小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第472回小麦句会結果発表1

2022年03月08日 10時16分51秒 | 1日句会

春が来たというのに、ますます世界は混迷の中。

これから日本の中でも憲法を含め、外交、防衛など論議が巻き起こることになりそうな。

100年、平和を維持すること、それは大変なことなのだろうか・・・・。

桜に向って、花々も一気に咲き出すことでしょう。

沈丁花が開き始めているのを見かけた・・・・。

 

★結果発表・・・今回も二回に分けて

 

点描のような天草涅槃西風   楊子

○(まきえっと)「点描」がいいですね。

◎(敏)天草を実際に俯瞰したことは無いのですが、おそらく「点描のような」小さな島々の連なりなのでしょうね。涅槃西風に吹き飛ばされそうな。

○(アダー女)遠く天草が点描画のように見え、桜満開の中、西方浄土の風がこちらにも遠い天草にも吹いているような長閑な気分。良いですねえ。

◯(ルカ)美しい景。

 

(選外)(卯平)写俳として出来上がった句。「点描」は報告の範囲では。

 

桜花海風坂を登り来る   春生

〇(ちせい)風が擬人化されているようで心地いいと思いました。

◯ (アゼリア) 暖かい日差しと穏やかで気持ちの良い風が感じられる爽やかな句と思いました。

 

湖縁(うみべ)りの父母へそよ吹け彼岸西風   瞳人   

 

桜咲く岬の町へお嫁入り   餡子

〇(春生)瀬戸の花嫁さんですね。雰囲気のある句です。 

◎(まきえっと)「お嫁入り」とまで発想がいったところがすごい。幸せになりますね。  

 

(選外)(道人)素朴なモチーフが佳い。

 

戦車来て半鐘たたく悴む手   泉

○(餡子)半鐘からの想像・・黒船が来たときにはこんな感じだったのかもしれませんね。戦車からの想像:・・・ウクライナの様子も映像だけでしか判断できませんがこんな感じでしょう。ひどい状態を何とか早く停戦に持っていって欲しいと思います。 

◎(瞳人)人の手で戦車を押し止どめんとする人、半鐘をたたく人、其処へ救いの手は、出て来やしないという現実を、極東のこの国の民は知るべき

○(仙翁)ウクライナに半鐘はあるのでしょうか。

〇(めたもん)戦車と半鐘の間の隔たりを「悴む手」の感覚がつないで実感があります。

◎(アダー女)火事や震災の折に鳴らされる半鐘。今まさにウクライナのあちこちで戦禍が。目の前の半鐘と遠くウクライナの街中の戦車が心の中で一つの景に成り、警鐘を鳴らしたくなる。「悴む手」に戦禍への恐怖と世界平和への願いが込められています。

◯ (アゼリア) ウクライナのニュースばかり見ているせいか、こんな事もあったのかとみにつまされます。

 

父としての終わりは潮の満ちる春    宙虫

○(餡子)潮の満ちる春がきたら、島を出て独り立ちする我が子。がんばれよ!今度は同等の社会人として応援するよ。   

◎(泉)いろいろと暗示的ですが、詩情豊かな俳句だと思います。

◎(藤三彩)西行忌は花の下で逝きたいと願う。子が独り立ちしないと父は死ねないナ

〇(珠子)春は親の役目の区切りとなる季節でもあります。悠々と満ちて来る春潮の音を聞く父親の心情はいかに。母親とはまた違っているのでしょう。   

◎(道人)親の役割は子を社会に送り出すことかと。その時期は矢張り春が似合う。海辺の町の父親の安堵感。

○(あちゃこ)子の旅立ちに寄せる父の思いは、ちょっと切ない。

○(敏)物語がありそうな句姿で心にとまるのですが、深く読み取れませんでした。

○(卯平)「父としての終わり」をどう読み解くか。逝った父への思い、父が吾子に心密かに告げる訣別、若しかして家族を離れた父としての吾子への別離等々。「潮の満ちる春」に哀愁感が漂う。特選候補のひとつ。

◎(あき子)潮が満ちるように、役割を終える父。さびしさと次の世代への希望も感じられる。

 

引く鳥の翼が刷いたような雲  珠子

○(餡子)美しい風景を美しく詠んでいます。 

◯(道人)中七下五の写実と擬人法が巧い。

○(まきえっと)雲を鳥の翼が刷いたとようと見たところがいいでね  

〇(宙虫)静かに鑑賞できる。鳥の影が印象的。

 

鰆東風海鵜は岩に翼(はね)ひろげ   アネモネ

〇(珠子)あたたかく穏やかな日、海の礁に翼を広げる海鵜。真っ黒な翼をジュディオングのように広げる姿にはつい見惚れてしまいます。  

〇(あき子)「鰆が獲れるときに吹く風」のなかで、一緒に翼をひろげている心持になってくる。

 

早咲きの桜でほっこり有明海   アダー女

 

島民の等しき姓春の海     あちゃこ

〇(春生)一島、みんな同じ姓かも。季語「春の海」の斡旋がせいこうしています。

◎(楊子)なんとも穏やかな景色が見えます。島民は下の名前で呼び合うのでしょう。季語も凝り過ぎていなくて、穏やかさを受け止めています。

○(卯平)こう言う事は島民だけではなく田舎の部落では「等しき姓」は珍しくない。そう言う私の姓も私の産土ではみな「等しい」。春の海でそのような島民の平穏な暮らしが見える。特選候補を迷った。

◯ (ルカ)中七がいい。

〇(宙虫)春の空気が島を包んでいる。

 

(選外)(道人)「姓」は(かばね)と読むのだろう。由緒ある過疎の島を彷彿させる。「春の海」が「島」に近過ぎるのが残念。

 

来し方のひかりかさねて春の波    ルカ

○(仙翁)なかなかのしみじみとした感じです。

○(あちゃこ)春の美しさはシンプルですね。

○(敏)春の海の形容の仕方に感心しました。

 

海底に浴場のあるホテル春  敏

 

春潮の適ひぬ出航万葉歌    藤三彩

○(あちゃこ)万葉に歌われた港なのでしょう。作者の目線がすてき。

 

目を逸らす孕の猫となりにけり    卯平

〇(あき子)どっしりと過不足ない存在感が、表現されている。

〇(ちせい)猫にもプライバシーが有るのかもしれません。

 

ストリートビューにふるさと花林檎    あき子

◎(アネモネ)道具立ての面白さにやられました。

◯(道人)「ストリートビュー」を句にしたチャレンジ精神と「花林檎」の郷愁に感銘。

〇(楊子)あ、故郷だ!と見つめてしまいます。帰ろうかなあという郷愁ですね。季語でいいふる里への想いがつたわります。

◎(めたもん)7文字のカタカナ言葉「ストリートビュー」を詠み込んで巧み。季語による句の優しさも魅力。

◎(ルカ)現代的な言葉を句にされた事に感心。

◎(宙虫)すとんと落ちる季語の肌触りと色合いがいい。

 

(選外)(卯平)「ストリートビューに」か「ストリートビューの」か。前者であれば説明的では。

 

断崖の初蝶夢は遠小島   仙翁

 

岩礁に瓶詰の手紙春匂ふ   ちせい

○(餡子)どこの国から流れ着いた瓶でしょうか?何が書かれているのでしょう。ロマンを感じます。   

○(泉)「瓶詰の手紙」には、いろいろと想像が膨らみます。

◯(道人)ロマン溢れる句。。「瓶詰の手紙」(字余り解消なら「文」だが迷うところ)に自ずと物語がある。

○(まきえっと)瓶詰の手紙はどんなことが書いてあるんだろう。  

 

(選外)(藤三彩)島崎藤村の「椰子の実」でもなく瓶詰は何だろう。危なそう

 

坂と猫多き漁村や白魚舟   アゼリア 

◯(アネモネ)「坂と猫多き」に得心です。

○(餡子)漁村に猫はつきものですが、坂もそうですね。人間より猫の方が多いという町があったような?    

〇(藤三彩)漁師町の風景を自然体で詠めた句

〇(春生)漁村の景が簡潔に描かれています。 

○(仙翁)坂の多い、猫の多い漁港、ありますね。

 

さくらさくら火の見櫓の見る小島  まきえっと

 

(選外)(卯平)「火の見櫓」と「さくら」の関係。微かな予定調和感が拭いきれない。

 

かいやぐら行けども行けども無き故郷    道人

◯(アネモネ)いかにも「かいやぐら」。

○(敏)「かいやぐら」は蜃気楼だと思いますが、故郷がそのように感じられるということなのかも知れません。

〇(めたもん)心象の景の中で原点に行き着けないもどかしさが伝わります。季語「かいやぐら」が絶妙。

◎ (アゼリア) 共感の句です。故郷へ行っても懐かしい人達が年々亡くなり、思い出の故郷とは景色も変わり、故郷は心の中にあるのかもしれませんね。

〇(宙虫)つかみどころのない感覚が春なのだろう。 

 

バイク音転がってゆく春の空    めたもん

〇(春生)バイクの青年でしょうか、軽快な感じが出ました。 

〇(楊子)転がるという動詞が季語を助けていて効いています。

〇(仙翁)バイクの音が聞こえてきますね。

○(アダー女)地には桜が咲き空も春色。バイクで走り抜ける若者のバイクの音も春の明るさの中で転がっているように聞こえます。

○(卯平)句全体が醸す景はこのバイク音が、例えば郵便配達のバイクの音のような何処か長閑な感じ。「バイク音転がってゆく」の緩やかな景が春の空に似合っている。

 

(選外)(道人)春らしい動きのある句。

 

「ドライブ・マイ・カー」のあとのとまどい坂は春   宙虫

〇(藤三彩)二月のアカデミー賞で作品賞など4部門でノミネートされたそうだ。まだ見ていないけど

◎(卯平)この映画を鑑賞した。三時間余りの全く隙の無き緊張感。しかし、ラストチャプターの十分余りの暗転。「あとのとまどい」がそこに展開された。しかし、この暗転があってこそ、三時間余りのこの大作は完成した。まさに画竜点睛。俳句で言えば「季語」。「坂は春」にこの映画を鑑賞した詠み手の気持ちが。この映画を鑑賞したからこそ強く共感した。この映画鑑賞して「春樹文学」へ興味が湧いた。この映画の主題が世界中で共有されるなら「日本の心」を世界中で共有したことになろう。

〇(あき子)「とまどい」が妙にぴったりする。長い映画を見終わって、現実に戻るとまどいか。

 

花便り三月十日十一日    あき子

○(泉)また花見の季節が巡って来ました。予想が当たれば良いですね。

〇(藤三彩)三月十日は東京大空襲。十一日は東日本大震災。花便りが悲惨な歴史を和らげる

〇(珠子)大空襲と大地震。何年たっても重い重い日です。その上さらにウクライナを軍事攻撃するロシア。重苦しい日々の中、河津桜の花便りは嬉しいです。 

○(卯平)3.11の前の花便りと3.11当日との断絶。省略の極みに詠み手の心情を載せている。十分に特選候補。

 

浦里に遺した火の見猫の恋   珠子

○(あちゃこ)写真と猫の恋との取り合わせがあたたかい。

 

 

つづく

 



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