西京極 紫の館

サッカー観戦、映画や音楽鑑賞、読書などなど、
日々のなんやらかんやらを書いてみようかな、と♪

塞王の楯(上・下)  今村翔吾/著  集英社

2024年12月11日 19時07分56秒 | 西京極の本棚
     
【紹介文】
時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人"穴太衆"の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を造れたら、いつか世の戦は途絶える。匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人"国友衆"の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる脅威の鉄砲で戦なき世を目指す。相反する二つの信念。対決の時が迫る  。第166回直木賞受賞作。

【総合評価】 ☆☆☆☆☆(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆☆
  独創性 ☆☆☆☆★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
京都人の著者にとっては身近な場所・琵琶湖畔に存在した大津城の攻防戦を通して、穴太衆の石垣という最強の“楯”と、国友衆の鉄砲という最強の“矛”の対比を描いた力作。まるで棋士が双方の手を読み合うような丁々発止の攻防戦は読みごたえ抜群でした。主人公である穴太衆の若き頭領・匡介とライバル国友衆の彦九郎が魅力的なのはもちろん、大津城主の京極高次や攻め手の将・立花宗茂の人物造形も素晴らしい。いつか映画化されそうな小説ですが、まずは小説でお読みください。今年イチバンのおすすめ小説です!

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コロラド・キッド スティーヴン・キング/著 文藝春秋

2024年10月31日 20時58分24秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
海辺に出現した死体の謎をめぐる「コロラド・キッド」、恐怖と幻想の直球ホラー「ライディング・ザ・ブレッド」という長らく入手困難だった“幻の名作“2篇を収録!体重が減りつづける怪現象に悩まされる男を描く、本邦初訳の中篇「浮かびゆく男」を加えた、日本オリジナル中篇集。ファン必携の逸品!

【総合評価】 ☆☆☆☆★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆☆★
  独創性 ☆☆☆★★
 読み易さ ☆☆☆☆★

【西京極の読後感想】
キング作品の中でも一風変わった味わいのある3つの中篇が収録されている。いずれも従来のスーパーナチュラルなホラーではない。ネタバレしない範囲でそれぞれに一言レビューしておこう。

浮かびゆく男:似た題材で『痩せゆく男』という話をキング(別名義R.バックマン)が書いているがそれは純然たるホラー。こちらは設定こそ似ているがホラーではなくヒューマンドラマ。どんどん体重が減っていく男の迎えるラストはちょっと切なくも清々しい。
コロラド・キッド:過去に移動不可能な場所で発見された死体の謎を追う2人の老記者とその2人から事件の話を聞く新米女性記者。3人の会話形式で話は進みやがてラストを迎えるのだが…このオチに納得出来るか否かで評価が分かれそう。僕はOKでしたw
ライディング・ザ・ブレッド:この作品はこのブログで過去にレビューしているのでそちらをご覧ください。

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5分で読める!誰かに話したくなる怖いはなし 『このミステリーがすごい!』編集部/編 宝島社

2024年09月28日 21時43分46秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
小説家の小田が行きつけのバーでJから聞いた話  不気味な仮面をかぶり、道端に寝そべっている男。先輩は「近づくな、無視しろ」と言って……(「寝そべり男」小田雅久仁)。引っ越し直後の私の元に、前住人宛ての郵便物が届き続ける。ついにはとんでもないものが誤配され  (「前の住人の話」斜線堂有紀)。ほか『近畿地方のある場所について』背筋、『ぼっけえ、きょうてえ』岩井志麻子ら豪華執筆陣による全30話の恐怖。

【総合評価】 ☆☆☆★★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆★★★
  独創性 ☆☆☆☆★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
長いものでも20ページ、短い話なら僅か1ページで完結するショートショート怪談集。とにかくサクサク読める。通勤途中で読める。めっちゃ怖いかと言えば、そこまでではないが、岩井志麻子や平山夢明、澤村伊智などホラー小説の名手たちが書いているので、ホラー小説への入門書としては最適。その中でも、背筋「私たちのおばけ」、尾八原ジュージ「置き傘」、澤村伊智「お化け」あたりが僕のお気に入りです。他にも『5分で読める!』シリーズがあるみたいなので、機会があればそれらも読んでみようかな?

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死者は噓をつかない スティーヴン・キング/著 文藝春秋

2024年09月17日 20時19分00秒 | 西京極の本棚
【紹介文】
ジェイミー少年は死者が見え、彼らと会話できる。そして死者には嘘がつけないのだ  。不思議な能力のせいでたびたび厄介に巻き込まれつつ何とか日々を送るジェイミーだが、ある事件をきっかけにいよいよ奇怪な出来事が……。恐怖の帝王、得意の青春物語+ホラー。これで面白くないはずがない、円熟の逸品。(土屋 晃:訳)

【総合評価】 ☆☆☆★★(満点は☆5つ)
 ドラマ性 ☆☆☆★★
  独創性 ☆☆☆★★
 読み易さ ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
キングの中では長編というよりはちょっとページ数の多い中編的な珍しい作品。訳者がいつもの白石朗さんではないからか、主人公の少年(といっても語り部としての年齢は成年だが…)の一人称語りだからか、文章が平易なので読み易い反面、主人公が語っている=主人公は最後まで無事と判ってしまうので、ホラーとしてはやや物足りない。お話的にも怖さよりちょっと笑える間抜けさがあってホラーが苦手な人でも楽しんで読めるのではないだろうか?タイトルでもある「死者は嘘をつかない」という設定がちょっと都合良過ぎなのもキングっぽくない。キングファンにはちょっと食い足りなさがあるかもね。

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脳梁ドッグファイト(2巻完結) 常盤魚/著 講談社

2024年08月09日 22時13分34秒 | 西京極の本棚
    
【紹介文】
高校生・坂田慎太郎の脳内は幼馴染みの珠緒(の胸)に侵食されていた。気づけばどんな時も彼女(の胸)が気になってしょうがない!人間としての尊厳を守るため、慎太郎の“左脳”は珠緒と距離を取ろうとするが、“右脳”は抗えぬ本能に次第に追い詰められていき  左脳VS.右脳! 従うべきは理性か、本能か。男女の思考が暴かれる“脳内擬人化”ラブコメディ!

【総合評価】 ☆☆☆☆☆(満点は☆5つ)
 ストーリー ☆☆☆☆☆
  アイデア ☆☆☆☆★
   描写力 ☆☆☆☆☆

【西京極の読後感想】
モーニング連載時から注目していたマンガ。今春完結して単行本化されたので読み返しました。あらためて笑って泣けた。擬人化された右脳と左脳が恋愛にまつわる感情変化で右往左往するところは紛れもなくギャグなんだけど、主人公慎太郎と珠緒の紡ぐ人生模様は上質の感動ドラマ。そのバランスが絶妙。そして常盤ギヨ(本作連載時は常盤「魚」だったが今は「ギヨ」)のキャラクター描画力はピカイチ。現在モーニングで連載開始されている『織田ちゃんと明智くん』も根っこは本作と同じテーマでやっぱり面白い!今後注目のマンガ家さんの一人です。

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