おとといの夜、雪が降りました。
ゆうべは氷点下まで気温が下がったし・・・
あ~冬がやって来たのねぇ~
インフルエンザが心配です。
では、いつものように嵐の『Snowflake』を聴きながらどうぞ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
妄想ドラマ 『Snowflake』 (14)
美冬の絵はほぼ完成したけれど、最後の何かかが足りない気がして美冬には渡さずにいた。
それからの悟は空白の時間を取り戻すかのように、精力的に制作に没頭している。
次々に描きたい絵が頭に浮かんで追いつかない。
佐和野の計らいで、以前ギャラリーの倉庫として使われていた建物の一室を
アトリエとして使わせてもらえるようになり、大作に取りかかった。
やがて悟はアトリエに寝袋を持ち込んで、マンションに帰らない日も多くなっていく。
そんな悟の身体を心配して、時々美冬は仕事の帰りに差し入れを持って訪れた。
あと数日で今年も終わろうという日、美冬はギャラリーを閉めると家まで送るという佐和野を断って、悟のアトリエに向かった。
昨日から悟の携帯に電話してもつながらず、気になったからだ。
アトリエの窓から灯りが漏れている。
ドアをノックしても返事がなかったので中に入った。
これまでも制作に夢中になっていて気がつかないことがよくあった。
『悟君、いるんでしょ?』
アトリエにしている部屋の片隅に寝袋にくるまった悟がいた。
『なんだ寝てるの?家に帰って寝ないと疲れが取れないでしょ』
そう言いながら近づいてみると、悟は血の気の無い唇で震えていた。
『風邪ひいたみたい。なんか急に寒気がして』
美冬は悟の額に手を当てた。
『少し熱があるみたい。送っていくからちゃんとベッドで暖かくして寝るのよ』
タクシーを呼んで、自分の部屋に着くまで悟は一言もしゃべらなかった。
ずいぶん具合が悪そうに見えたので、美冬は一緒に部屋までついて行った。
あまり帰っていない部屋は寒々しく散らかっている。
悟はベッドに倒れこむとすぐに目を閉じた。
『体温計とか風邪薬とかないの?』
『無い。寝てれば治る』
『食べるものあるの?冷蔵庫開けるよ』
キッチンは使っている様子がなく、せめて冷蔵庫に飲み物くらいあるか確かめた。
缶ビールが数本とチーズ、賞味期限がとっくに切れたヨーグルトや惣菜が少し入っていた。
美冬がコンビニで水やスポーツドリンク、熱があっても少しは喉を通りそうなものを
買って部屋へ戻ると、悟は眠っているようだった。
鍵を開けたまま帰るのも無用心だと思い、暫くしてから声をかけた。
『悟くん、そろそろ帰るね。鍵はどうする?』
返事がない。
美冬はベッドの傍にひざまづいて悟を覗き込んだ。
呼吸が早く苦しそうで額に汗が滲んでいる。
熱がずいぶん高くなったのか、顔も少し赤い。
一人にして大丈夫だろうかと心配になった。
整った顔立ち、閉じられた瞳を縁取る綺麗な睫毛。
初めて、悟の顔を間近で見つめているうちに、その髪に触れたい衝動に駆られ、
美冬はそっと悟の髪をなでた。
悟が目を覚ましたので、慌てて言った。
『そろそろ帰るね』
熱のためか悟の目が潤んでいる。
ベッドに手をついて立ち上がろうとした時、突然その手を悟が掴んだ。
熱い手だった。
『帰らないで』
『悟君・・・』
『帰らないで。お願い』
それだけ言うと力なく手を離した。
------------つづく----------
ゆうべは氷点下まで気温が下がったし・・・
あ~冬がやって来たのねぇ~
インフルエンザが心配です。
では、いつものように嵐の『Snowflake』を聴きながらどうぞ
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妄想ドラマ 『Snowflake』 (14)
美冬の絵はほぼ完成したけれど、最後の何かかが足りない気がして美冬には渡さずにいた。
それからの悟は空白の時間を取り戻すかのように、精力的に制作に没頭している。
次々に描きたい絵が頭に浮かんで追いつかない。
佐和野の計らいで、以前ギャラリーの倉庫として使われていた建物の一室を
アトリエとして使わせてもらえるようになり、大作に取りかかった。
やがて悟はアトリエに寝袋を持ち込んで、マンションに帰らない日も多くなっていく。
そんな悟の身体を心配して、時々美冬は仕事の帰りに差し入れを持って訪れた。
あと数日で今年も終わろうという日、美冬はギャラリーを閉めると家まで送るという佐和野を断って、悟のアトリエに向かった。
昨日から悟の携帯に電話してもつながらず、気になったからだ。
アトリエの窓から灯りが漏れている。
ドアをノックしても返事がなかったので中に入った。
これまでも制作に夢中になっていて気がつかないことがよくあった。
『悟君、いるんでしょ?』
アトリエにしている部屋の片隅に寝袋にくるまった悟がいた。
『なんだ寝てるの?家に帰って寝ないと疲れが取れないでしょ』
そう言いながら近づいてみると、悟は血の気の無い唇で震えていた。
『風邪ひいたみたい。なんか急に寒気がして』
美冬は悟の額に手を当てた。
『少し熱があるみたい。送っていくからちゃんとベッドで暖かくして寝るのよ』
タクシーを呼んで、自分の部屋に着くまで悟は一言もしゃべらなかった。
ずいぶん具合が悪そうに見えたので、美冬は一緒に部屋までついて行った。
あまり帰っていない部屋は寒々しく散らかっている。
悟はベッドに倒れこむとすぐに目を閉じた。
『体温計とか風邪薬とかないの?』
『無い。寝てれば治る』
『食べるものあるの?冷蔵庫開けるよ』
キッチンは使っている様子がなく、せめて冷蔵庫に飲み物くらいあるか確かめた。
缶ビールが数本とチーズ、賞味期限がとっくに切れたヨーグルトや惣菜が少し入っていた。
美冬がコンビニで水やスポーツドリンク、熱があっても少しは喉を通りそうなものを
買って部屋へ戻ると、悟は眠っているようだった。
鍵を開けたまま帰るのも無用心だと思い、暫くしてから声をかけた。
『悟くん、そろそろ帰るね。鍵はどうする?』
返事がない。
美冬はベッドの傍にひざまづいて悟を覗き込んだ。
呼吸が早く苦しそうで額に汗が滲んでいる。
熱がずいぶん高くなったのか、顔も少し赤い。
一人にして大丈夫だろうかと心配になった。
整った顔立ち、閉じられた瞳を縁取る綺麗な睫毛。
初めて、悟の顔を間近で見つめているうちに、その髪に触れたい衝動に駆られ、
美冬はそっと悟の髪をなでた。
悟が目を覚ましたので、慌てて言った。
『そろそろ帰るね』
熱のためか悟の目が潤んでいる。
ベッドに手をついて立ち上がろうとした時、突然その手を悟が掴んだ。
熱い手だった。
『帰らないで』
『悟君・・・』
『帰らないで。お願い』
それだけ言うと力なく手を離した。
------------つづく----------