お水を少し冷たく感じ、さんまや栗のごはんを炊きたくなってきました。
季節が変わっていくと、旅の中のさりげない場面が、ひと際色濃く、心におさまってくるようです。
それは、わたしにとって、夜の灯りに波しぶきの煙っていた、オベロイホテルの野外レストランです。
夕暮れ時、ホテルの前の海岸には、たくさんの人たちが集まってきて、海と移りゆく空の一部になって歩いているように見えました。
ピンクも金色もキレイですが、影までが美しく、安らぎに満ちていました。
ここから一時間半くらいお散歩をして、ビーチサイドレストランのにぎわいを愉しみ、途中すっかり暗くなった砂浜をホテルまで帰ってくると、なんとも、ほっとした気分になりました。
さて、ビーチサンダルの砂を落とし、レストランへ向かうことに。
着いた初日は土曜日だったので、脇の舞台で、バリ舞踊が披露されていました。
その時薦められたディナーコースは、前菜に続いて、シーフードバーベキュウ盛り合わせ、七種のお惣菜、四種のパン、デザート盛り合わせ・・・で、追加にコーヒーを頼んだら、ひと品ひと品がたっぷりあったので、ボリュームが普段の食事の三倍くらいになってしまいました。
これはたいへん。と、翌日は、アラカルトを注文して、ちょうどいい塩梅に。
この3日目は、平日なので、コースの品数が週末のそれよりやや少なめ。
これなら大丈夫そう。と、頼んでみたら・・・
メインに、豪快な骨付肉の煮込みが、ドドーン!!
以前、友人の地元、インドネシア・スラウェシ島南部のマカッサルに足を延ばし、チョト・マカッサル CotoMakassar という郷土料理(牛肉とモツをスパイスとハーブで煮込んだスープ )の屋台の前で、ヒトの野生に感動したのを思い出しました。
スープの中の、こぶし大のぶつ切り牛骨も、出し殻にあらず。
お店の前に置かれたテーブルに、地元の人がだいたい6人ずつ相席し(日本でいうなら牛丼屋さんのような雰囲気で、男性が多め)、その中の骨髄を熱心にスプーンですくっているのを見て、「オーッ!!」と思っていたら、
「コラーゲンがあっていいんだよ。」
と、友人が、まるでコーンに盛られたサーティワンアイスを「味見する?」みたいに、関節の骨を差し出してくれました。
・・・ そんなびっくりが、旅の醍醐味です。
またこのレストランで味わったインパクトも、今、最高のひとときとして思い返しています。
そこは、キャンドルにほんのりと明るく、毎夜、ジェゴグの生演奏に彩られた和やかな雰囲気。
正面の波は、照明で白く浮かび、その絶え間なく打ち寄せる音が聞こえました。
食後、一輪の花を受け取って、今はもう潮が満ち、砂浜の見えなくなった波の行列の前に、佇みました。
芝生を横切り、コテージに戻ってきてもまだ、それは、遠く深くで鳴っていました。
(つづく )
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/