山の音 川端康成

2014年01月02日 | 読書
時代は自分が生まれた頃。終戦から5年ほどたった鎌倉に住む六十過ぎの初老の男が主人公。
一つ年上の奥さん、息子と息子の嫁の4人の家庭に、
嫁いだ娘(息子の妹)が二人の娘を連れて出戻ってきます。
主人公と息子は同じ会社に勤務していますが、
どんな業種なのか具体的な事は何も書かれていません。
主人公が社長、息子が専務、事務員が一人、といった至って小さな静かな職場(らしい)。

時代は60年前の同居が当たり前だった時代です。
息子夫婦にはなかなか子供が出来ない中、息子は早々と外に女を拵えているのです。
どうもその息子は戦争経験があって、戦地でのトラウマを引きずっているのが分かってきます。
浮気相手はやはり戦争未亡人らしく、戦争の被害者意識を正当化の理由としている様子。
そんな微妙な状況の中で主人公は嫁に優しく、嫁も舅を頼りにしているところがあります。
主人公は至って真面目な人物で、際だった泥沼にはなっていませんが、
今どきではちょっと有りえない、嫁舅の微妙な心の綾が日常生活の中に展開していきます。

一章ずつが短編小説のようになっていて、
読み進むにつれて全体像が見えてくるという構成のようです。
「美しい日本」の四季の描写が、多分に俳句的な味わいを醸し出していて、
まだ半分ぐらいのところですが、どんな顛末に至るのか興味深くなってきました。


会話の多い小説です。
今日は家人が誰もいなかったので、眠くなったときに、少し声に出して読んでみました。
黙読だけでは意味をうまくとれないところが、読んでみると分かってきます。
すでに失われたような丁寧な日本語の会話が続き、文章も随分とデリケートであることに気付きました。



この本で、ひとつ勉強になったことがあります。
「年齢のとなえ方に関する法律」というのが、昭和25年1月1日に施行になっていたのですね。
それまで日本では「数え年齢」を使用していたのが、この時を境に「満年齢」を使い始めました。
子供心に父と母がそんなことを話題にしていたのをうっすらと記憶していますが、
この時を境に、すべての日本人が若返ったのですね。いまでは当たり前のことですが。

制定理由と言うのが4点あって、興味深いです。
1.「若返る」ことで日本人の気持ちを明るくさせる効果
2.正確な出生届の促進
3.国際性向上、
4.配給における不合理の解消
長くなるので省略ですが、4つの理由の背景がまた面白い。
時間のある時に「ウィキペディア」でお読みください。

2 コメント

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いいお正月ですね (yykic)
2014-01-03 11:13:11
穏やかないいお正月ですね。私は三人で大縣神社へ初詣に行ってきました。近いんですが、初詣は初めてでした。
絵馬に棟方志功の絵が描かれて、こじんまりとしたいい神社でした。大人だけの正月は静かずぎてちょっとネ。今年には息子夫婦が帰国するので次の正月はもう少し賑やかになることと思っています。満六十六歳、数えで六十七歳の穏やかなお正月です。
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今日も穏やかでした (gouza)
2014-01-04 17:14:28
大縣神社は男の神様ですね。
ある意味縁結び祈願でしょうか。
うちも連れて行かなくてはいけないですね。

我が家は初詣ではまだどこにも行っていない罰当たりです。
どこか行かなくてはと、やや焦り気味の4日土曜日です。
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