旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

イデア論 無知の知

2010年09月03日 22時37分36秒 | Weblog
「新・岩波講座 哲学」全16巻が届いた。正確にいうと、第16巻が欠けているので15巻が手元にある。近いうちに第16巻を入手する予定だ。第14巻「哲学の原型と発展」から読み始めた。 

強靭な肉体を備えた軍人であったソクラテスの風貌が、魁偉ではあるが醜怪ではないところから意思の不屈を強く印象づけている。また、憑依的な体質をもった人で、しばしば硬直的なトランス状態がかれを襲った。しかし憑依状態を知とみなすことを徹底的に拒否した。私は、ソクラテスがこういう個性をもつ人物であることに興味を覚えた。

「ソクラテスにまさる知者はなし。」という神託の謎は、ソクラテスという無知なる者を引き合いに選びだして、神が最高の知者であることを示す逆説であり、ソクラテスに無知の自覚を命じるものであった。ところが、神託を反駁するための遍歴は神託どおりの結末を招いてしまう。人々は知らないのに知っていると思う無知を患っていたのだ。ソクラテスは神託が幻想の上に築かれたアテナイの破滅をささやく衝撃を秘めていることを悟ってしまうのだ。

またプラトンのイデア(原範型)についても解り易く説明している。高校時代に学んだ倫理社会の教師が特に熱くこのイデア論について語った。われら高校生を相手の授業だから解り易く説明することを旨としていたのだろう。興味深かった。「イデアは、それ自身は知覚を超えてありながら、われわれの知覚的判別の中に、ある規範的な働きとして機能しているのであり、われわれの知り方に応じて濃淡さまざまに現れるのである。」