むすんで ひらいて

YouTubeの童話朗読と、旅。悲しみの養生。
ひっそり..はかなく..無意識に..あるものを掬っていたい。

それでも 幸福なのは。。

2012年08月25日 | こころ
まだまだ日中は暑いですが、夜になると、ひと頃とは違った涼しい風や虫の声が、窓から入ってくるようになりました。
今年は、とくべつ冷房をつけずに過ごしているせいか、秋のかすかな足取りを、より近くに感じています。


そんなわけで、この夏は、もわっとした熱気を抜けて、旅先のちいさな図書館や、街のカフェで涼をとることも多くなり、今週そこで、すがすがしい二冊の本と出合いました。
それは、

ドイツの作家、エーリヒ・ケストナー の「飛ぶ教室」と、
梨木香歩さんの「雪と珊瑚と」。 


どちらの主人公も、温かい家庭には恵まれていませんでしたが、やがて、気の合う素敵な人たちに囲まれ、人生は豊かに展開していきます。
そしていつも、彼らの傍には、さりげなく「賢い理解者」がいます。

「飛ぶ教室」の主人公、少年ジョニーの友人で、弱虫なのを気にしているウ―リは、みんなに勇気を証明しようと、運動場の高いはしごから飛び降ります。
お見舞いに駆けつけて、困惑している彼の両親に、ジョニーは、

「避けるわけにはいかない、つらい経験ってものがあるんです」・・・「ウ―リが足を折ってなかったら、きっと、もっとひどい病気になってたと思います」
 
と、話します。

先生は、生徒みんなに、
「勇敢であることも、勇敢でないことも、できるだけひっそりやってもらいたい」
と、「おとなのやり方」について断りました。

無謀な行為は、誉められることではありませんでしたが、その儀式のようなものを境に、ウーリは自分への誇りを感じ、満足して、それまでの弱虫から脱皮します。

ウーリの心に寄り添い、行動の奥の意味を見つけてくれたジョニー。
その彼が大好きな、前述の先生は、子どもの頃に寮生活を送っていた学校で、理解ある大人と出会えず、苦い経験をしていました。
当時支えてくれたのは、やはり心の通う親友。
彼は、その経緯を語り、

「・・・決心したんだ。苦しんだのは、心を割って話せる人がいなかったためだから、まさにこの学校で、自分が舎監になろう、ってね。そうすれば、少年たちは、悩みごとをなんでも相談できるわけだから」  (舎監とは、寄宿舎を管理・監督する人)

と、胸の内を明かします。
おかげで、今の生徒たちは、彼に心を許し、明るく成長しています。


いっぽう、「雪と珊瑚と」の主人公珊瑚は、多くの協力者を得て順調に夢を実現していきますが、その生きざまに反発心を持つ人も現れます。

けれど、その全体における印象が、感傷的というより、現実の一部として淡々と映るのは、彼女自身の強さの他に、年上で知恵のある理解者や、志を共にする友人がいることで、珊瑚の心が開かれ、澄んでいるから、とも言えるでしょう。


この二つの作品に流れている「それでも幸福な」トーンって、どこからやってくるんだろう。。

人間なんてみんな、病理が物質化したみたいなもんだから、いたわり合い、助け合って生きていくしかないんだよ」  ―  「雪と珊瑚と」

そんなふうに心をほぐして、誰かや何かに、無心に希望を見つけているところ、かなぁ?


                         かうんせりんぐ かふぇ さやん     http://さやん.com/


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