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感覚統合を生かした支援アプローチ

2019年01月05日 | 教育
低学年の自閉症のA男。なかなかじっとしていることが難しく,すぐに走り出して
しまう。A男に「じっとしていなさい」といってぎゅっと押さえても,すぐにまた飛
び出す。その子はなぜ走り出してしまうのか。3つの感覚にカギがあると考えた。

1 3つの感覚

3つの感覚とは,感覚統合で基本とされる感覚で,五感ではとらえられない触覚・
固有覚・前庭覚である。そのうち前庭覚の刺激にアプローチした。前庭覚には行動を
コントロールする力がある。この感覚の未発達が衝動的な動きを絶えず起こしている
のではないか。

前庭覚を刺激するもっとも簡単な方法は「揺れ刺激」である。脳に揺れ刺激を与え
ると前庭覚を刺激し,感情をコントロールする,前頭葉の成長を図ることにもつなが
る。揺れ刺激を与える方法は「回転する」「ジャンプする」「前後に揺れる」「左右
に揺れる」などである。身近な遊具でトランポリン,回転いす,前後にスライドする
遊具などがある。

2 室内アプローチ

 プレイルームでトランポリンを行う。両手を持って,初めにやさしく跳ばせるが,
表情が変わらない。しかし,強く跳ばせると笑い始めた。そこが本人の心地よい揺れ
刺激ゾーンである。絶えず動く,走り出すというのはかなり運動しないと走ったとい
う刺激が脳に届いていないと見た。また,緊張の状態も強いと考えられる。今度は回
転の木製いすである。やはり強いある速度になると笑いだす。その後,手をつないで
歩くとかなり身体の緩みを感じた。

3 外でのアプローチ

 外へ行くとすぐに走り出す。しばらく一緒に走った後,前後にスライドして大きく
揺れる木の遊具に誘う。「ゴトンゴトン,ゴトンゴトン」と電車を走らせる音を声で
出しながら,初めは緩やかに,そして強く漕いで行った。ある速さで笑い始める。そ
こで2分ほど揺らすと,「おりる」というのでゆっくりと下す。もう一度一緒に走っ
た後,またスライドする木の遊具に乗せる。「ゴトンゴトン,ゴトンゴトン」。やは
り笑い始めて,2分ほどで「おりる」というので下す。その後は手をつないで少しゆ
っくり歩き,時間が来たので「もどろう」と誘うと素直に歩いてもどった。

4 考察

 室内,外の遊具とも強い揺れ刺激を2分程度行うことで,脳に十分動いたという感
覚が伝わったと考える。その後の緩やかな行動から,微量ながら発達が促されたと思
われる。前庭覚に働きかける適度な揺れ刺激を脳に送る。よく子どもを見ながら,か
かわり方,加減の仕方を見抜くのが教師の責任である。
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