7、8年ほど前に買った腕時計の金属バンドが壊れたので俄か修理で使用を続けていた。今日、時計屋に持ち込んで修理を依頼したら、15分以内に修理できるかどうか判断できるという。腕時計のメーカーなら4000円程度かかることは調べていた。その場合、バンドの取り寄せだけで数週間かかる由。なにぶん急いでいたことも手伝って4000円以内を条件に修理を依頼した。結局3000円余りの出費で、メーカーオリジナルではない新しい金属バンドをとりつけてくれた。外観は新品だが買った時の価格からみて時計の耐用年数はせいぜいあと数年だ。それでも新品の金属バンドに満足している。
陽が大きく西に傾き始めた農園で、種まきと、種芋・芋ツルの植えこみ、苗2本の植えこみをおえた。サトイモ・ジャガイモ・サツマイモ・カボチャ・トウモロコシ・キュウリ・シュンギク・ダイコン・インゲンのうちカボチャをのぞいた野菜は最も安価な種芋と種から育てあげる。月初に種を撒いたシュンギクは、うれしいことに勢いよく若葉を出した。鳴門金時の蔓はよろこばしいことに根を張りはじめた。トマトとプチトマト・オクラ・バジル・オオバ・ネギ、ショウガ・ミョウガは自宅の菜園で栽培することにした。7月を迎えるころにはとれたての新鮮な野菜が農園から、家庭菜園からわたしを楽しませてくれることだろう。農園の遅い春を心いくまで味わうことができた。明日から仕事の世界へ向けて旅支度を始める。
少きより俗に適う韻無く、
性 本と丘山を愛す。
誤って塵網の中に落ち、
一たび去って十三年。
羈鳥は舊林を恋い、
池魚は故淵を思う。
荒を南野の際に開かんとし、
拙を守って園田に帰る。
若い頃から私は世間と調子を合わせることができず、生まれつき自然を愛する気持ちが強かった。ところが、ふと誤って塵にまみれた世俗の網に落ち込んでしまい、あっという間に十三年の月日がたってしまった。
籠の鳥がもと棲んでいた林を恋い、池の魚がもとの淵を慕うように、私も生まれ故郷が懐かしく、世渡りべたなもちまえの性格を守り通して田園に帰り、村の南端の荒地を開墾しつつある。
(岩波文庫 陶淵明全集 松枝茂夫・和田武司訳注)
豆を種う 南山の下、
草盛んにして豆苗稀なり。
晨に興きて荒穢を理め、
月を帯び鋤を荷って帰る。
道狭くして草木長び、
夕露 我が衣を沾らす。
衣の沾るるは惜しむに足らず。
但だ願いをして違うこと無からしめよ。
南山のふもとに豆を植えたが、畑には雑草がはびこり、豆の苗は情けない状態となってしまった。朝早く起きて雑草を抜いてまわり、月の光を浴びながら、鋤をかついで帰路につく。
狭い道には草木が生い茂り、着物は、夜露でぐっしょり濡れてしまった。着物が濡れるぐらいは段惜しいとも思わなぬが、どうかわたしの期待が裏切られず、豆が無事に育ってくれますようにと祈るばかりだ。
(岩波文庫 陶淵明全集 松枝茂夫・和田武司訳注)
わたしの畑