地域農政推進課3「グリーン・ツーリズム」編

●グリーン・ツーリズム

　グリーン・ツーリズムという言葉をご存じだろうか。緑豊かな農山漁村でゆったりと余暇を過ごし、農林漁業等の交流や体験を通じ、地域の自然や伝統文化、人々との交流を楽しむ旅行スタイルのこと。農林漁家たちが、都会では決して味わえない「豊かな食と自然」に調和して営まれる農林漁業の体験メニュー等を用意し、温かいサービスで外都会人などを迎えることで、農産業村への理解と応援、産業の振興、引いては田舎における移住定住の促進までも狙おうという政策を展開している。
　海、山、川、島までなんでも揃う新潟には多様なフィールドがあり、各地で体験施設や直売所、農家民宿など魅力的な誘客の場が設けられており、かなり以前から訪問者は多かったのであるが、意外にも政策としての目標管理のための指標は「学童等体験活動参加者数」で当時の目標が年間24万人程度を目指すというものだったと思う。
　ホテルなどの宿泊者数と異なり観光統計の定例的観測データが無く、直売所などでの売り上げも地元民と外部からの観光客の仕分けが難しいものだから、農林漁村の所得向上につなげる思惑を持った施策でありながら「お金」の指標を的確に設定し得なかったのだ。
　加えて、体験施設や農家民宿の運営者には、農産業村の良さの理解と現状存続の応援こそが主眼であって、儲け主義に傾いてはいけないという矜恃のようなものがあるようで、「お金」の多少で取り組みを管理することを良しとしない雰囲気が、当時私が事務局に関わったグリーン・ツーリズム推進協議会の場でも意見交換などを通じて強く感じられたものだ。
　そんな関係者の思いや指標管理していく上の事情が諸々あって、営利の対局にある牧歌的な学童の校外学習等での体験訪問者数が、実施する学校の報告に基づいて参加者数の把握がきちんとできて統計処理も容易ということで指標に落ち着いたようだ。
　農山漁村の所得向上につなげたいものの、地域の観光地化や商業地化には抵抗があり、また、開発されないからこそ農山漁村の生活文化の良さが価値となってグリーンツーリズムの誘客につながり経済効果をもたらす。グリーン・ツーリズムに関わったことは、地方の片田舎まで全国的に都市化が進む現代において、農山漁村を良い形で守っていくための現実的なバランス取りについて考える貴重な経験となった。
　職務上で各種の現地イベントに参加したほか、私的な関心からも休日に時間があると農産物直売所など関係施設を見て回るようになり、地域農政推進課に在籍している間に新潟県内の農山漁村誘客施設の大方は知りうるところとなった。プライベートでの行動はもちろん個人的な余暇の楽しみが大きかったのだが、これらの体験は、後に移住定住促進のための部署に配属されて新潟をアピールする職務に取り組むにあたり大いに役立つことになるのだから、公私問わずに何かやれば後々何らかの役に立つものだと思う。

(「地域農政推進課3「グリーン・ツーリズム」編」終わり。「地域農政推進課4「防災グリーンツーリズム」編」に続きます。)

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