ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

2023年3月30日。ウクライナ侵攻から400日目

2023-03-30 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 2023年3月30日。
 
 日本のメディアでも取り上げられましたが、ロシアで反戦の絵を描いた13歳の少女が、教師から警察に通報され、そのシングルファーザーの父親が拘束。娘は養護施設に送られ、父親(アレクセイ・モスカリョフさん)は自宅軟禁状態でしたが、公判の27日、行方をくらましました。裁判ではロシア軍を非難したとして2年間の禁固刑の判決が出ましたが、今日、モスカリョフさんの身柄がベラルーシで拘束されました。

 ミンスク州のスモレヴィチ区にいるところをロシア警察の要請を受けたベラルーシの警察が拘束しました。おそらくロシアへ身柄を引き渡されるでしょう。ロシアからベラルーシへやって来た足取りは明らかにされていませんが、ロシアの独立系テレグラムチャンネル「SOTA」によると、アパート内で携帯電話を起動したことがきっかけでベラルーシ内務省はモスカリョフさんを特定したそうです。

 そもそもこの事件の発端はモスクワから南へ300キロのトゥーラ州エフレモフ市で、昨年4月(もう1年も前)にモスカリョフさんの一人娘マーシャさん(当時12歳)が学校の美術の授業で戦争礼賛のテーマの絵を描くように言われたのに、一人「ウクライナに栄光あれ」といったメッセージをつけた絵を書いて、校長が警察に通報したことから始まりました。
 その日のうちに警察が自宅へやってきました。

 その後、警察はモスカリョフさんがSNS上でロシア軍批判をしているコメントを投稿したとして、罰金刑となり、それを支払いました。
 しかし昨年12月には自宅を家宅捜索され、ロシア軍を繰り返し批判したとして、起訴され、自宅軟禁状態になりました。
 保護者としての子どもへの正しい教育を行わなかったという罪ではないのですね。
 
 母親が離れたところに住んでいて、引き取りも拒否したと思われ、マーシャさん(今は13歳)は養護施設に入れられました。
 この養護施設ですが、いわゆる孤児収容施設だという報道と、社会リハビリテーションセンターだという報道があります。
 後者の場合、反社会的な思想や反逆的な思考を矯正する施設である可能性が高く、マーシャさんが自分の考えを改めるようなプログラムが組まれているかもしれません。地元の青少年問題委員会はすでに、モスカリョフさんの親権を制限するための法的措置を講じています。

 モスカリョフさんの弁護士が、判決公判を前に、マーシャさんが預けられている児童施設を訪ねると。所長から、マーシャさんは別の場所で行われているイベントに行っていて不在だと言われました。代わりに、マーシャさんが父親宛てに書いた手紙と絵を2枚渡されたので、弁護士がSOTAの取材に対し、手紙には「お父さんは私のヒーローです。」と書かれていたと話しました。
 この親子ですが、最初に警察が自宅へ来た後、お父さんは娘に向かって「なんであんな絵を描いたのか、バカ。」とか言って責めたりしていませんね。逆に褒めましたね。

 ロシアの人権擁護団体「メモリアル」は、モスカリョフさんは政治犯だとしています。
 見せしめになっているように私には思えます。本当は「ウクライナに栄光あれ」という絵を描いた女の子を厳しく罰したいけれど、さすがに12歳の子どもなので厳しくはできない。その分代わりに父親に厳しく当たっているのではないでしょうか。そして子どもにはお仕置きとして、親から引き離し、施設に入れてしまう。

 公判では、ロシア軍の信用を失墜させた罪を問われましたが、モスカリョフさんは無罪を主張。SNSのコメント投稿も誰かのなりすましだったと主張しましたが、2年の禁固刑という有罪判決が出ました。
 最終陳述で「ウクライナ特別軍事作戦をどう思うかと聞かれれば、傍聴席の90%以上の人が反対と言うと思う。私も同じだ。大人も子どもも死んでいる。」と反戦の声を上げていました。 
 しかし、モスカリョフさんは弁護士に行き先も言わず逃亡。(話をする時間も方法もなかったようです。)

 そして、今日ベラルーシ国内で警察に身柄拘束されました。ベラルーシからまた第三国に亡命しようとしていたのでしょう。こんなふうに逃亡したら、ますます罪が重くなります。逃げ出したりせずに控訴すればよかったのに、とも思いますが、禁固2年は重すぎると批判している地元の町会議員もいるようです。
 マーシャさんのかつての同級生やその保護者はこの事件をどう見ているのでしょうか。


 ロシア大統領は春季徴兵に関する大統領令に署名しました。4月1日から7月15日までの間に、年齢は18 歳から27歳までの男性が兵役義務として徴兵されます。予定では14万7000人が徴兵されます。
 軍での勤務期間が満了した後は予備役兵に移管されます。
 徴兵年齢の段階的な引き上げに関する法案も本格的に検討されます。そうなると「21歳から30歳まで」に変更っされます。法案成立のタイミングによっては、17歳から30歳までの年齢の男性が徴兵された状態になるかもしれません。


 ロシア連邦保安庁は今日、ウォールストリート・ジャーナルモスクワ支局のエバン・ガーシュコビッチ記者の身柄をエカテリンブルクで拘束したと明らかにしました。スパイ容疑が拘束理由で、モスクワの裁判所は同氏を約2カ月勾留する命令を出しました。同氏がアメリカ側の要請に基づき、ロシアの軍産複合体企業1社の活動に関する国家機密として分類される情報を収集していたことが立証されたとしていますが、詳細は不明です。

 同氏は法廷で無罪を主張。
 ロシア紙コメルサントは、同氏はモスクワに移送され、ロシア連邦保安庁の取調拘置所であるレフォルトボ刑務所に収容されると報道。モスクワのレフォルトボにある地方裁判所はこの日、ガーシュコビッチ氏の5月29日までの公判前勾留を命じました。
 ロシア外務省報道官は、外国人ジャーナリストの役割が他の活動の隠れみのとして使われたのは今回が初めてではないと指摘しました。
 アメリカ政府はロシアに居住、もしくは同国を旅行しているアメリカ国民に対し直ちに出国するよう呼びかけました。