シナプスとジャズの関係

＜シナプス＞＝神経細胞間、あるいは神経細胞と他種細胞間に形成され、シグナル伝達などの神経活動に関わる接合部位とその構造をシナプスといい、化学シナプスと電気シナプスがある。シグナルを伝える方の細胞をシナプス前細胞、伝えられる方の細胞をシナプス後細胞という。情報伝達は一方向に行われ、興奮がシナプスに達するとシナプス小胞が細胞膜に融合しシナプス間隙に神経伝達物質が放出される。神経伝達物質がシナプス後細胞に存在する受容体に結合することで刺激が伝達されて行く。（ウィキペディア・フリー百科事典より）

最近、この「神経伝達物質」が僕の脳内には恐ろしく不足しているような気がする。ジャズのインプロヴィゼーションとこのシナプスは密接な関係があるといえる。バンドが現在発しているサウンドに対して、適切なメロディーを即座に過去の記憶やインスピレーションを元にメロディーに変換して、楽器をコントロールする指などに伝える事がインプロヴィゼーションという作業である。

ジャズを学んでいると、よく「手癖で演奏するのはよくない」という事が言われるが、手癖で演奏すると言う事は、「このコードの時は何も考えずにこのフレーズをプレーできるようにする」という、いわば習慣的な行為を習得する事である。それはすなわち「朝起きたら歯を磨く」とか「トイレの後は水を流す」などの無意識の行動と似通っていて、「過去の記憶」は辛うじてあるかも知れないが「インスピレーション」はそこには無い。

僕が敬愛するキース・ジャレット（ｐ）はインスピレーションを極めて重要視しているプレーヤーだと思う。同時に複数のメロディーを弾ける楽器であるという特性を活かし、時には性格の違う４，５人の人格が同時に違うメロディーを奏でているような感じさえ受ける。彼が天才なのは間違いないのだけれど、単音しか出ないサックスでメロディーを吹く事でさえ苦労している自分は一体何なんだろう？と思うと溜息しか出ない。(苦笑)　尚且つ、ここ最近は頭に鳴っているメロディーを指に伝える上でミスが生じたり、えらくタイムラグが有ったりで自己嫌悪に陥る事が度々ある。これは老化現象か？？(笑)

先日、落語の三遊亭円楽師匠が脳梗塞の後遺症で固有名詞が瞬時に出なくなったという理由で「笑点」を引退されたが、喋りのエキスパートとしてのこの行為にはプロフェッショナル性を感じる。しかしながら年齢を考えると、僕のような若造が「老化」を理由にする事は憚られる。そうなると、「才能無いのかな？」のようなネガティブ・シンキングにどうしても考えは及んでしまうのである。40にして迷いもがき苦しんでいる。人生設計としては大きな想定外であった。(苦笑)