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岩々は清水に濡れて色を増す ちせい
○(まきえっと)「濡れて色を増す」と、目の付け所がいいですね。
霊峰の滴り賜う野の仏 餡子
〇(珠子)森閑とした麓の野道。日本にずっと残しておきたい景のひとつ。
山伏の法螺谺する青嶺かな アゼリア
○(餡子)写真の山は、俊嶺すぎて修験者がいそうです。当然法螺貝も聞えてくるでしょう。
○(敏)いかにも法螺貝の音が聞こえてくるようです。
○(卯平)この写真からの発想としては無難な句
〇(春生)修行の山の厳かさが出ました。
祖母山へ傾山へ夏の霧 道人
〇(ちせい)季語は「夏の霧」。具体的な山の名前がいいと思いました。
○(ルカ)山の名が、魅力的)
〇(藤三彩)神武天皇の祖母・豊玉姫の祠が山頂にあるという百名山の祖母山、九州のみならずコロナの影響で山小屋の存続が危ぶまれている。
○(餡子)誰が読んでも、青邨のあの句を思い浮かべるでしょう。本歌取りとは言え、どうなんでしょうと思いつつ・頂きました。
○(卯平)多分このような句は出句されるだろうと思っていた。
◎(アネモネ)上手く本歌取りして面白い句になりました。
人語なき渓流だくだく五月も尽きぬ 藤三彩
山峡の輪廻転生滝の音 あちゃこ
○(卯平)中七の発見に共感。この写真で昇華した句として一応完結している。
鋭い音でロープが切れる夏の霧 宙虫
◎ (アゼリア) 井上靖の氷壁を思い出しました。ドラマチックな句と思いました。
○(泉)小説があった様な・・・?
絶壁の勇姿にこだまホトトギス 多実生
○(まきえっと)ホトトギスのこだまとの取り合せがいいですね。
〇(珠子)今年も何度か時鳥の声を聞きましたが、確かにこだましそうなけたたましい啼き声です。「雄姿」をもう少し具体的な言葉にとは思いましたが。
◯(アネモネ)ホトトギスの声のこだまが聞こえて来ます。
夏山や切り立つ崖は水墨画 泉
◎ (多実生) 中国桂林の風景の様な切り立つ崖は、確かに水墨画の世界です。
虫喰ひの像を祀りて登山口 アネモネ
◎(餡子)これから、あの山頂を目指して一歩を踏み出す。小さな仏が登山の安全を見守ってくれるだろう。
〇(仙翁)虫食ひの像でも、登山者には有難いでしょう。
〇(楊子)山に対する深い祈りをもって祀ってあることがわかる。遊びではない登山への覚悟がわかる。
〇(珠子)樹の質のせいもあるのではないでしょうか。庶民の為の素朴な仏像。「虫食いの仏像」という視点には敬服いたしました。私も登山口の野仏で作りたかったのですが断念しました。
〇(春生)富士山の古道のこんな感じです。
〇(宙虫)虫食いの像が印象的。歴史や祀られている場所が見える。
青葉闇里にも離婚相談所 楊子
◯(道人)夏霧からの発想でしょうか。写真詠を離れて現代をモチーフとした句としていただきました。
◎(敏)「離婚相談所」の出現が唐突で、呆気にとられました。
〇(メイ)青葉闇のなかで、人間の営みも自然の一部なのだと実感させてくれました。「里にも」が重い言葉を和らげています。
○(泉)コロナ禍で離婚が増えているらしい?
○(卯平)二体の地蔵の距離感からこの句が降りてきたのであろう。
大海へ続く険しさ雲の峰 まきえっと
○(泉)山脈の水流が、やがて大河になります。
霧を吸う山のポケット河鹿鳴く 珠子
◎(まきえっと)「霧を吸う山のポケット」がいいですね。
〇 (多実生) 温度の変化の大きい海抜の高い清流の谷川。山のポケットの表現が面白く、今河鹿の季節でも有ります。
〇(楊子)ポケットという可愛いことばが河鹿の声と響き合っている。
◎(宙虫)ポケットが意外に面白い。湿気の感覚もいい。
(選外)(道人)河鹿の居場所が「山のポケット」とは言いえて妙。主季語は「河鹿」
籠りゐて獅子や牡丹の青春劇場 瞳人
(選外)(藤三彩)獅子・牡丹、猪鹿蝶の花札に倶利伽羅紋紋の任侠道への連想はかつてのお姿か?
深海のかすかな記憶夏の嶺 メイ
〇(ちせい)季語は「夏の峰」。春の記憶が夏の情景に厚みを持たせ。
◎(ルカ)夏の嶺が効いてます。深海だった太古の頃を思い出す)
○(餡子)太古には、ここら辺りは海の底だったのですね。悠久を感じさせる句です。
〇(仙翁)エベレストも、昔は海だったのですね。
◎(楊子)嶺を詠みながら深海に思いを馳せたのは発想がみごと。
◎(泉)深海が隆起して山脈になる。雄大な地球の歴史です。
◎(珠子)深海の底にもかつては山の峰だった時代があった。壮大なロマンにやれました。
○(あちゃこ)かつて海底だった記憶。類想はありますが、共鳴の一句です。
雲を抜け法螺貝聞こゆ夏の山 仙翁
〇(春生)法螺貝の音が「雲を抜け」て聞こえてくるという捉え方が見事。
青山はいずこにありや雲の峰 敏
◯(道人)人生至るところ青山あり。雲の峰がいいですね。
〇(藤三彩)トレイルランが流行っている、「風になった君へ」と悼む碑がある。若者の死は無念。
〇(瞳人)夢も望みも消えて、とは
山裾に一刷毛を足す夏の雲 ルカ
〇 (多実生) 夏山の風景で一刷毛が良く効いています。
◎(仙翁)確かにそう見えます。雲の一刷毛、面白いですね。
○(あちゃこ)絵画的な感覚。対象との詩的な距離感がなんともいえません。
〇(春生)「一刷毛を足す」で、雲の動きを表現したのがうまい。
(選外)(道人)中七がユニークで、画人の俳句のようです。
曇天を支え賜ふや夏の山 卯平
地蔵尊に影射しかけて青紅葉 春生
〇(仙翁)地蔵に日影を作る優しい青黄葉、いいですね。
○(泉)良く観察しています。
〇(宙虫)そのままですが、なんか安心する。
夏の川大地の色の岩蔵す ルカ
〇(メイ)力強い大岩がころがる夏の川。岩の色が「大地の色」はあたりまえのようでいて、納得できる。
寄せつけぬ孤高の巌南風 まきえっと
〇 (多実生) 壮絶な絶壁を詠み切っていると思います。
○(敏)南風をも寄り付かせない巌の孤高さが魅力。
絶巓へ歩荷の黙と携帯と 道人
〇(藤三彩)歩荷の重さは中に一升瓶があるから。携帯は繋がらないことが多い
○(餡子)若い頃登山中に歩荷のかたとすれ違ったことなどありました 。凄い量の食品やら飲料やらを担ぎ、両腕を胸のところで組んで寡黙に一歩一歩ゆっくりと登って行くのを、頼もしく見送ったものです。携帯は・・・現代的。
◯ (アゼリア) 歩荷と携帯の対比が興味深いと思います。
◎(あちゃこ)実体験が見えます。このような句はできません。三枚の写真を見事に旅しています。
◯(アネモネ))今風で笑いました。
落石の名所もありぬ青葉道 アゼリア
〇(瞳人)気を付けるに、しくはなし
〇(宙虫)転がった岩に名前がついていたりするのが面白い。
剽軽な山の頂滴れり ちせい
お互ひの距離を気にする夕立かな 卯平
○(敏)夕立に身を寄せたい間柄でも、自粛の距離は取らざるを得ない、といったところでしょうか。
(選外)(道人)夏霧に遮られた峰と峰を「お互いの距離」に譬えて、社会的距離を諷した句かと。その距離も夕立で雲散霧消してしまうことでしょう。表記だけではそこまで読めませんが写真詠ならではです。
首を欠く野仏蕎麦の花盛り 珠子
○(あちゃこ)野仏から里の全景への展開が面白いですね。
〇(瞳人)そんな地蔵さんは、ちと、さびしい
〇(春生)日本人の原風景かも。
夏の霧晴れて師の声友の声 春生
〇(ちせい)季語は「夏の霧」。声の喚起力。夏の霧に引き立てられて居ると思います。
○(まきえっと)どんな声が聞こえてきたでしょうね。
○(ルカ)霧の晴れた後の安堵感が伝わります)
◎(瞳人)迷いから覚めて、生きてゆく道、一直線…
◯(アネモネ)しみじみ句です。
遠雷や天狗の森に迷い込む あちゃこ
◯ (アゼリア) 群馬県の妙義山を思わせるような山で、天狗がいそうです。
◎(ちせい)季語は「遠雷」。天狗と修業したと言われる義経を思い出しました。
〇(藤三彩)鞍馬山といった感じ。祇園祭も今年は中止。
〇 (多実生)山で 遠雷を聞くと下山を急ぎますが、雷が来ない事が多いです。なるほど、鴉天狗の棲む森に向う様です。
〇(仙翁)天狗のいそうな森ですね。
〇(楊子)物語性がいい。
○(泉)童話の様です。
○(卯平)この写真から中七の発見は見事。季語との関係では少々予定調和の範囲内ではある。
〇(珠子)昔から村人に「天狗の森」と呼ばれている森なのでしょう。シンプルですが、天狗の森が効いています。
◯(アネモネ)発想の展開が面白い。
世の雑事忘れ夏山踏みしめる 多実生
〇(ちせい)季語は「夏山」。夏山は緑滴るばかりで雑事を忘れる事が出来そうです。
◎(藤三彩)今はダメでも、数か月後にはなんとか登行に行きたいものだと願う。
○(餡子)その通りです。
◯ (アゼリア) 登山初心者ですが、共感の句です。
(選外)(道人)上五がリズム感に欠けるけれど句意に共感。
雨のたび手を合わす祖父花雁皮 宙虫
○(まきえっと)物語性がありますね。
◯(道人)「花雁皮」は難解季語でした。勉強になります。
◎(メイ)音の流れが美しく、貴い姿に手を合わせたくなりました。清楚な花雁皮もよくあっています。
◯ (アゼリア) 花雁皮の季語が素敵です。
野仏に倚りし草の香遠青嶺 餡子
〇(仙翁)草の香が寄り添う、いいですね。
○(ルカ)草の香がいいですね)
◯(道人)写真の薄紫の草の名は「紫露草」。八音で使いにくかったのですが、確かにこういう用法もありますね。
○(敏)草の香が、近景と遠景とを仲立ちしているようです。
○(あちゃこ)優しさがじわり。近影と遠景の対比が効いています。
滝音に立てる聞き耳道祖神 敏
◯(道人)まるで道祖神も聞き耳を立てているかのようです。
〇 (多実生) 滝音と道祖神、想像豊かで物語になります。
◯(アネモネ)なるほど。有りだなと思いました。
〇(宙虫)滝の途切れない音と付き合う道祖神、いい。
緑雨きてあの人に似る石の貌 楊子
〇(瞳人)穏やかな顔でありますように
十一や沢にしみ入る森の滋味 メイ
◎(道人)「ジュウイチ」という鳴き声、「慈悲心鳥」という季語も知りませんでしたが、中七下五とよく響き合っています。
〇(藤三彩)ジュウイチ(慈悲心鳥)はピピピーと甲高い声で鳴く、姿はなかなか見せてはくれないよう。山へ行きたいなあ。
○(あちゃこ)芭蕉の岩にしみ入る蝉の声を連想。静けさが際立つ一句です。
山伏の錫杖濡らす夏の水 仙翁
◯ (アゼリア) 景が目に浮かびます。
〇(ちせい)季語は「夏の水」。厳しい修験道に清涼剤の夏の水
○(ルカ)山伏の表情まで見えてきます)
〇(メイ)「錫杖濡らす」に惹かれました。清々しい夏の水が山伏に涼を送っているようです。
〇(楊子)錫杖がひんやりとしたかんじをだしている。歩くたびに金属の杖音も聞こえてきそう。
〇(珠子)重量感たっぷり。「夏の水」にはちょっとひっかかりますが。
〇(春生)心も洗われるひと時ですね
〇(宙虫)豊かな時間がここにあるという感じ。
沢音の小さく確かに霧の底 アネモネ
○(まきえっと)いずれが楽しみです。
○(ルカ)霧の底に、リアリティあり)
〇(メイ)沢音をさがして霧の底にたどりつく。「小さく」だけれど「確か」に聞こえる、たたみかけるリズムがいい感じです。
〇(楊子)見えはしないが聞こえる沢音が景色をいきいきとさせている。
八十坂の新茶淹れやう褒められて 瞳人
夏風邪や離れて二体の道祖神 泉
○(敏)道祖神たちもコロナ禍にあるのでは? といった一句かもしれません。
〇(メイ)夏風邪の気怠い気分になってみると、癒しの景色に見えてきました。不思議です。
○(卯平)季語の説明で理が先行する句ではあるが今のご時世を踏まえた句としていただく。
地蔵は無言涙あまたの蛍草 藤三彩
広島はいよいよ梅雨入りです。コロナ騒動もあるし、余計に憂鬱な梅雨になりました。しかし私たちは、世界史が激動している最中を生きているのでしょう。戦争よりは、はるかにマシかな?