた言葉を基に「料理を楽しんでいると思う」と言いましたが、わかなは対照的に、無理してほしくないと思っていました。
ある日、街にセクレトルー(敵)が現れて戦闘に。セクレトルーの「完璧でなければならない」という想いのこもった言葉を聞き、ゆいは(祖母の言葉だけでなく)自分自身の気持ちを言葉にして伝えようと決意しました。ゆいは改めて自分の気持ちをわかなに話して、心を通わせます。ましばは、わかなのことを想い、お弁当づくりなどを完璧にこなそうとしていましたが、わかなが気持ちを伝えると、初めてその気持ちを知ることができました。
このストーリーを視聴して、数年前にSNS上で話題となった「ポテサラ論争」を思い出しました。これは、総菜コーナーにてポテトサラダを買おうとした幼児連れの女性が、高齢男性から「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」と非難された出来事です。この高齢男性には、「手間を惜しまず手作りの料理を用意すべき」という通念めいたものがあったと思われますが、実際にポテトサラダを作るとなると手間がかかることに加えて、この女性の場合は幼児から目を離さないように注意しなければなりません。このような状況の中でポテトサラダを作ることは、容易ではありません。
料理に限ったことではありませんが、物事を完璧に行うのは困難または不可能であることが多いです。完璧を求め続けると、自分自身を追い詰めてしまうこともあります。完璧=良いこと と考える方は多いかもしれませんが、忙しいときや自力での解決が難しいときは助けを借りて、容易な方法(例えば、自炊せずにお惣菜を購入するなど)で対処することも必要だと実感しました。
今回のシリーズは、「ごはん」を通して「ありがとうの気持ち」を可視化して、作る人,食べる人の両方に「ありがとう」が重なり広がって、優しい世界になってほしいという気持ちがこめられています。ごはんは一人で食べてもおいしく、幸せを分けてくれるものですが、みんなで一緒に食べてもおいしく、おいしさを分かち合うことができることも表現されています。
「いただきます」「ごちそうさま」の言葉とともに、食材やそれを育てた方、料理を作ってくれた方に感謝すること。忙しいときや気持ちが沈んでいるときは食事がおろそかになりがちですが、料理は日常に彩りをもたらし、食事をすると元気になれること。など、ごはんは身近な存在ですが、改めてその大切さを知ることができました。
ゆいと祖母のエピソードが多く描かれているのも特徴的でした。祖父母が作ったおいしい料理の思い出があり、一緒に料理を作って味や作り方を教わり次世代に受け継いでいく。というように、料理は世代間をつなげる役割も担っているものだと実感しました。
プリキュアを視聴したお子さんに、「普段はあまり食べないのに、アニメで見たものを『食べてみたい』と言って、食べるようになった。」「一緒にお料理を作るようになった。」という良い影響をもたらした事例も散見されます。ごはんつながりで、農林水産省の職員がツイッターにてプリキュアを応援するツイートを書き込むなど、思わぬところにも影響が波及しました。
デリシャスパーティ♡プリキュアは、分かりやすく「食育」を学ぶことができる作品でした。長らく親しまれているプリキュアシリーズだからこそ、想いを強く広く伝えることができたのだと思います。
新たに始まる「ひろがるスカイ!プリキュア」は、プリキュア20周年記念作品となります。20周年記念のサプライズが用意されているかもしれません。こちらも楽しみにしております。 .
出典
東映アニメーション プリキュア
cookpad news 目の前の理不尽に立ち向かう!コロナ禍でも負けない「デリシャスパーティ♡プリキュア」が伝えたい料理のこと
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