のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「女神の一番長い日」3

2017-07-04 11:42:55 | 小説
 今度はヘロン号がビーム砲を発射しました。
「よーし、こっちも!」
 それが一つ眼の宇宙人のうなじに命中。
「うぎゃっ!」
 ヘロン号はビーム砲を撃ち続けます。一つ眼の宇宙人は這いずって逃げようとしますが、ビームはずーっとうなじを捉えてます。さすがに隊長の横槍が入りました。
「おい、もういいだろう」
 が、ヘロン号はなおをビームを撃ち続けます。隊員がコンソールのスライド式のボリュームを上げました。どうやらビーム砲の出力を勝手に上げたようです。一つ眼の宇宙人は断末魔の声を挙げっ放しとなりました。
「おい、いい加減にしろ!」
 隊長がついに一喝しました。
「ちっ」
 やっとヘロン号のビームが止まりました。一つ眼の宇宙人は完全にグロッキー状態です。これを見てストーク号の一般隊員は青ざめました。
「ひ、ひどいことするなあ・・・」
 と、その隊員の目の前の計器が何かに反応しました。
「む、何か来ます。これは・・・ 自衛隊のヘリコプターです」
「はぁ、自衛隊のヘリコプターだと? ふざけんな。こいつはテレストリアルガードの仕事だぞ!」
 隊長はそう言うと、目の前のコンソールのスイッチを入れました。
「こちらテレストリアルガード! こちらテレストリアルガード! 応答願います!」
 が、何も反応しません。
「ち、ホットラインに反応しない気か? これじゃホットラインの意味がないだろって!
 おい、自衛隊官房、応答しろ! 応答しないと、またあんたの孫娘が熱発するぞ!」
 すると無線から声が聞こえてきました。ちょっと焦ってるようです。
「ま、待て!」
「ようやく反応したか、このボンクラ官房!
 今未確認飛行物体墜落現場にいるが、なんか自衛隊のヘリコプターがこっちに向かってるようだが、なんのつもりだ?」
「それは情報収集だろ」
「宇宙からの侵略行為があった場合、第一に防衛責任があるのは我々テレストリアルガードだ。我々の要請がない限り、自衛隊は動かないて約束だろ?」
「戦闘には直接参加しないつもりだ。我々の目的は、あくまでも情報収集だ」
「そうか・・・ あんたの孫娘、今7歳だったっけ? ふっ、かわいそうにな」
「わ、わかった。ヘリコプターは引き返させる。それでいいだろ!」
 と、ぷつんと無線は切れました。
「わかりゃいいんだよ」
「隊長・・・」
 突然のその隊員の呼びかけに、隊長は振り返りました。
「あの宇宙人の身体ですが・・・」
 ストーク号の眼下、たった今ストーク号とヘロン号に敗れた巨大な一つ眼の宇宙人の身体が消えてました。
「なんだ、消滅したのか?」
「いいえ、縮小です」
 モニターに地面に横たわる人の身体が映し出されてます。服装からして一つ眼の宇宙人のようです。
「我々と同じサイズになりました」
「今まで巨大化してたのか? とりあえず降りてみるか」
 ストーク号が垂直着陸を開始しました。しばらく降下したあたりで、隊長の命令です。
「水平停止!」
「了解!」
 ストーク号は地面から10mくらいで完全停止。ストーク号の腹のハッチが開き、そこから真下に淡い光が2条放たれました。その光がまるでエレベーターのシャフトのようになり、隊長と隊員がゆっくりと降下してきます。これもヴィーヴルから供与された技術のようです。ただ、ヘロン号にはこの機能はないらしく、焼け野原に直接垂直着陸するようです。
 ストーク号の2人は先ほどとは違うフルフェイスのヘルメットを被ってます。この2人が地面に到達しました。と同時に、光は消えました。
「よし、行こっか」
「はい」
 2人が倒れている宇宙人のところに来ました。うなじにビーム砲を喰らったせいか、長髪はボロボロです。隊長が宇宙人の首筋に触れました。
「まだ息があるな。毒と放射能は?」
 一般隊員は計測器をかざして、
「ありません」
「何かあるといけないから、ヘルメットは被ってよう」
「はい」
 そこにヘロン号の2人が到着。2人は先ほどのヘッドアップディスプレイとは違うフルフェイスのヘルメットを被ってます。ストーク号の2人と同じヘルメットです。隊長が命令しました。
「収容しろ」
「はい」
 2人は宇宙人の身体に触れました。そのとき上半身に廻った隊員が宇宙人の身体を表に返したのですが、その瞬間まぶたを閉じている宇宙人の一つ眼をまともに見てしまいました。
「うわっ、きも」
 その発言を聞いて、隊長はその隊員を横目で見ました。フルフェイスのヘルメットのせいでわかりづらいのですが、どうも怒った眼のようです。2人の隊員は宇宙人の両腋の下と両足を持ち、宇宙人の身体を運んで行きました。
「隊長!」
 隊長が振り返ると、ストーク号の隊員が無残な姿を晒した巨大な宇宙船を見ています。その近辺には2mくらいの長さの円筒形のカプセルが散らかってます。隊員はそのカプセルを見て、
「隊長、これはなんでしょう?」
 隊長は1つのカプセルの前でしゃがみ込みました。そのカプセルは一部破れていて、子どもらしき身体が見えてます。
「子ども?・・・」
 隊長は先ほどの一つ眼の宇宙人のセリフを思い出しました。
「ふざけんな! この船には5千もの難民が乗ってたんだよ!」
「この船はほんとうに難民船だったのか?・・・」
「ええ、我々は難民船を攻撃してしまったんですか?」
「ああ、ジェノサイドやっちまったようだな」

 ここは小さな会議室のようです。複数の折り畳みの長テーブルが長方形に並べられており、お誕生日席に当たる部分のパイプいすは逆向きに置かれています。そこにさきほどの宇宙人が座らせられています。その両手は後ろ手になってます。よーく見ると、その両手には手錠がかかってます。正確には、腕のサポーターのようなものを鎖でつないだ手錠です。その間にはテーブルの脚があります。つまり、身動きが取れない状態になってるのです。
 宇宙人は先ほどテレストリアルガードの隊員が被っていたフルフェイスのヘルメットを被ってます。ただ、ガラスの部分は強い偏光グラスになっていて、中の顔を見ることはできません。首から下はテレストリアルガードの隊員服です。
 宇宙人の目の前の天井には、ドーム型の監視カメラがあります。宇宙人はそれを見ているようです。
 この宇宙人の姿がモニターに映し出されてます。ここはサブオペレーションルームです。テレストリアルガードの4人の隊長と隊員がそれを見ています。まずは隊長がぽつりと発言しました。
「ふっ、うちも取調室が必要だったとはね」
 ストーク号に乗ってた隊員が、
「あの・・・ これじゃ巨大化して逃げ出すような気がするんですが?」
 それを聞いて、今度はヘロン号に乗ってた隊員が、
「平気平気。この状況で巨大化したら、両手が手錠で引きちぎられてしまうだろ」
 ここで隊長の発言。
「さーて、行くか」
「はい」