第3節 東アジアの戦力 台湾 1990年代 1
中国の軍事的圧力、脅威に絶えずさらされ続けている台湾は、近年まで1982年の米中コミュニケや、中国の圧力により近代兵器の購入が滞っていたが、1990年代以降ようやく近代化が可能になってきた。
陸軍は12個師団、海軍陸戦隊2個師団とあわせて地上兵力27万人で、M48A5パットン戦車など旧式戦車を配備していた。
海上戦力の近代化は進んでおり、世界有数の強力な海軍となっている。現役兵力は6万8000人、水上戦闘艦は40隻、潜水艦は4隻、18隻の揚陸艦を保有、海軍陸戦隊の上陸作戦も可能である。
最新鋭艦は
康定(カンディン)級フリゲート
である。
これはフランスの
ラファイエット級フリゲート
を輸入したものである。
ラファイエット級フリゲート
は本格的にステルス機能を取り入れた船体で、レーダー捜索は困難である。
康定級フリゲートはフランスで船体を建造したが、
電子装備、兵装は台湾において艤装が行われ、台湾オリジナルの兵装となっている。
ラファイエット級フリゲートにはない対潜兵装が加えられたため、ステルス性が損なわれていると思われる。
康定(カンディン)級フリゲート
は
満載排水量3800トン、
ディーゼル推進で、
兵装は
OTOメララ 76mm単装砲1門、
40mm単装機銃2基、
Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基、
雄風Ⅱ艦対艦ミサイル8発、
シー・チャパラル短距離艦対空ミサイル4発、
Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム1基
である。
搭載航空機は
SH-60シー・ホーク哨戒ヘリコプター
の民間バージョンである
シコルスキーS-70C(M)
で、
アメリカ製の対潜哨戒機器が装備されたものを1機搭載している。
康定級フリゲートは1996年から1998年までに6隻が就役した。
台湾の艦隊防空を担うのは
成功(チェンクン)級艦隊防空ミサイル・フリゲート
である。
これは
アメリカのオリヴァー・ハザード・ペリー級艦隊防空ミサイル・フリゲート
を台湾でライセンス生産したものである。
1993年から8隻が就役している。
満載排水量4105トン、
ガス・タービン推進、
兵装は
Mk13発射機(RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイル44発)、
OTOメララ 76mm単装砲1門、
40mm単装機銃2基、
雄風Ⅱ艦対艦ミサイル8発、
Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基、
Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム1基、
である。
搭載航空機はシコルスキーS-70Cヘリコプター2機である。
対潜戦で主力となるのは
合衆国海軍の中古艦船を購入したノックス級フリゲートであった。
満載排水量4260トン、
蒸気タービン推進、
兵装はMk42 127mm単装砲1門、
20mm単装機銃4基、
Mk32 324mm短魚雷発射管2基、
8連装対潜ロケット発射機1基
である。
搭載航空機はマクドネル・ダグラスMD500小型ヘリコプターで、
小型なためその能力は限られたものになるだろう。
1972年に合衆国海軍で就役し、
1993年に台湾が購入、就役させている。
台湾はノックス級フリゲートを8隻配備している。
ギアリング級駆逐艦は、
合衆国海軍の中古艦船で1946年に建造された非常に古い艦で、
1980年代に近代化工事を実施、
RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイルを発射可能にしていた。
満載排水量は3540トン、
蒸気タービン推進、
兵装は76mm単装砲1門、
40mm単装機銃2基、
12,7mm機関銃6基、
RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイル10発、
雄風Ⅱ艦対艦ミサイル4発、
8連装対潜ロケット発射機1基、
Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基
である。
搭載航空機はマクドネル・ダグラスMD500小型ヘリコプターである。
潜水艦は4隻配備されている。
1987年と1988年に就役した
海龍(ハイルン)級潜水艦
は、
オランダのウィルトン・フィエノルド社が建造し、
台湾が初めて購入した近代的潜水艦である。
水中排水量2660トン、
ディーゼル・エレクトリック推進、
533mm魚雷発射管6門と、
90年代の先進国の潜水艦として遜色のないものとなっている。
海龍級潜水艦導入以前に台湾が保有していた潜水艦は
1945年に合衆国海軍が建造した
ガピーⅡ級潜水艦のみであったので、
台湾の潜水艦作戦能力は大幅に向上した。