私の兄が長くフランスに住んでいて、不定期にこんなものを送ってきます。
写真と本文で構成されている“
巴里だより”というものです。わりと最近のものを紹介します。
(124)パイプオルガン 2007年10月19日 岩本宏紀
十字架を買いにマドレーヌ寺院へ行ったときのことである。
入ってすぐ右手にある売り場で、頼まれていた十字架を買い求めた。
友達が飼っている犬は、高齢で重病。何度か生死の境をさまよい、
今は薬と点滴で命をつないでいる。友達はこの犬のために、
マドレーヌ寺院の十字架を求めていた。
「買い物は済んだ。じゃあさようなら」というのも教会に失礼なはなし。
せっかくなのでこの犬に祈りを捧げようと思い、祭壇に進んだ。
そのとき、突然降ってきた大きな音にびっくりした。
見上げるように振返ると、壁一面にそそり立つパイプオルガンの威容。
音は心臓に直接響き、ぼくの心を見た神さまの「良し!」と声に聞こえた。
教会の天井は、オルガンの音や合唱の声が天から降ってくるように
聞こえるよう設計されていると聞いたことがある。
まさにそのとおりだった。
演奏者を探したが見つからない。人間の作り出した音楽というより、
高いところからのメッセージという印象を醸し出すために、敢えて
演奏している姿が見えないように設計してあるのかも知れない。
添付画像 マドレーヌ寺院のパイプオルガン 2007年10月6日